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July 07, 2006

国連安保理という「戦場」

■ 北朝鮮ミサイル発射絡みでいえば、雪斎が関心を寄せているのは、国連安保理決議の動向である。北朝鮮が「テポドンⅡ」をもう一発、撃ってくるという観測があるけれども、雪斎には、もはや余り興味もないことである。不謹慎な喩えであるけれども、「処女・童貞であるかそうでないかは重大な違いであるが、一度目か二度目かは、もはや問題ではない」というのと同じことである。もっとも、二発目が日本国内に着弾したりアラスカ沖にまで届いたりして、「脅威」を現実化させたりすれば、事情は変わるであろうが…。
 

□ 国際包囲網で圧力強化へ 政府、北朝鮮ミサイルで
 【共同】政府は6日、北朝鮮のミサイル発射で、国連安全保障理事会の制裁決議のほか、15日からの主要国首脳会議(サンクトペテルブルク・サミット)で非難声明採択を求める方針を固めるなど、北朝鮮に圧力をかけるための国際的包囲網構築の動きを強めた。防衛庁は再発射の可能性があるとして、情報収集と警戒態勢を継続した。
 一方、安保理は日本時間7日未明から担当官会議を開催。ただ常任理事国の中国、ロシアの反対で、安保理決議の週内採択は困難な状況になっており、内容を緩めた非難決議や拘束力のない議長声明などとなる可能性もある。
 □ 対北制裁めぐり実質協議=迅速対応目指し、会合継続-安保理
 【ニューヨーク6日時事】北朝鮮のミサイル発射問題をめぐり、国連安全保障理事会の各理事国は6日、前日に引き続き実務者会合を開催し、日本が提示した対北制裁決議案について実質的な討議に入った。安保理各国は迅速な対応を取る必要性では一致しており、決議案採択に反対する中ロ両国と、制裁を主張する日米英3カ国の距離がどこまで縮まるかが焦点だ。
 安保理各国の代表部は5日の実務者会合で、日本から決議案の内容について説明を受けた。各代表部はこれを受けて本国政府に対応を照会。各国は6日の会合にこの結果を持ち寄り、決議案の中身に関し本格的な話し合いを開始した。 
 □ 日米主導の制裁に反対=ミサイルを6カ国協議の議題に-ロ大統領
 【モスクワ6日時事】ロシアのプーチン大統領は6日、インターネット会見を行い、北朝鮮による弾道ミサイル発射について、「常識を外れた感情的反応をすべきでない」と日米両国が主張する北朝鮮制裁に反対した。また、北朝鮮のミサイル問題を核問題に関する6カ国協議の議題とするよう提案した。

 ジョン・ボルトン(米国国連大使)の発言によれば、日本作成の対朝制裁案に対する賛否状況は、「13-2」だそうである。難色を示している「2」というのは、ロシアと中国である。イラク戦争開戦時には米英両国に衝突したフランスも、今度は「こちらの側」である。
 ロシアと中国は、日本案に難色を示していることでは一致しているけれども、決して結束しているわけではない。とすれば、日本外交の焦点は、ロシア説得になるであろう。折しも、サンクトぺテルブルク・サミットが開かれるのであるから、この案件を含めて、ウラジーミル・プーチンに「花」を持たせる配慮が加えられればよい。ロシアには、サンクトペテルブルク・サミットで議長総括では現在の日本案に近い形で対朝政策方針を取りまとめるべく、この案件に関する対応で主導権を発揮してもらって、そのサミット後に同じ趣旨の話を国連安保理に出してもらえれば、いいであろう。「強い大国ロシア」の自負心を満足させてあげる仕掛けが大事である。
 中国は、拒否権を発動しなければ、この案件に関する害はない。「北朝鮮と同類」と見られるのは、中国にとっても迷惑であろうから、その点を突いていけばいいでろう。
 こうした国連工作は、日本人が延々と続けてきた「朝廷工作」と同じ趣旨のものである。国連は、結局は「権威」の枠組なのであるから、そうした「朝廷工作」の記憶が呼び覚まされれば、誠に結構である。源平の時代の「院宣」、幕末の「密勅」…。
 雪斎は、現在、協議されている日本作成の対北朝鮮制裁決議案が、たとえ「制裁の文言を含まない非難決議案」にトーン・ダウンして採択されたとしても、そのこと自体は日本外交の成果であろうと思う。「テポドンⅡ」発射というカードを切った北朝鮮とは異なり、こちらには色々とカードがある。「二の矢」、「三の矢」を考えておけばよいだけのことである。


 

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Comments

冷徹な分析で「雪斎節」を味わい、精神衛生に大変よいです。やはり餅は餅屋を実感しました。『論座』の石破先生のインタビューで「え゛っ」ってなりました。ごく一部だと思いますが、ちょっとでも意見が合わないと、なんでも「左翼」のレッテルを貼る方がいらっしゃるようで。このような言論は儚いものであることを自覚していただきたいものです。十年以上前だったら、抹殺されていますけどねという趣旨の発言には微苦笑を禁じえませんでしたが。多分、80年代だったら、雪斎先生も「ウルトラ・タカ派」のレッテルを貼られていたのでしょうか。なんだか、どうでもいい感じです。

