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May 01, 2006

イラン情勢の怖さ

■ かなり怖いニュースが流れている。『共同通信』が伝えた記事である。
 

□ イランと巨額契約調印へ 中国、米の制裁論けん制
 【テヘラン30日共同】劉振堂・駐イラン中国大使は30日までに、イランのメヘル通信に対し、同国での石油と天然ガスの開発をめぐる総額約1000億ドル(約11兆4000億円)の契約が数日中にも調印されるとの見通しを示した。「どの国もこの合意を阻むことはできない」とも述べ、核問題でイランに経済制裁を科そうとする米国などの動きをけん制した。
 国連安全保障理事会の常任理事国である中国が対イラン制裁に反対する背景に、巨額のエネルギー権益があることがあらためて浮き彫りになった。
 劉大使は「イランが石油を売ることを妨げるのなら、米国はわれわれに同じだけの石油を売ってくれるのか」と語り、イランに対して圧力を強める米国を痛烈に批判した。

 
□ イラン軍がイラク領侵入 クルド武装勢力掃討で
 【カイロ30日共同】ロイター通信によると、イラク国防省は30日、同国北部の山地に潜伏するトルコのクルド人武装組織「クルド労働者党」(PKK)勢力に対し、イラン軍が砲撃を加えた上、国境から約5キロイラク領に入り攻撃したと発表した。
 イラクのクルド人政党は4月21日、イラン軍がイラク領内に砲撃を加えたと公表したが、イラク政府が確認したのは初めて。
 クルド人武装勢力の掃討作戦を強めるトルコ政府は、イラク北部にPKKメンバー約5000人が潜伏中と主張。同様にクルド人問題を抱えるイランも警戒を強めている。

 誠に嫌なニュースである。ジョージ・W・ブッシュやコンドリーザ・ライスが怒り狂っている様子が眼に浮かぶようである。と思っていたら、早速、次のニュースが入ってきた。
  

□ 有志国でのイラン制裁も 核問題で米国務長官
 【ワシントン30日共同】ライス米国務長官は30日、イラン核問題で「国連安全保障理事会が迅速に行動しなければ、有志国が追加的な措置を検討することもできるし、そのつもりだ」と言明。中国やロシアの抵抗で今後の安保理協議が不調に終われば、欧州や日本など同盟国を中心とした制裁に動く可能性を示唆した。米CBSテレビとのインタビューで語った。
 ライス長官はまた、ABCテレビとのインタビューで、イランが安保理議長声明にもかかわらずウラン濃縮活動を拡大、継続させたことに対して「(30日以内の濃縮停止活動を求めた3月末の安保理)議長声明をまた採択するわけにはいかない」と述べ、経済制裁などを規定した国連憲章7章に基づく決議の必要性を強調。

 対イラン有志国連合の形成という段階に至れば、日本は、その連合に粛々と加わる他はない。ただし、現時点では、外交落着の道は閉ざされていないので、日本政府も、その方向で努力しなければならない。
 ところで、この時期に対イラン接近を図った中国政府の姿勢は、だいぶ危なっかしいものであるといわざるを得ない。劉振堂・駐イラン中国大使は、「イランが石油を売ることを妨げるのなら、米国はわれわれに同じだけの石油を売ってくれるのか」と語ったと伝えられているけれども、雪斎は、この大使の物の言い方をどこかで聞いたことがある。
 一九七三年秋、第四次中東戦争勃発直後、米国政府は、ヘンリー・キッシンジャーを日本に派遣し、対米、対イスラエル支持の徹底を求めたとされているけれども、田中角栄は、その求めに応ずるのを渋った。田中とキッシンジャーの間には次のような遣り取りがあったようである。
 田中角栄
  : もし、日本がイスラエル支持を鮮明にしアラブから石油を止められたら、米国は代わりに石油を売ってくれるのか。
 ヘンリー・キッシンジャー
  : それは難しい。
 田中角栄
  : それならば、貴下の言うとおりにできるはずはないではないか。
 噂によれば、この田中の遣り取りがキッシンジャーを通じて米国政府中枢に伝えられ、激怒した米国政府が田中の追い落としを画策し、その帰結が「ロッキード事件」であったらしいけれども、その噂の真偽は定かではない。ただし、キッシンジャーのメモワールを読めば、キッシンジャーが田中に抱いた不快感は、かなり伝わってくる。
 さらにいえば、米国政府は、此度の中国のイランに対する接近に関して、ナチス・ドイツに接近した大日本帝国に類するものとして受けとめる可能性がある。此度の対イラン制裁論議の最中で中国政府が度を越した対米「牽制」に走れば、中国という存在それ自体が完全な「敵」と認定されかねない。米国は、冷静に利害を計算して行動している段階はともかくとして、「法律家的、道徳家的手法」に走った段階が怖い。現下の中国政府は、自らの対米「牽制」が、そうした方向に米国を追い遣りはじめているかもしれないとは考えないのであろうか。

