« 「男」と「女」と「国際政治」 | Main | 論稿の後日談 »

September 16, 2006

「ポリシー・インテレクチュアルズ」の「引き際」

■ 日本で「ポリシー・インテレクチュアルズ」のイメージを作ったのは竹中だったと後世、評価されるのかもしれない。「時事」配信記事である。

 □ 小泉内閣終焉、自分の役割も終わり=会見で涙ぐむ場面も-竹中総務相
 「小泉内閣の終焉をもって、政治の世界におけるわたしの役割は終わる」-。竹中平蔵総務相は15日の閣議後会見で、参院議員を辞職する考えを表明した。構造改革の旗振り役として、小泉純一郎首相を支えてきた竹中氏。「今後は民間人として、新政権を支えたい」と語る表情には、難題に取り組んできたという自信ものぞいていた。
 「参院議員の職も辞したい」。総務省内で正午前に始まった会見の冒頭に切り出した。初めは淡々と紙を読み上げていたが、次第に感極まり、「小泉首相とご一緒できたことは光栄だった」と語るときには涙ぐんでいた。

 □ 「批判に耐え、よく頑張った」=竹中氏に賛辞-小泉首相
 小泉純一郎首相は15日夜、竹中平蔵総務相が参院議員辞職を表明したことについて「小泉内閣の改革を語る場合、竹中氏無くして語ることはできない。悪意に満ちた批判にも耐えて、よく頑張ってくれたと感謝している」と述べた。また、任期途中で議員を辞めることには「(竹中氏を)支持した方も受け入れてくれると思う」と語った。首相官邸で記者団の質問に答えた。

 竹中平蔵氏には、「御苦労様でした」の一言しか思い浮かばない。任期途中の辞任を云々する向きもあるだろうけれども、竹中氏は、「小泉改革」の推進という一つの目的のために議席を得たのであれば、その目的が達せられた以上、議席を持つ必要もなくなったということであろう。要するに、竹中氏は、「ポリシー・インテレクチュアルズ」としての自分の「分」をきちんと心得た人物であったことになる。だから、雪斎は、竹中氏の決断を「諒」としたいと思う。見事な「引き際」と評するべきであろう。
 昔、男の夢は、「末は博士か大臣か」であった。「永田町」の政治家にとっては、大臣ポストは、苦節十数年、血反吐を吐くような選挙を五、六度も経て漸く手にできるものである。だから、竹中氏のような存在が煙たがれたのも、当然なのである。「博士も大臣も」というのを体現する存在くらい、疎ましいものはないのである。
 雪斎にとっては、竹中氏の歩みは、今後の日本にとって大事なものであろうと思っている。「知」に支えられた「ソフト・パワー」の意義が強調される世界の中では、「アカデミズム」と「実務」の垣根を取っ払って活動できる人材は、どうしても必要である。日本には「竹中平蔵」級の人的ストックが少なくとも五百人は要るのである。
 そういえば、北岡伸一先生も、国連次席大使を離任し、東京大学に戻るようである。「アカデミズムの世界」は、いいところである。ジョセフ・ナイもハーヴァードとワシントンを往復している。コンドリーザ・ライスも、スタンフォードとワシントンを往復である。国際政治の世界では、「博士も大臣も」は、むしろ当然である。雪斎は、あと最長で三年、「永田町」に居ることになる。「先は長いな…」と思う。十年後には、どこかの小国で「公使」ができていたら、うれしいなと思う。

|

« 「男」と「女」と「国際政治」 | Main | 論稿の後日談 »

「学者生活」カテゴリの記事

Comments

しんみりと、今回のエントリーを読み、ふと傍らの朝刊に目をやったところ、そこには次点で繰上げ当選となる新議員が掲載されていました。

どこのオッサンやろか…と目を凝らすと
なんと神取忍嬢の凛々しい顔写真…!!
ああ、やっぱり参議院だ。

しかしこの件、産経の見出しは「有権者軽視…与野党から批判」という情けないものでした。
内閣総辞職に伴い、政治家としての使命もこれで終わった、と
いう本人の説明で納得できないのが、有権者よりも永田町だと言うのなら、非常に残念です。
一度議席を得たなら、気力、使命感がなくなってもしがみ付くものだと言いたいのでしょうかねえ。

ともあれ、雪斎先生の仰るとおり、私もこれが「知のソフトパワー」と政治とのコラボレーションの良き前例になることを期待しています。

Posted by: るびい | September 16, 2006 at 07:04 AM

権力とは、人生ゲームの目的ではなく、なすべきことをなすための手段に過ぎない。
教授は行動でそう教育された、というところでしょうか。
しかし、「権力の階段を昇る人生ゲーム」的な教育と仕組みが行き渡った日本では、こういう貴族性は見る人に自分の人生を否定されたという反感を抱かれるばかりではないかとも思います。

