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August 08, 2006

「フクロウ派」の信念

■ ジョセフ・ナイがイラク戦争に至る時期に『フィナンシャル・タイムズ』に寄せた原稿に、「イラクに関しては、フクロウ派がタカ派よりも賢明だ」("Owls are Wiser About Iraq Than Hawks”, Joseph Nye, October 21, 2002, The Financial Times) という題のものがある。
 この論稿の全文は、ハーヴァード大学ケネディ・スクールのサイトに、転載されている。締めの文は以下の通りである。

 American people seem to understand that the issue is more complicated than doves versus hawks and that the crucial choice the US faces is between impatient, unilateral hawks and patient, multilateral owls.

 要するに、イラク戦争に際して米国で出現したのは、ハト派とタカ派の対立ではなく、フクロウ派とタカ派の対立だったというのである。当時の第一期ブッシュ政権でいえば、ドナルド・ラムズフェルドがタカ派であり、コリン・パウエルがフクロウ派ということになる。タカ派は、「我慢が足りない一方的な」軍事偏重のの人々であるけれども、フクロウ派は、「忍耐強い多面的な」外交重視の人々である。
 イラク戦争には、ジョージ・F・ケナン、スタンリー・ホフマン、ジョセフ・ナイといった「現実主義者」が一斉に疑問の声を上げた。彼らは、「イラクとアフガニスタンは違う」と主張したのである。こうした現実主義者たちが何故、「フクロウ派」と称されるかといえば、スタンリー・ホフマンの著書『ヤヌスとミネルヴァ』が象徴するように、彼らが「戦争と平和の両面を持つ神の問題に知恵の神が関わる」という姿勢で臨もうとするからである。ジョセフ・ナイは、「知恵の神」であるミネルヴァの従者のフクロウに自分を仮託したけれども、それは多分にハーヴァード大学の同僚教授であるスタンリーホフマンの影響を受けたものであろう。
 雪斎も、日本の知的風土の中では「タカ派」と呼ばれた。しかし、雪斎は、自称するならば、ナイに倣って「フクロウ派」である。雑誌『論座』でも、山崎拓、石破茂の両氏が「元祖タカ派」として紹介されているけれども、彼らは、実際には、「フクロウ派」なのである。そして、日本の安全保障研究者の多くは、「フクロウ派」なのである。

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Comments

 「米政府、韓国に戦時作戦統制権を返還」・米国防総省高官
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20060808NTE2INK0308082006.html

 近い将来における米韓同盟解消は必至な状況でしょうか?。韓国では「フクロウ派」は少数に過ぎないのでしょうか?。

Posted by: ささらい | August 08, 2006 at 04:25 PM

フクロウ派・・・・
選択肢は多い方が良いですし、操作できない外部条件に対しての柔軟な対応は「生存」確立を高めます。
「イケイケ」は楽なんですが、知性の敗北でもあります。
しかし、雪齋先生の定義では、「自称、垂直尾翼」の小生もフクロウ派に属するのでしょうか(笑)

追記
現在札幌は、家猫もグッタリするくらい暑いです。
年に十日だけある「クーラー設置を検討する」時期ですな。
日本が樺太を領有していればなぁ・・・・

Posted by: TOR | August 08, 2006 at 09:48 PM

>タカ派は、「我慢が足りない一方的な」軍事偏重のの人々であるけれども、フクロウ派は、「忍耐強い多面的な」外交重視の人々である。

核心を突いた、味のあるお言葉ですね。

Posted by: 西田瓜太郎 | August 09, 2006 at 12:47 AM

イラク戦争においてタカ派が堪え性もなく戦争に踏み切った背景には、米空軍力に対する絶対的な自身があったと思います。
かつて、北ベトナムのハノイ政権は米空軍の北爆によく耐えましたが、ボスニアヘルツェゴビナ紛争以後、米国に敵対する勢力はほとんど空軍力のみによって、武装解除に近い状況に追い込まれたと言ってよいでしょう。
ところが、今行われているレバノンの戦争では、状況が違ってきているようです。
ヒズボッラはイスラエル空軍の攻撃によく耐えて、抵抗を続けています。
もしイスラエルがヒズボッラの武装解除に失敗すれば、その事実が国際政治に与える影響もかなり大きいのではないでしょうか。
つまり、米空軍万能時代の終焉というわけです。
ブッシュ政権の残り2年は国際的な外交ネットワークの修復に追われるでしょう。
それを前にした日本の政権交替は良いタイミングで行われるように思えます。
日本はブッシュ政権の外交ネットワーク修復において、小泉政権と異なったテイストで、協力する機会が与えられるかも?
まあ、希望的観測ですけどね。

Posted by: T君 | August 09, 2006 at 11:34 AM

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» 自分はフクロウ派なんだろうか。 [そふのロクス・ソルス]
「フクロウ派」の信念を読みました。 長年…といっても精々数十年もないんですがね。 「タカ派」と自分のことを言えない。だってそんなに行動力ないし。 痛いのはイヤだし。正直ご先祖様のように、責任とっての 大阪城で切腹とか出来ないもの。凄いもんだ。 母方の....... [Read More]

Tracked on August 09, 2006 at 12:49 AM

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