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Comments

ブロガーでイラン情勢を書く人は少ないですね。イランは自国の石油決済にドルでなく、ユーロあるいは元を使うと宣言しましたね。アメリカがこの基軸通貨への挑戦を見逃すとは思えません。イラクもユーロ移行を志向していました。サウジはこの原油高でアメリカが脱石油(石炭へ)を招くことを心配しています。その無公害石炭ボイラー発電(酸性雨を招かない)は日本のお家芸です。中国には採掘技術さえ整えば石炭は豊富にあります。解決の方法はあっても中国の政治が逃げています。

Posted by: SAKAKI | May 01, 2006 at 11:53 AM

 このニュースもかなり怖いかと。
 イラン最高指導者、核技術「他国移転の用意」
http://www.nikkei.co.jp/sp2/nt96/20060425SSXKC079225042006.html

 米国への牽制の意味合いが強いのでしょうがかなり気になる話ですね。核技術の移転を米国は最も嫌っているはずですから。

 中国はそれだけエネルギー事情が逼迫しているのでしょうが、最近のサウジやナイジェリア間でもそうでしたが、石油囲い込みに湯水の如くお金を費やすというのは賢明な事なんでしょうか?。環境問題や収入格差等もっとお金が必要な、緊急な課題があるだろうに・・・。
今後5年で先端科学技術研究に25兆円投じる、省エネ技術・石油使用効率共に世界一の日本。一方、度を越した経済成長の影でエネルギー確保の為に何十兆円も投じざるを得ない中国。この違いは5年後、10年後に大きな差として表れるのではないでしょうか。

 イランに関しては自らの力を過大評価し過ぎだと思います。危機が深まれば原油が高騰しイランはそれだけ潤う、先進工業国はダメージを受ける、そう考えているようです。しかし必ずしも他の産油国は現在の原油価格急騰を歓迎してはいません。この辺に関しては長谷川慶一郎氏の解説(http://www.yamagatashoken.co.jp/hasegawa/2006-0424.html)
に詳しいです。原油価値の高騰故に、産油国の地位が低下するという皮肉の流れがあるようです。

Posted by: ささらい | May 01, 2006 at 12:06 PM

以下のニュースはどう読むべきなのでしょうか。
私の脳内では、「中東情勢複雑怪奇」となっている次第です。

イランからのパイプライン建設、6月に調印へ・インド
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20060501AT2M3000N01052006.html

イランからパキスタンを経てインドにいたるガスパイプラインだそうですが、、、

Posted by: MUTI | May 01, 2006 at 02:57 PM

週末もイラン情勢は注目され報道が相次いでいたと感じました。ガソリン代は上がるし車は売れないと日本への影響大。アフリカだけでなう小泉首相イランもよろしくお願いしますというところですか。

Posted by: 星の王子様 | May 01, 2006 at 07:58 PM

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