Posted by: KU | September 16, 2006 at 11:29 AM

日本の政治システムでは、行政に関わる人材の多くが試験登用ですが、もう少し猟官制による政治任用がある方が人材多様性の維持と組織体の柔軟さを高める事になると愚考します。
以前から、高級官僚に対する定期的な再訓練の為の大学院活用・創設を考えておりますが、(同時に人材プールと「上級国家公務員」としての組織間流動性の確保)雪齋先生の言われる
>「竹中平蔵」級の人的ストックが少なくとも五百人は要るのである、為には、まず量を増やさなければならないのではないのでしょうか?自然であれ、人間社会であれ「質は量に宿る」のです。
「アカデミズミの世界」もまた、人的流動化が少ない淀んだ状態が存在している(していた?)かもしれませんが、「限定された範囲の混沌/猥雑さ」が許容される「アカデミズムの世界」での間隔をおいた知的訓練の制度化は、より広い視野と思考を持つ基幹人材を必要とする日本社会の要請に沿うものである、と私は考えます。

Posted by: TOR | September 16, 2006 at 03:10 PM

・・・あと、十年後にどこか小国の公使に雪齋先生が任命されましたら、小生もどうか「現代日本文化担当公使補佐官」として政治任用を!(笑)

もしかしたら、「青少年に有害な影響を与える人物」として国外退去になるかもしれませんが。
しかし、下記のようね番組がアメリカの未来を担う子供達に大人気であるということは、長期的に見れば対日戦を行う可能性を極小化していることでもあります。
「侵略とは日々薄紙一枚ずつを重ねるがごとし」
生物学的原則に従い、世代交代が進むのなら我が国のソフトパワーは子供と若者を対象にするべきですね。

で、その結果である「下記のような番組」
http://www.youtube.com/watch?v=gejSKSnREFQ
そういえば、私が見てたのも派手に爆発していたな・・・

Posted by: TOR | September 16, 2006 at 03:52 PM

るびい殿
「政治のために生きている人々」ではなく、「政治によって生きている人々」が多過ぎるのですよ
KU殿
竹中批判をやっているひとは、見苦しいと思います。
こういうひとに限って、自分の天命を見過ごすのでしょう。
TOR殿
「文化交流担当官」に、本物のオタクのひとが任用されることは、今後はありうるでしょうね、普通の外交官は、そこまではフォローできないでしょうから。
この「米国製戦隊記」は凄いですね。さすが米国ですわ。
ところで。「電撃ストラダ5」をご存知ですか。
「戦隊モノ」の元祖で、これはマニアックなのだな。

Posted by: 雪斎 | September 16, 2006 at 06:53 PM

元日銀審議委員の中原伸之氏の「日銀は誰のものか」の中で、中原氏が著名な経済学者に審議委員への就任を打診したが断られたというエピソードが何度かあったことを思い出しました。
竹中氏の功績は、これまで経済学にあまり縁の無かった政治の世界に経済学的な考え方をもたらし、財務省や日銀の官僚に対抗できる理論武装を与えたことにあると思います。
もっと多くの経済学者が政治の世界に行って、経済学的な考え方に基づいた財政政策や金融政策を行って欲しいものだと思います。

Posted by: Baatarism | September 16, 2006 at 08:53 PM

なるほど。官僚の立場からしてみれば、自分のかつての“師匠”らが徒党を組んで乗り込んでくるわけですから、無下にはできないでしょうね。

Posted by: Talleyrand | September 16, 2006 at 09:02 PM

 Baatarism殿
 Talleyrand殿
 逆にいえば、官僚層も、どんどんアカデミズムの世界に入ってくればいと思います。日本のアカデミズムの世界も、生温いですからね。

Posted by: 雪斎 | September 16, 2006 at 10:00 PM

知りませんでした<電撃ストラダ5
そっちの業界人である知人曰く、「過去の作品は現在では放送禁止用語が多く、放映できないものが多い」そうですが。
・・・それと、公職に就いている「本物のオタク」ですが、
とりあえず、それなりの勢力を有しているようです。
ま、道楽とは傍目から見てくだらなくでも本人が幸せで他人に迷惑さえかけなければ社会をより豊かにするものでありますが。
ちなみに、自衛隊も多いそうですな。
某護衛艦内部の図書室のラノベの含有率の高さとか、
陸自の駐屯地には少女マンガも含めてマンガ雑誌が回し読みされてて、あれで「目覚めた」という元自の人とか。
米国海軍が入港したとき、札幌のアニメショップ、同人ショップで
山ほど買い込んでいたアメリカ海軍軍人たちとか(ゲーム系が多かったな・・・)
サッカーの話題が、交渉の合間の息抜きに用いられるように
日本産のこれらの知識の有無が、将来外交に関わる人間にとっての「基礎教養」となる日がくるかもしれません。

