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June 10, 2006

長谷川毅先生、おめでとうございます。

■ 雪斎にとって誠に嬉しいニュースが流れた。「読売」一面に載った記事である。
 □ 第7回「読売・吉野作造賞」に長谷川毅氏
 第7回「読売・吉野作造賞」の受賞作は、カリフォルニア大学サンタバーバラ校歴史学部教授・長谷川毅氏(65)の著書『暗闘 スターリン、トルーマンと日本降伏』(中央公論新社刊)に決まった。正賞の文箱と副賞300万円を贈る。
 同賞は、読売論壇賞と中央公論新社の吉野作造賞を一本化して2000年に創設された。今回は昨年4月から今年3月までに発表された単行本、雑誌論文を対象とし、選考委員会の厳正な審議により決定した。
 長谷川氏の受賞作は、1945年4月から9月までの太平洋戦争終結の全体像を、アメリカ、ソ連、日本をめぐる外交・軍事関係を中心に豊富な資料を駆使して緻密(ちみつ)に分析し解き明かした研究書。

 長谷川先生は、一九八〇年代後半から九十年代初頭にかけての数年間、北海道大学スラブ研究センター教授を務めていた。雪斎は、丁度、その頃、北海道大学の学生であった。だから、雪斎は、長谷川先生の講義を聴いていた。当時の長谷川先生は、北海道大学のあのだだっ広いキャンパスを自転車で移動されていた。
 長谷川先生の講義で行われていたのは、「核戦略論」であった。それは、当時としては、画期的であった。1980年代には、国立大学の枠組の中で、「軍事」や「安全保障」がまともに講じられていたのは、多分に防衛大学を除けば、ほとんどなかったからである。米国・ソ連の核バランスの話であるとか「脆弱性の窓」と呼ばれた核戦略の隘路の話とかが続々、出てきた。憲法改正の可能性を口にしただけで閣僚の首が飛んだ時代に、このような講義がよくぞ聴けたものだと今にして思う。
 しかし、長谷川先生に関しては。雪斎には、どうしても書いておかなければならないことがある。1987年の2月から3月辺りの時期に、北海道大学の学生食堂に一枚のポスターが貼られていた。それは、安全保障、国際関係に関する論文を学生に募集する外務省主催のコンクール・イヴェントの広告であった。雪斎は、そのイヴェントに応募する原稿を書いたのであるけれども、その折にコメントを求めたのが長谷川先生であったのである。「よく書けている」というが、長谷川先生のコメントであった。雪斎は、長谷川先生のコメントを経た論文を提出し、その論文は第一次審査を通過し、雪斎は、夏休み前に外務省で開催される第二次討論審査に臨んだ。審査委員は、細谷千博先生、故・佐藤誠三郎先生、 故・草柳大蔵氏といった方々であった。第二次審査を経て、雪斎が手にしたのは、全く予想しなかった最高賞の「外務大臣賞」であった。
 大学二年生の段階で「外務大臣賞」のような大仰な賞をもらってしまえば、普通の若者は、大体、「勘違い」をする。雪斎は、どのような形であれ外交・安全保障という領域に関わりを持ち続けることに決心したし、それは自分の天命に違いないと信じ込んだ。折しも、世は「バブルの狂濫」の最中である。雪斎は、北海道大学学生時代の後半は、そうした世情を尻目に、日々、書を読み漁っていた。早いうちに、大学院に進むことも決めた。それだけ、「外務大臣賞」をもらったことは、若き日の雪斎には、プレッシャーになっていったのである。そして、その夏から、19年の歳月が経とうとしている。
 だから、長谷川先生は、雪斎の政治学者としての足跡の原点に立ち会って頂いた人物である。雪斎は、長谷川先生には恩義を感じている。雪斎は、長谷川先生の此度の受賞が殊の外、嬉しい。雪斎も、何時の日にか続きたいものである。
 長谷川先生、おめでとうございます。そして、ありがとうございます。贈賞式には必ず参上させて頂きます。

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「学者生活」カテゴリの記事

Comments

雪斎さま
中央公論で読みました。おめでとうございます。雪斎さんの恩師だったのですね。この本は是非読もうと思います。

Posted by: 珈琲 | June 15, 2006 at 07:43 PM

珈琲殿
 「これぞ学者の仕事」という作品だと思います。

Posted by: 雪斎 | June 16, 2006 at 12:39 AM

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