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May 09, 2006

折々の言の葉 8 『漢書』「司馬遷伝」

■ 「それ孝は親に仕えるに始まり、君に仕えるに中し、身を立てるに終わる。名を後世に揚げ、以て父母の名を顕す。之れ孝の大なるものなり」。
    ― 『漢書』「司馬遷伝」―

 これは、司馬遷の父・太史公が臨終の折に息子に遺言として語った言葉の一説である。元は『孝経』からの引用であった。太史公は、長い間、中断されていた史料の収集と整理、史書の叙述といった事業を息子に託した。司馬遷にとって『史記』の編纂は、父親から受け継いだ事業であったのである。

 中国には、「親の七光」どころか「子の七光」という考え方があるのだそうである。要するに、ある人物が栄達を極めれば、その父祖も「貴族」として扱われるということである。日本でも、「チチロー」や「松井パパ」と親しまれている御両人は、そうした事例かも知れないし、新聞全国紙の訃報記事に「○○株式会社社長▲▲氏の母」という形で紹介される人々も、そうした事例であろう。御本人は至って平凡な人生を送ったにもかかわらず、息子や娘が活躍したお陰で、名前が残ることになった。「名を後世に揚げ、以て父母の名を顕す」というのは、そういうことである。
 それにしても、『史記』で列伝を著した司馬遷は、二百年後には自分が列伝中の人物として描かれることになると思っていただろうか。そういう意味では、「歴史家が描いた歴史家」というのも面白い。

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