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September 18, 2006

中国への一つの要求 / 「異邦人」

■ 昨日、「読売」朝刊の一面には、次のような記事が載っていた。雪斎は、学位論文を「石油」で書いたくらいなので、元々、資源・素材関連産業と国際政治の絡みについては関心が強い。加えて、雪斎は、大手鉄鋼会社株のホルダーなので、自分の「利益」を背負って気合を入れて国際政治情勢を分析する意味からも、こうした記事が、全国紙の経済面ではなく一面に出てきたことには、かなり真面目に反応してしまった。

□ 中国に鉄生産縮小を要求…政府、値崩れ懸念
 経済産業省の細野哲弘・製造産業局長が12日、北京を訪れ、中国政府に対し、鉄鋼生産能力の削減を強く要請していたことが16日、明らかになった。
 中国の粗鋼生産量は毎年2割のペースで増え続けているため、いずれ世界的な鋼材価格の下落を通じて鉄鋼業界全体の業績を悪化させ、日本や世界の経済にも悪影響を及ぼしかねないと判断した。政府が外国政府に生産設備の廃棄を求めるのは異例だ。
 関係者によると、細野局長は、経済政策を担当する国家発展改革委員会の劉鉄男・工業司長に対し、容積で300立方メートル以下の小規模の高炉設備について、廃棄するよう求めた。あわせて、日本の大手鉄鋼メーカーなどを通じ、設備廃棄の支援や環境対策、省エネ技術の供与なども提案した。劉工業司長も、能力削減に向けて努力する意向を示したという。
 中国の粗鋼生産量は、2000年の1億2849万トンから05年には3億4936万トンと5年間で3倍近くに膨れあがった。2位の日本の1億1247万トンを大きく引き離し、世界首位となっている。
 大幅増産の背景には、北京五輪を控えて鉄鋼の需要が大きく伸びていることなどがあるが、これが小規模で非効率な製鉄所の乱立を招き、過剰生産となっている。大気汚染などの環境問題も懸念されている。このため、中国政府も小規模な製鉄所を集約してグループ化を図りたい考えだが、製鉄所は地域の雇用や地方自治体の貴重な税収源となっていることから、設備の廃棄や閉鎖は進んでいない。

 中国の鉄鋼生産の主体は、建築資材などに使われる汎用鋼材である。中国は、こうした汎用鋼材を生産するためにも至るところに製鉄所を設けているわけであるけれども、「非効率な生産による資源濫費」と「地球環境破壊」の元凶になっている。「読売」記事では、過剰生産による値崩れへの懸念が、日本政府の対中要求の動機であるようであるけれども、、こちらのほうが懸念は大きい。中国の「大飯食らい」を止めさせなければ、地球がもたない。
 もっとも、この他に、自動車や船舶の製造に用いる高級鋼材があるけれども、この高級鋼材の生産は、日本を含む企業の独壇場とされている。世界第一の製鉄会社であったミタル・スチールは、インドや旧ソ連諸国の製鉄所を次々に吸収して急成長を遂げたけれども、それは喩えていえば、「歩」ばかりを集めて大きくなったようなものである。ミタル・スチールがアルセロールを合併したのは、アルセロールが高級鋼材を造れる「金将」であったからである。日本の場合、新日鉄やJFEのような企業は、高級鋼材やシームレス・パイプ(継ぎ目なし鋼管)を造る特殊技術を持つ「飛車」、「角」である。これを持っている限り、日本の製鉄会社は強い。
 この記事は、靖国のようなマターで中国の都合に振り回されている印象の濃い日中関係の中では、「日本も文句を言っている」事例として想起されるであろう。中国政府も、製鉄所整理の必要性は理解しているようである。「利害が一致できれば協力すればよい」のである。

■ 久保田早紀さんのアルバム「ゴールデン・ベスト」を聴く。
   収録されている「異邦人―ポルトガル録音ヴァージョン」には、かなり感動した。
   「異邦人」が描いた歌詞のイメージは、中央アジアのどこかの国であろうと思っていた。

   市場へ行く 人の波に
   身体を預け
   石だたみの 街角を
   ゆらゆらと さまよう
   祈りの声 ひづめの音
   歌うようなざわめき
   私を置き去りに
   過ぎてゆく 白い朝

