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August 31, 2006

二つの「時化た選挙」

 自民党総裁選挙は、「時化た選挙」になりそうである。昔日、田中派・竹下派の権勢が強かった時期には、田中派・竹下派が態度を決めれば「終戦」であったけれども、此度に田中派の役割を果たしたのは、「世論調査」であった。昨年の「9・11」選挙の遺産は、「何はともあれ風を起こせる総裁でなければ困る」という雰囲気を自民党内に定着させたことにある。安倍晋三氏が今までの流れの通りに新総裁になるならば、安倍氏に期待されているのは、「小泉が起こした風を止めないこと」である。
 安倍氏に対する懸念は、実質的に「闘ったことがない」ということである。此度の総裁選挙は、安倍氏にとって格好の「闘う機会」を意味していたはずであるけれども、その通りにはならなかった。小泉総理の場合、特に国内に強大な「敵」が存在していて、その「敵」に対峙していればこそ、小泉総理は、世に「闘う姿勢」を示すことができたのである。そして、そのことは、小泉総理の五年半の執政を可能にした「強さ」の源泉であった。その出発点が五年半前の橋本龍太郎優勢をひっくり返した「激越な選挙」であったのは、いうまでもない。さらにいえば、その「激越な選挙」の「熱」が五年半も保ったというのが、小泉執政の意味である。
 安倍氏の場合、国内には、どのような「強大な敵」がいるというのであろうか。安倍氏は近著『美しい国へ』の中でも「闘う政治家」としての自画像を示しているけれども、何に闘いを挑もうとしているのかが、はっきりしない。
 雪斎が、小泉総理の立場ならば、党内の大勢が安倍支持に走っている情勢であればこそ、「安倍支持」とは書かないであろうと思う。雪斎は、親のライオンが子供のライオンを崖の下に落とすのと同じようなことを考える。「時化た選挙」の悪影響というのは、今後、安倍氏にとっても自民党にとっても出てくるのではないかと憂慮している。
 その一方で、次のような話がある。
 

□ <民主党>河村衆院議員、代表選出馬に意欲
 民主党の河村たかし衆院議員(愛知1区、当選5回)は29日、国会内で記者会見し、来月の党代表選に立候補する意欲を表明した。立候補に必要な党所属国会議員20人の推薦人について「確実なのは5人程度」と語っており、小沢一郎代表が無投票で再選される可能性が高まっている。
 
 民主党党首選挙も、自民党総裁選挙以上に「時化た選挙」になるようである。河村たかし代議士には、是非とも頑張って、小沢一郎氏の「無投票当選」という事態だけは避けてもらいたいものである。

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「永田町の話」カテゴリの記事

Comments

いつも拝見いたしております。
私は30歳になってアメリカの大学院に国際政治学を勉強するために留学し、今年5月に卒業いたしました。

私は安倍氏優勢については「仕方ないかな」とは思っておりますが、彼の「国家観」なるものとそれをサポートするグループに危惧を抱いております。

小泉さんは良くも悪くも単純だから良かった。
「国家観」「歴史観」という観念に囚われず、目の前の課題を現実的な対処方法で片付けようとしてくれましたから。

しかし、どうも安倍氏、正確に言うと彼をサポートしている右派と呼ばれている人たちがイデオロギッシュな政策を取り入れようとしているのではないかと心配しております。
彼らの性質は左の人たちと似て、自分達の考えが正しいと他者に一つの考え方を押し付けてくるところですね。
これに対し私は違和感を強く感じるのです。

本来ならば、こういうことが総裁選で論点になってくれればいいのですが、何もなく通り過ぎようとしています。
うまく安倍氏が現実的に対処してくれるといいのですが。。。

Posted by: kazutaka525 | August 31, 2006 at 04:47 PM

・kazutaka殿
 はじめまして。
 貴殿の懸念は、拙者も共有するところです。
 安倍氏が、自分に期待を掛けているイデオロギー色の強い「保守・右翼」知識層の意見をも徹底して相対化できる感性の持ち主ならば、不安は減るのですけれども…。安倍氏の周囲に、「右の土井たか子女史」みたいな人々が、いますよね。「政治家」と「政治活動家」は別物です。

Posted by: 雪斎 | August 31, 2006 at 05:10 PM

その懸念は僕も持っています。
例えばこの社会奉仕活動義務化構想には、そういう人たちの意見が入っているのかもしれませんね。
http://www.sankei.co.jp/news/060831/sei005.htm

Posted by: Baatarism | August 31, 2006 at 05:44 PM

谷垣の2位、を期待して(というか、それしか興味なし)おります。勝手な思い込みで申し訳ないのですが、今本当に「政治」というものに求められるものは「落ち着き」、というか付和雷同しない事、だと。
途中の論理は省きますが、安倍は致し方ないけど、その次にはもう、私立大学出身の首相は・・・・

Posted by: 桜新町長五郎 | August 31, 2006 at 10:23 PM

・baatarism殿
「教育」に手を付けるのは、政治的にはギャンブルでしょう。これだけ価値観が多様化になってしまった後に、特定の価値観を示そうという手法は、果たして吉と出るか凶と出るかは判りません。「押し付けがましさ」をいかに意識させないかということが、鍵になるでしょう。
・桜f新町長五郎殿
そういえば、宮沢さん以降、国立大学卒の宰相は、出ていませんね。政治は、特に旧帝国大学に入る費用に比べたら、割に合わない世界kかもね。

Posted by: 雪斎 | September 01, 2006 at 10:42 AM

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