Posted by: TOR | September 17, 2006 at 01:55 AM

TOR殿
「サッカー」も擬似戦争ですから、「オタク」系の話題のほうがいいかもしれません。ウィーン会議のときは、社交と舞踏会の合間に「外交交渉」をやっていたわけですから、「オタク」系の話の合間に、「交渉」などということがあっても、おかしくないですな。

Posted by: 雪斎 | September 17, 2006 at 03:03 AM

>「オタク」系の話の合間に、「交渉」などということがあっても、おかしくないですな

・・・こじれることもありそうですが。
「この案件について譲歩しても良い、貴方の所持しているあれを譲っていただけるなら」とか。
小生の家も、ある種の人間にとっては宝の山のようなものらしいですが。
アメリカや欧州のファン大会でオークションにかければ往復の交通費・滞在費が出るような逸品もそれなりに所持しているとか。
当時は、定価で買ったんですけどね。
没後に散逸するのが惜しいです。
こういった財団が発足すれば良いのですが。
黒田清子様が理事で。
学生時代に同人誌を描いていたあの方なら資格十分です。
で、海外からも多数の人材を入れて・・・・
政府の国家戦略会議におけるソフトパワーについての諮問でやりませんかね
麻生大臣が政権を取ればやってくれそうです。
そして、竹中クラスのオタク担当相が・・・・あと出現には十年くらいかかるかな

Posted by: TOR | September 17, 2006 at 03:15 AM

>TORさん
>「この案件について譲歩しても良い、貴方の所持しているあれを譲っていただけるなら」とか。

なんだか戦国時代に茶器の名器が外交の道具になったような話ですね。このへんの話は「へうげもの」(山田芳裕)というマンガがお勧めですが。(笑)
そう考えると、日本のオタクには400年以上の歴史があるのかな?w

Posted by: Baatarism | September 17, 2006 at 10:34 AM

 TOR殿
 国際交流基金が以前、「OTAKU」で国際交流事業をやって成功したみたいですから、将来は、その手のミュージアムを建てて、その中に「TORコレクション」のコーナーを作ってもらえれば、貴殿の名前は、「永久に不滅」かもね。
 Baatarism殿
 そうか。千利休は、「元祖OTAKU」だったのか。そういえば、堺商人ですから、カネはあったのですな。

Posted by: 雪斎 | September 17, 2006 at 06:48 PM

いやいや、「源氏物語」と「枕草子」は世に出た経緯からすれば世界最古の同人誌といえますから、本邦おたく史は既に1000年を超えておりますぞw
(そして更級日記の作者さんは世界最古の二次創作者、と…)

あとは某巨大即売会名誉代表に、挙式でクラリス姫コスプレを敢行したあの御方をお招きすれば完璧です。多分。

Posted by: あっとさせぼ | September 18, 2006 at 10:09 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/71618/11905807

Listed below are links to weblogs that reference 「ポリシー・インテレクチュアルズ」の「引き際」:

» 竹中平蔵総務相の参議院議員辞職について [珈琲ブレイク]
昨日、竹中平蔵総務大臣が、突然、参議院議員辞職を発表した。今日の読売新聞朝刊には、有権者の信任を得たにかかわらず議員任期を全うしないことへの批判のトーンで、記事が書かれていた。朝日新聞、毎日新聞も同様である。 これまでは、専門家としての学者が、政府の政策運営に対して専門的立場から種々の批判はすることは多々あるものの、実際に政策執行側にまわることはなかった。小泉政権になって、竹中平蔵氏が初めてこの慣例を破り、政治主体への参画を通じて、自らの知識と見識を具体的な政策として実行した。この歴史的意義は... [Read More]

Tracked on September 16, 2006 at 06:46 PM

» やっぱり安倍なのか [歌は世につれ世は歌につれ・・・みたいな。]
♪♪♪今日は3本立てです。下にスクロールしてご覧下さい。♪♪♪ 明日20日に自民党総裁選は開票され、第21代総裁が選出されます。 やっぱり安倍さんなんですかねぇ。。。 *** ♪安倍の気配♪ あれがあなたの好きな場所 記者が見下ろせるこだかい演壇 あなたの支持が大きくなる 他は黙って外を見てる 眼を閉じて 票を開けて 読み上げる ほんのひととき こんなことは今までなかった 安倍が谷垣を離してゆく 安倍が麻生まで離してゆく 小泉は任期終えて 分... [Read More]

Tracked on September 19, 2006 at 08:05 PM

« 「男」と「女」と「国際政治」 | Main | 論稿の後日談 »