« 何をやってんだか…。 | Main | 折々の言の葉 8 『漢書』「司馬遷伝」 »

May 07, 2006

折々の言の葉 7 G・F・ケナン

■ 「もし私が外交官としてよい仕事が出来たことがあるとすれば、それは私が歴史を好み学んだからだ。もし私によい歴史が書けたとすれば、それは私が現実の外交に取り組んでいたからだ」。
   ―ジョージ・フロスト・ケナン―

 連休も末日である。雪斎は、とある出版社から出す予定の新書の原稿を書いている。此度の書は、完全な政治の書である。少し前まで、中森明菜、斎藤由貴、薬師丸ひろ子を流しながら書いていたけれども、今、流しているのは、「村下孝蔵」である。全然、脈絡のないセレクションになっている。村下さんのアルバムには、アコースティック・ギターの演奏で歌われた『踊り子』『春雨』を収めたものがあるけれども、それは、誠に味わい深い。

 自分の書くもので楽しい原稿は、歴史の書を読み色々な物事を考えながら、書いた原稿である。昔日、高坂正堯先生は、「宰相吉田茂論」を書き、吉田茂に対するネガティブなイメージを逆転させた。佐藤誠三郎先生は、『正翼の男』を著し、笹川良一という「篤志家」にまつわる胡散臭いイメージを修正した。今は、マス・メディアや左右両翼の知識人が挙って叩いている小泉純一郎という宰相にも、正当な評価が与えられる日は遠からず来るであろう。
 ところで、新書の執筆に際して、シャルル・ド・ゴールの事跡を確認していたら、興味深い事実に気付く。ド・ゴールにとって、困難を極めた内治課題の最たるものは、アルジェリア殖民地の放棄であった。これの最大の障害となったのは、アルジェリア在住フランス人居留民と現地駐留フランス軍将校団だった。彼らは、アルジェリア独立の動きには頑強に抵抗したのである。彼らは、アルジェリア独立への動きを止めることのできる人物として、当初はド・ゴールの再登場を切望し、歓迎したのである。
 ド・ゴールは、どうしたのか。先ず、政界復帰に際して、大統領に「独裁」権限を付与する憲法改正を断行して、自分の手に権限を集中させた。そして、大統領権限を掌握した後は、アルジェリア独立の方針を打ち出した。裏切られたと怒り狂ったアルジェリアのフランス人と将校団は、ド・ゴールに対する「抵抗勢力」と化して、フランスやアルジェリアでのテロに走るものの、ド・ゴールは、そうした抵抗を大統領権限で徹底して抑え込むと同時に、ラジオ・テレビでの演説を通じて国民的な支持を取り付けた。無論、ド・ゴール自身は、何度も暗殺の対象にされている。
 このド・ゴールのスタイルは、「郵政政局」の折の小泉純一郎総理にも、そのまま重なる。小泉総理は、総裁としての権力をを強烈hに用い、メディアを通じた国民の支持獲得を通じて、「抵抗勢力」を封じ込めたわけである。ド・ゴールとの違いは、「血が流れたか」ということでしかない。
 なるほど、小泉総理の手法は、ド・ゴールの事跡を前にすれば、確かに理に適っていた。「自分を支持してくれる層」を封じ込めようとすれば、こうした手法は「あり」なのであろう。
 やはり、歴史は楽しい。
 そして、雪斎は、将来、ケナンに倣って次のように書けるようになればいいなと思っている。
 「もし私が政治の現場でよい仕事が出来たことがあるとすれば、それは私が歴史を好み学んだからだ。もし私によい政治学の書が書けたとすれば、それは私が現実の政治に取り組んでいたからだ」。
 今期国会も後、二ヵ月である。これが終われば、自民党も、「総裁選挙モード」である。昨年の夏は、熱かった。今年も、熱い夏になるのか…。公職選挙法も適用されない、「何でもあり」の選挙である。

|

« 何をやってんだか…。 | Main | 折々の言の葉 8 『漢書』「司馬遷伝」 »

「折々の言の葉」カテゴリの記事

Comments

 総裁選どうなるんですかねぇ。かんべえさんは「波乱はなし」と評していましたが。僕も麻生さん支持なんですが、雪斎さんは立場上複雑そうですね。

Posted by: ささらい | May 07, 2006 at 12:06 PM

・ささらい殿
 総裁選絡みだと立場上、表向き書けることは多くないと思います。「何を書いていないか」で判断してもらうしかないかもしれないかもしれません。まあ、「無風」ということはないと思いますが…。

Posted by: 雪斎 | May 07, 2006 at 01:04 PM

どういう総裁になるかどうかは、夏の景気による。
今の浮かれた景気感が続けば、アジア主義の腑抜けが選ばれるだろう。そうして、また日本経済は漂流を始めることになる。
景気が下降し始めれば、離中離韓派が選ばれるだろう。
そうすれば、日本経済は明るい時代を迎えることになる。
夏までに100円を切る円高が来てくれることを切望する。

Posted by: 反中派 | May 07, 2006 at 09:21 PM

雪斎さま、

先の郵政政局で重要な小道具となったミモレット、実はド・ゴールの好物として欧米では知られているものです。日本のメディアでは記者の不勉強ゆえか何らかの政治的な意図ゆえかほとんど取り上げられていなかったような気がしますが。

もしも誰かの演出があってのことだったとしたら、ちょっとできすぎの感じもしますね。

Posted by: mitsu | May 08, 2006 at 03:51 AM

・mitsu殿
御教示、多謝。
ミモレットがド・ゴールの好物とは知りませんでした。
昨年の件は、「偶然の符合」だと思います。
ただし、小泉総理がド・ゴールの真似をしたのではないかと思わせる節は、「郵政政局」にはあったわけです。
拙者は、尊敬する政治家はと問われて、ド・ゴールの名前は必ず挙げます。
・反中派殿
貴殿は、金融方面の方でしたか。

Posted by: 雪斎 | May 08, 2006 at 04:54 AM

ドゴール氏は自らを支持した若手将校を裏切る形でアルジェリア殖民地の放棄を進めたのですか・・恥ずかしながら知りませんでした。西郷隆盛の逸話を思い出します。

Posted by: SAKAKI | May 08, 2006 at 09:30 AM

失礼ながら、「病」、膏肓ですね。出来上がった作品を拝見する側からすると、楽しい「病」ですが。本題と関係がなくて恐縮ですが、中森明菜、斉藤由貴、薬師丸ひろ子を聴きながらお仕事できるというのは羨ましいです。煩悩まみれの私だったら、もっと楽しいことをとなりそうで、修行が足りないことを感じます。

Posted by: Hache | May 08, 2006 at 11:53 AM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/71618/9835999

Listed below are links to weblogs that reference 折々の言の葉 7 G・F・ケナン:

« 何をやってんだか…。 | Main | 折々の言の葉 8 『漢書』「司馬遷伝」 »