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July 15, 2006

週末の風景

■ 月曜以降、更新を中断している間に情勢は動いた。土曜夕刻時点での「読売」最新記事である。
 

□ 英仏が折衷案、中国「支持できる」…日米受け入れ検討
 【ニューヨーク=白川義和】日本は14日、北朝鮮のミサイル発射に対する日米英仏など8か国提案の決議案について、中露との協議をもとに修正案をまとめ、同日夜の国連安全保障理事会非公開協議に提出した。
 中国が、修正案に国連憲章7章への言及が残っていることに強く反対したため、英仏両国は同協議で「7章」に言及しない折衷案を提案。中国は支持できるとの考えを示した。日米も英仏案の受け入れを検討している。最終決議案は15日午後(日本時間16日午前)、採決に付され、15日に採択される公算となった。
 修正案は、中露が問題視していた「安保理が国連憲章7章のもとで行動」との条項を「7章40条のもとで行動」と修正、軍事行動や経済制裁の可能性を排除した。7章40条は、安保理が事態の悪化を防ぐため、関係国に「暫定措置」に従うよう要請できるとの規定。経済制裁をうたった同章41条、軍事行動を可能とする同章42条の前段階にあたる。

 

 度々、論じてきたように、北朝鮮に関しては、①「制裁決議」、②「非難決議」、③「議長声明」の三つのオプションが考えられたけれども、既に③は消えた。結局、議論の争点は、①と②のどちに近いかということでしかない。
 現下の争点は、国連憲章第7章「平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為に関する行動」に言及するかどうかである。
 国連憲章を確認する。
第39条
 安全保障理事会は、平和に対する脅威、平和の破壊又は侵略行為の存在を決定し、並びに、国際の平和及び安全を維持し又は回復するために、勧告をし、又は第41条及び第42条に従っていかなる措置をとるかを決定する。
第40条
 事態の悪化を防ぐため、第39条の規定により勧告をし、又は措置を決定する前に、安全保障理事会は、必要又は望ましいと認める暫定措置に従うように関係当事者に要請することができる。この暫定措置は、関係当事者の権利、請求権又は地位を害するものではない。安全保障理事会は、関係当時者がこの暫定措置に従わなかったときは、そのことに妥当な考慮を払わなければならない。
第41条
 安全保障理事会は、その決定を実施するために、兵力の使用を伴わないいかなる措置を使用すべきかを決定することができ、且つ、この措置を適用するように国際連合加盟国に要請することができる。この措置は、経済関係及び鉄道、航海、航空、郵便、電信、無線通信その他の運輸通信の手段の全部又は一部の中断並びに外交関係の断絶を含むことができる。
第42条
 安全保障理事会は、第41条に定める措置では不充分であろうと認め、又は不充分なことが判明したと認めるときは、国際の平和及び安全の維持又は回復に必要な空軍、海軍または陸軍の行動をとることができる。この行動は、国際連合加盟国の空軍、海軍又は陸軍による示威、封鎖その他の行動を含むことができる。

 「読売」記事が伝えたように、「40条言及」で落着するのであれば、それは、「いい落し所」であろう。北朝鮮が再び同じことをやれば、次は、「41条」、「42条」が待っている。そうしたことに道筋を付けるためにも、「対朝予防暫定措置発動決議」で落とせるならば、落としたほうがいいであろう。そして、雪斎が「平和主義者」でないならば、北朝鮮には「次の一発を撃たせる」仕掛を考える。「次の一発」があれば、「41条」、「42条」を根拠にした制裁発動には、もはや中国も抵抗できまい。もっとも、雪斎は、平和主義者なので、「次の一発」を撃たせない方策を真面目に考えることにしよう。こちらの方が今は、難儀であろう。
 どういう決着になるのか。

■ 木曜日夕刻以降は、長谷川毅先生の「読売・吉野作造賞」贈賞式に参集した。式の模様を伝える「読売」記事である。

□ 長谷川毅氏に吉野作造賞贈賞
第7回「読売・吉野作造賞」の贈賞式が13日夜、東京・丸の内のパレスホテルで行われ、受賞作「暗闘 スターリン、トルーマンと日本降伏」(中央公論新社刊)を著したカリフォルニア大学サンタバーバラ校歴史学部教授の長谷川毅氏(65)に、正賞の文箱と副賞(300万円)が贈られた。
 式には言論界、経済界などから約200人が出席、渡辺恒雄・読売新聞グループ本社会長・主筆が「読売新聞はいま戦争責任の検証を行っているが、受賞作は貴重な資料となった」とあいさつ。選考委員会座長の宮崎勇氏は「戦争を収めるのは難しい。そのいきさつを丹念に、立体的に実証した」と祝辞を述べた。
 長谷川氏は「日本が終戦に至った経緯を国際的な文脈から分析した。私の解釈が、激しい論争のある問題を深めていく契機になると認めていただき、感謝している」と喜びを語った。