   だが、実際は、これは紛れもなくポルトガルの風景だと思う。
   ポルトガルの風景写真を載せたたサイトを見つけた。
   これ
   これ
   これ
   これ
   これ
   「異邦人」のイメージが出来上がる。
   まだまだ知らないことがある。

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「国際情勢」カテゴリの記事

Comments

ポルトガルといえば、リスボンのどこかだったかに、壇一雄氏の名前のついた通りがある、ときいたことがあります。
高級鋼材といえば、高張力鋼は日本の製鉄会社のお家芸で、日本の潜水艦はだから高性能だとか。

Posted by: KU | September 18, 2006 at 07:13 AM

> 「利害が一致できれば協力すればよい」のである。

その通りです。
ただ、某大手製鉄会社の技術協力は、中国に対する幹部の贖罪意識によって、企業利益をまったく考慮せず、最新技術を無償で中国に“献上”するような内容になっているらしいという話を、仄聞したことがあります。その結果、現在、最新鋭の高炉設備は中国にあるのだとか。

中国が非経済的な障壁を設けてくることは確実ですから、日本側はそれに振り回されずに日本の国益を確保できるように、老獪で強かな交渉をしてほしいものです。

Posted by: 木星人 | September 18, 2006 at 07:33 AM

その「飛車」「角」を買収と言う手段で入手するんじゃネーの?

Posted by: ななし | September 18, 2006 at 10:59 AM

最新設備は中国に輸出してるものの、メンテナンスと定期的な改善がなければ能力を維持できないので、日本の製鉄会社はそこで中国をコントロールできる、と自信を持ってるようです。
欧米が武器輸出で輸出先をコントロールするやり方と同じですね。
中国への技術移転などでは現場はかなり辛酸なめてますので、戦中派の動機はともかく、今の製鉄幹部に媚中派はまずいないのでは。
その上で環境対策など、今後も末永く美味しい商売をさせていただこう、と。

Posted by: ■□ Neon / himorogi □■ | September 18, 2006 at 12:44 PM

こんばんは。日本もなかなかやりますね。
 もっとも非効率な製鉄所は生産設備としてはガラクタのようなもの。集約してグループ化というより潰すことになると思います。それが大気汚染からエネルギー効率の改善になるので、中国にとっては、真面目にいい事と思います。
 日本の某巨大製鉄ではコークスにプラゴミ混ぜて鉄の一部を生産しています。プラゴミに馴染みの薄い某中国人は、ゴミまで使い切る日本のセコさに震撼しておりました。きっとサラリーマンは骨の髄まで・・資本家とやらにしゃぶられているだろうと・・
 その溶鉱炉も最新といってもトラブルはよくあるようです。人が真面目でなければ高い質の鉄は作れません。溶鉱炉から出た最初の溶けた鉄は、処女鉄として、安産のお守りとして地域に配布されるそうです。
 拙ブログでも、この話にエントリーしようかと思いましたが、鉄の話は雪斎財閥殿にお任せといたします。
 

Posted by: SAKAKI | September 18, 2006 at 11:12 PM

 「主張する」安倍総理が誕生したらこういう事が増えるんでしょうか。最近の外国メディア規制の件、エントリーの鉄鋼の件、その他人権問題、知財問題、環境問題、人民元問題・・・等々、安倍氏は首脳会談でも遠慮無く指摘していくんでしょうか。だとすれば中国側が首脳会談を嫌がる、なんて事にもなったりして。

Posted by: ささらい | September 19, 2006 at 02:43 AM

私の経験(日本の大手製鉄会社が買収したアメリカの鉄鋼会社再建を担当しました)からいうと、技術指導や買収だけでは、技術の移転はできませんですね。これだけははっきり言えます。理由を論理的に説明するのは難しいが、技術は設備資本と人的資本の結合したものであり、人の質的要素が大きいことと、高級な市場にしか高級な技術は生まれないことにあるのでしょう。日本の市場は、世界一贅沢ですから。逆に、それが日本の企業の弱点でもありますが(過剰品質、汎用性少ない等)。ミタルが日本の大手を狙ってくることは、おおいにありうると思いますが、その技術をアジアや欧州にトランスファーすることは、まあ難しいですね。(雪斎さまと、私も同じ会社のストックホルダーですが、ミタルの動きがどうでますかな。ちょっと下がりましたが。苦笑)

Posted by: M.N.生 | September 19, 2006 at 04:43 PM

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