Posted by: Hache | July 07, 2006 at 09:25 AM

今朝「朝ズバ」を見ておりましたら、額賀長官がご出演でした。
私が「おおお」と思ったのが、「常任理事国のなかで日本の立場を理解してくれているのは、同盟国の米国、そして英国。ロシアと中国は違う立場」との発言でした。あののんびりとした語り口から、こういう国際社会の現実/事実をハッキリおっしゃられたことが新鮮な驚きでした。ロシアはどうなってるんでしょうね(→ムネさんの爆発的な政治力がなつかしかったりして)。

「朝廷外交」では、イラク攻撃の際、小泉さんがブッシュさんに「権威付けは必要だ。日本も京都の朝廷の承認が必要だった」と説得したといいますし、あとは「忍び」の復活だけですね(^o^)

Posted by: さくら | July 07, 2006 at 09:42 AM

中国はともかく、ロシアは断り無しにウラジオストク沖にミサイルを落とされてこのまま平静でいられるんでしょうか?
まかり間違って船舶にミサイルが当たったら大惨事ですからねえ。日本にミサイルが飛んでくるよりも確率は高そうですし。
そこまで行かなくても、シベリアの経済や政治に与える影響は無視できないでしょうね。

Posted by: Baatarism | July 07, 2006 at 12:42 PM

戦場、国連に移ったならば、国連の場でどうすることが国益なのかを十分に検討しておく必要がある思います。
ただ単に決議を採るということだけでなく、例えば「逆リットン調査団」の派遣と云うことを提案し、此の件から目をそらさせないという手もあるのではないかと思います。
其のほうが日本にとって六カ国協議より長期的に、ねっとりとした圧力をかける方法になると考えますが如何ですか?

Posted by: ダンゴ | July 07, 2006 at 01:24 PM

ロシアの自負心に訴えるのは実によいやり方と思います。あの国が
やっと「北の大国」というプライドをおおっぴらに言えるようになって
きたタイミングでもありますし。

中国も内心は北朝鮮への不快感は強いので、棄権するように仕向ける
ことは可能でしょう。ただしなんらかの「アメ」、つまり中国のメンツを立て
自負心をくすぐるような手立てが必要と思います。この類いの「アメ」は
お金も国益も犠牲にせずに与える道はあるでしょう。

ですが最近の「論者」たちを見ていると、この類いの「アメ」にさえ「媚中」
もっといえば「反日」「裏切り者」というレッテルを張られる可能性はある
と思います。感情が勘定より遥かに強い人たちも多いのかもしれません。

Posted by: がり | July 07, 2006 at 06:35 PM

ミサイル報道の翌日、自分の趣味関係の掲示板もすっかり北朝鮮強硬論一色…もちろん政治、経済、安保とは全く無関係の掲示板なので、そういった類の話題は今まで一切出たことが無かったのにそんな状態でした。

そこで私が「無駄に騒ぎ立てず、冷静に対処すべき。先人の残した教訓に学んでは?」という趣旨の書込みをしたら、非国民だの左翼だの有事にはお前が真っ先に死ぬだのと…もう非難轟々でした。

小学生の時に大空のサムライを読んで以来の軍事オタクで保守を自負してる自分が左翼呼ばわりか…と暗澹たる気分になりました。なんというか、やっぱりこれは近代~現代史をロクに教えない教育のせいもあるのかなぁ、などと心配にもなりました。

Posted by: hide | July 07, 2006 at 08:30 PM

>こうした国連工作は、日本人が延々と続けてきた「朝廷工作」と同じ趣旨のものである。

つまりアメリカ幕府と国連朝廷の下でサバイバルする藤堂家・日本てな感じですか。
(朝廷工作となると薩摩・長州・意外や我が地元の松浦家等の方がいいのでしょうが、対幕府関係からするとどうみても譜代な外様である藤堂さん家がイメージには近そうです)

北は…大坂城に立て籠もった淀殿?(殴)

Posted by: あっとさせぼ | July 07, 2006 at 10:22 PM


・hache殿
御意。
・さくら殿
「石破」記事は御覧になりましたか。
・ダンゴ殿
御説、検討に値するとおもいます。
・baatarism殿
実はロシア世論も硬化していて、もう一発があれば、プーチンも態度を変えざるをえないそうな。
・がり殿
「勘定よりも感情」というのは何時ものことです。自分が飲まれなければいいということでしょう。。
・hide殿
近現代史にかんする一応の「常識」も出来上がっていないhという事情もあるでしょう。
・あっとさせぼ殿
「藤堂家」は、幕末には一番最初に寝返ったのですよね。

Posted by: 雪斎 | July 08, 2006 at 04:43 AM

遅レスでありますが。

>「藤堂家」は、幕末には一番最初に寝返ったのですよね。

鳥羽伏見の戦いですね。
藩主に相談すらせず現場の家老がやっちゃったという…。
まあ、前例通りならアメリカ幕府が大政奉還(どこにだ)して新政府が立ち上がった後ですから、現状しばらくは考慮せずとも良いでしょう。

Posted by: あっとさせぼ | July 21, 2006 at 09:09 PM

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