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October 11, 2006

キューバ危機と北朝鮮危機

■ 昨日昼まで、具合が悪かった。大事を取って、自宅で、静養する。。

■ 昨日午後、「週刊プレーボーイ」の関係者から取材が入る。「週刊プレーボーイ」…。懐かしい。二十歳前の頃にだいぶ、「お世話」になった記憶がある。それで、取材の趣旨は、北朝鮮核実験に関する論評である。
 折角だから、「タカ」、「ハト」、「フクロウ」の図式を使って説明しておいた。「週刊プレーボーイ」の読者は、若者であるから、わかりやすいのがいいであろう。
 夕刻、産経新聞千葉総局から取材依頼が入る。
 結構、慌しかった。

■ 「タカ」、「ハト」、「フクロウ」の図式は、元々、ジョセフ・S・ナイやグレアム・T・アリソンらのハーヴァード大学研究グループが打ち出した考え方である。この図式を使って、ナイがキューバ危機を分析した論文を書いている。
 この論文によると、ジョン・F・ケネディ政権下の米国政府部内の対応は、次のように説明される。

◆「タカ」   
 /キューバに対する「力恃み」の対応を考慮する。
 /具体的には、空軍による爆撃と陸軍による進攻での事態落着を考慮する。
 /それをしても、フルシチョフは「核のボタン」を押さないと考える。
 /テイラー統合参謀本部議長が代表的人物。
◆「ハト」 
 /危機の外交決着を基本方針とする。
 /具体的には、ソ連がキューバに置いたミサイルと米国がトルコに置いたミサイルを相互に撤去することを考慮する。
 /一切の武力行使を避けようとする。
 / スティーブンソン国連大使が代表的人物。
◆「フクロウ」
 /政策決定における柔軟性を確保する。
 /具体的には、海上兵力によってキューバを海上から「封鎖」することを考慮する。
 /事態の推移によって、直接攻撃に移るか、外交落着を優先するかを判断する。
 /マクナマラ国防長官、バンディ補佐官が代表的人物。結局、ケネディも乗った。
 北朝鮮情勢に関していえば、関係六ヵ国の間では立場の違いがあった。。これを説明するために、キューバ危機における「タカ」、「ハト」、「フクロウ」の三つの立場を北朝鮮危機に置き換えて考えてみよう。
◆「タカ」   
 /北朝鮮に対する「力恃み」の対応を考慮する。
 /具体的には、「火攻め」(北朝鮮核施設の攻撃)による事態落着を考慮する。
 /金正日体制を崩壊に追い込んでも問題はないと考える。
◆「ハト」 
 /北朝鮮に対する「宥和」の対応を基本方針とする。
 /具体的には、援助、経済交流による対応を考慮する。
 /金正日体制を「暴発」に追い込み、朝鮮半島が混乱する事態は、何よりも避けようとする。
◆「フクロウ」
 /対朝政策における柔軟性を確保する。
 /金正日体制の「恭順」を目指す。
 /具体的には、「水攻め」(経済制裁)による対応を考慮する。
 /事態の推移によって、「火攻め」に移るか、外交落着を優先するかを判断する。

 この三類型に即して関係諸国の立場を説明する。
◆米国
 /基本的には「タカ」。日本や韓国のような同盟国の立場を慮って、「フクロウ」の顔をしている。
 /金正日体制が崩壊し、朝鮮半島が混乱したところで米国本土には影響はない。
 /だから、核施設攻撃という「火攻め」の選択肢を考慮できる政治的な理由も軍事的な能力も持っている以上、本来は「タカ」として振る舞える。
◆日本
 /基本的には「フクロウ」。今は「タカ」寄りに傾斜しているけれども、憲法上「タカ」にはなれない。。
 /金正日体制が崩壊し、朝鮮半島が混乱すれば、米国とは違って無傷ではいられないであろうけれども、その影響は中国や韓国ほどではない。
◆中国   
 /基本的には「ハト」。、今後は「フクロウ」に変わってくる可能性がある。
 /金正日体制が崩壊し、朝鮮半島が混乱すれば、その影響はかなり大きい。
◆韓国   
 /かなり鮮明な「ハト」、今は「ハト」であり続けることに限界を感じている模様である。ノ・ムヒョンが「太陽政策」の見直しを言い出し始めている。
 /金正日体制が崩壊し、朝鮮半島が混乱すれば、その影響は最も深刻なものになる。
◆ロシア
 /基本的には「ハト」。ただし、あまりはっきりしない「ハト」である。
 /金正日体制が崩壊し、朝鮮半島が混乱したところで、影響を受けるのは極東部分であって欧州部分ではない。だから、身が入らない。モスクワやサンクトペテルブルクに影響が及ぶ話だったら、目の色が変わっているはずである。