 長谷川先生にお目にかかったのは、十数年ぶりである。一九八〇年代後半に当時の日本では珍しかった安全保障講義を聴き、長谷川先生の査読を経た「安全保障」論稿で最初の大きな賞を取り、それから二十年近経った今は「安全保障」を題材にした書を執筆中である。「三つ子の魂、百まで」ということはないであろうが、結局は、やっていることは若き日とかわらない。「読売」首脳の方から声を掛けられた。「十年以内には、君が壇上だな…」。雪斎は、「努力します」と答えるより他はなかった。ハードルが、高い…。
 会場で旧知のH・S氏に会った。H・S氏は、Vertical.Inc という会社を興し、日米両国を股に掛けた出版ビジネスに乗り出していた。H・S氏の仕事から、佐々木譲著『ベルリン飛行指令』が『Zero over Berlin』として刊行されている。次は、『エトロフ発緊急電』、『ストックホルムの密使』は、どうだろうかと思う。H・S氏には、雪斎の最初の著作を刊行する際に尽力してもらった。雪斎も、何時かは広く海外に紹介してもらうに足る著作を書き上げたいものである。

■ 韓国で『韓半島』という映画が封切られたようである。日本の海上自衛隊と韓国海軍が交戦して、韓国海軍が勝つという設定があるらしいけれども、何を寝惚けたことをやっているのであろうか。
 「平和を望んでいないのは、韓国だ」とわざわざ内外に喧伝するような映画を制作して、何をしようとしているのであろうか。こうした映画の一つ一つが、朝鮮半島有事の折には、「韓国は平和を望んでいなかった」証拠として使われる。雪斎は、韓国は嫌いではないけれども、こういう阿呆ぶりには付き合いたくないと思う。

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Comments

>「平和を望んでいないのは、韓国だ」とわざわざ内外に喧伝するような映画を制作して、何をしようとしているのであろうか。

閉塞感なんだと思います。
そして、わが国にも石破茂さんが仰るとおり「実際の戦争を知らない人間が増えてきた」ゆえの好戦的空気があるように、韓国も同様なのではないかと。

女優の森光子さんが靖国神社の「みたままつり」に際し、大きな献灯をなさったようです。
そして一方ではテレビ等で何回も
「戦争だけはやってはいけません」と繰り返し仰る。
そういう、戦争についてリアルな感覚を持った世代が、段々少なくなってきたことが大きいのでしょう。

Posted by: るびい | July 16, 2006 at 07:29 AM

非難決議案は英仏案で採択されたようですね。
まあ制裁決議にならなかったことで批判する人もいるのでしょうが、僕は今回日本はよくぞここまでやったものだと思います。もう一度ミサイル発射があれば、中露も制裁決議を拒否できないでしょうから。このこと自体が、北朝鮮のミサイル発射を阻む大きな圧力になるでしょうし。中露も最低限の面子は保ったと言えるでしょうから、勝ちすぎでなくて却って良かったかも。
しかし、今回一番割を食ったのは韓国でしょう。日米、中露両陣営から蚊帳の外に置かれるし、北朝鮮に対する外交的影響力が皆無なのが明白になってしまったし。今後は盧武鉉大統領のレームダッグ化が一気に進むんでしょうね。彼は退任後、対北援助関係のスキャンダルに巻き込まれるのかもしれませんね。w

Posted by: Baatarism | July 16, 2006 at 11:55 AM

安保理で採択された北朝鮮決議の全文
http://www.sankei.co.jp/news/060716/kok034.htm

英国が提示した国連憲章7章40条に代わる表現を取り入れる事で、国連憲章7章は削除したけど、法的拘束力あるそうです。

「北朝鮮のミサイルや大量破壊兵器開発に関連したいかなる金融資産の移転も阻止するために必要な措置を、加盟国に要求する。」こんな文言もはいっているので、非常に厳しい制裁決議だと思います。

Posted by: 電波小僧 | July 16, 2006 at 03:55 PM

るびい殿
きちんと考え続けることが大事ですね。
Baatarism殿
盧武鉉じゃあ…駄目だわな。
韓国国民に「同情」したくなってきましたよ。
電波小僧殿
仰せの通りです。

Posted by: 雪斎 | July 16, 2006 at 05:00 PM

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