 以上の図式で考えると、日本は、次のような政策展開を考慮できる。
① 米国とは次の方策を考える。
 : 米国とは、対朝「水攻め」の動きを主導する。
  ・ 国連憲章7章に基づく制裁発動を模索する。
 : 将来に「タカ」にもなれるように準備もはじめておく。
  ・ 集団的自衛権行使の許容
  ・ 防衛庁の省昇格
② 中国、韓国、ロシアとは次の方策を考える。
 : 中国、韓国、ロシアを「フクロウ」の立場で一致させる。
  ・ これらの国々が「ハト」に戻って対朝「水攻め」の「抜け穴」にならないようにさせる。
 : 北朝鮮が「六ヵ国協議」の場に復帰し、核放棄に踏み切った場合の「見返り」は見せておく必要がある。

 これが総てである。「危機」対応というのは、45年前とそんなに変わらない。


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Comments

雪斎殿の「ハト」「タカ」「フクロウ」の行動分析は非常に参考になります。学生時代にキューバ危機に関する原典(日本語)は読んでおりましたが、すっかり忘れておりました。
今回の危機について、政府内部の動きについても、是非、同様の分析をお願いできればと思います。

ところで、韓国の盧武鉉が北朝鮮非難の共同声明を拒否した上、しつこく安部総理に歴史認識を正したという報道がありましたが、韓国は100年たっても同じ事を繰り返すのかという思いを深くしました。

Posted by: ysaki | October 11, 2006 at 12:31 PM

雪斎さん、お体のご機嫌いかがでしょうか。寒暖の差が激しい季節ですので、無理はなさらないように。

日本は、今回の件で、国際社会や周辺諸国とのパイプ役になれるのではないかと思います。フクロウゆえに、協調路線をとれるわけです。と同時にリアリスティックに自国の国益のために、備えも取れます。国際社会へのパイプのレベル。周辺諸国間の利害調整のレベル。自国の防衛、備えなどのレベル。3つのレベルで、日本は、主体性を発揮できます。

このことによって、言うまでもなく、国際社会での地位、東アジアでのイニシアチブが取れます。

危機とは、チャンスである

Posted by: あいけんべりー | October 11, 2006 at 07:26 PM

全くの、夢物語と笑ってくださって結構です。
武力でもただのお金でもなく、英知を期待されリードできる
「フクロウ」国家へと、いつの日にか日本が変貌を遂げる日が来ても良いのではないかと、思います。

Posted by: るびい | October 12, 2006 at 06:37 AM

北朝鮮の体制が維持されても崩壊されても、あまつさえ
反日体制が深化する韓国に併合されて日本の庇護を要求されるのも避けたい、というのが本音です。
正直、拉致被害者と核武装問題さえなければ付き合いたくない国ですな。
フクロウ派と言いますが、機会主義で良いかと。
少なくとも日本の安全と繁栄を維持するためには。

それと、雪齋先生、皆さん
現代アメリカの話で中々面白かったのでこちらを奨めます。
・・・殴り合いでも悪知恵でも勝てない相手については代替わりして馬鹿が家督を継ぐまでは仲良くしとくべきですなぁ。
http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/20060928

Posted by: TOR | October 12, 2006 at 08:39 AM

〇この場合、たとえば中国人民解放軍を国連軍に認定し、核施設撤去を大義名分に、北朝鮮に駐留させちゃうなんていうアイデアはどうでしょう。要するに中国に汚れ役を押し付けてしまうというシナリオですが、韓国は嫌がるでしょうけれども、それ以外は誰も困らない。アメリカは楽ちん、中国は"Responsible Stakeholder"であることを示すことができ、日本とロシアは高みの見物でいることができる。その結果として、北朝鮮の版図が中国領になってしまい、「東北3省の4番目」になるとして、いったい誰がそれを惜しむでしょうか。

かんべえさんのアイデアですが、日本としてはその前に
「残された拉致被害者&特定失踪者の、中国の間における交渉による無条件奪還」の実現が必須でしょうな。

Posted by: bystander | October 12, 2006 at 06:47 PM

長谷川慶太郎氏は中国による北への軍事干渉の可能性もありと書いている。
http://yamagatashoken.co.jp/hasegawa/

Posted by: 笛吹働爺 | October 14, 2006 at 01:09 AM

キューバ危機のときと違って、
北朝鮮がさらに緊張をエスカレートさせた場合には
「フクロウ」にも覚悟が求められると思います。
現在の我が国に軍事介入もありえるという覚悟ははたしてあるのでしょうか?

Posted by: ムシメ | October 14, 2006 at 12:02 PM

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