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April 22, 2006

「竹島」その他

■ にわかに竹島周辺での日韓摩擦が激化しているようであるけれども、何ら慌てるほどのことでもあるまい。日本政府は、「国際法に則り…」という議論を展開したようであるけれども、その姿勢で行くのが賢明であろう。
 外交決着の行方はまだ判らない。決着するのか決裂するのか。韓国が余りにも独善的な態度を取るならば、日本は、国連に対して、竹島版「リットン調査団」の結成と派遣を働きかけるべきであろう。リットン調査団といえば、満州事変後、日本の国際連盟脱退を誘った「リットン報告書」を出したグループである。。今度は、同じことを日本から仕掛けてもいいであろう。
 「これからは、これがある」と語って万国公法の書を懐から出したという坂本龍馬の挿話は有名である。幕末・函館戦争の折、五稜郭総攻撃前夜、榎本武揚が黒田清隆に対して「海律全書」という海洋国際法の書を託したというのも、榎本が自分の生命よりも国際法の知識が受け継がれることを重視した挿話として、有名である。日本の近代の歴史は、「万国公法」との格闘の歳月である。日本政府が「国際法に則り…」と口にしたときの本気度は、馬鹿にすべきではないのである。
 因みに、雪斎の手元には、国際法の父と称されるフーゴー・グロティウス(Hugo Grotius)の主著『戦争と平和の法』の邦訳復刻版がある。この書は確かに面白い。

■ 今年度、雪斎は『朝雲新聞』のコラムを一年間、担当することになった。『朝雲新聞』は、自衛隊の部内紙という性格の新聞である。雪斎は、いわば「戦後の海兵の息子」なので、こういう機会が得られるのは率直に感慨深い。

  □ 『朝雲新聞』寄稿原稿  桜の季節に
 「当地昨今吉野桜の満開、故国の美を凌ぐに足るもの有之候。大和魂また我が国の一手独専にあらざるを諷するに似たり」。
 山本五十六は、戦前期に大使館付駐在武官としてワシントンに駐在していた折、このような文言を記した絵葉書を故郷の恩師に宛てて送っている。今、桜の季節を迎えて、筆者が思い起こすのは、この山本の言葉である。
 第二次世界大戦では日本が米国の「物量」の前に膝を屈したという印象は、多くの日本人の意識に刻み込まれている。しかし、アーリントン墓地に程近い「海兵隊戦争記念碑」(硫黄島メモリアル)に描かれた米軍兵士の表情が示すように、米国もまた、日本の「大和魂」には自らの「ヤンキー・スピリット」を以て対峙した。戦時中、米国の同盟国であった英国もまた、米国参戦まで続いたナチス・ドイツとの孤独な闘いに際しては、自らの「ジョン・ブル・スピリット」を発揮していた。開戦前には、豊かさに慣れた米軍兵士の「精神」の弱さを侮る向きが旧軍部内にあったと伝えられているけれども、戦争の実態が示したのは、確かに山本が書いたように、「大和魂また我が国の一手独専にあらざる」風景であったのである。
 凡そ、武官とは、それぞれの国々の「精神」を体現する存在である。ただし、武官は、戦闘を通じて他国の「精神」とも直接に触れ合う存在でもある。そうであればこそ、山本の言葉は、武官においてこそ自らの「精神」に縛られない視野の広さが求められるということを訴えたものとして、解されるべきである。事実、戦前期の日本がナチス・ドイツとの提携に傾く流れの中で、山本は、旧海軍有数の「知米派」として、そうした流れに抗い続けたのである。
 そして、発足後半世紀を経た自衛隊は、今では他国との「協調」を実現する枠組として期待されている。たとえば既に二年半近くの間、イラクに派遣されている自衛隊部隊は、米国を初めとする幾多の国々との「協調」を実現し、イラクの人々の「共感」を獲得する枠組として働いている。そこでは、「大和魂また我が国の一手独専にあらざる」という認識は、当然のものであろう。山本は、八十年後の武官を取り巻く環境の変化を果たして予想していたであろうか。
    『朝雲新聞』

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Comments

竹島問題-とりあえずの妥結---
韓国政府は振り上げたこぶしの納め先が見つかって助かったのではないでしょうか。
リットン調査団か・・・学生の頃以来久しぶりに聞きました。
こういった問題を処理する機関としては、永続的な機関よりアドホックチーム・調査団的なものの方が良いのかもしれませんね。
永続的な機関となると、そのポストを巡って一悶着起きそうだし。
それはともかく、ホットしたのは、今回の騒ぎの中での小泉首相の科学実験教室に参加のニュースでした。

Posted by: おにこま | April 23, 2006 at 02:07 AM

中期で見れば、今回の件は、ウリ党の政治的ポイントになり、
日本の政治的敗北だ。
女性首相を立て、竹島で政治ショーを演出したウリ党のシナリオ通りの勝利だろう。
日本外交は、ピエロだ

Posted by: 嫌韓派 | April 23, 2006 at 12:34 PM

「『春の突風』、去る」にコメントができないので、こちらにコメントいたします。乱暴ですが、外交問題を大・中・小に分類すれば、竹島問題は大ではないが、小でもない。あえて言えば、中程度の問題だと思います。今回の件に関しても、官邸の対応は冷静だと思います。好意的すぎるかもしれませんが、総理・外相が表に出る程度の問題ではないというスタンスで通しきったのは歓迎します。この問題は、岡崎大使の言葉につきていると思います。

「竹島問題も政府に任せておけばいいんですよ。これは領土問題だから、日韓双方が一歩も譲れない。結局、必要なことは、時効を中断することなんです。法的にも、放っておくと既成事実になってしまうから、時間を置いて、竹島は日本の領土だとはっきり言う。そういう意味では島根県議会の議決も正しいし、駐韓大使が言ったことも正しいですね。それは外交ゲームなのであって、いちいちキリキリするほうがおかしい。淡々と、自国の領土だと、お互いに言っていればいいんですよ。国民全体でキリキリする必要はない。法的な措置は政府が抜かりなくやっていますから、ご信頼くださいということです」(『日本の風』2005年夏号)。

Posted by: Hache | April 23, 2006 at 07:47 PM

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昨日朝もいろいろ議論が報道されいたが、日本の調査先送り韓国も新地名提案せずで竹島問題は小康状態となりました。韓国は選挙を控え譲歩できないという状況下ではこの辺が落としどころなのでしょう。日本では今日千葉補選です。雪斎殿も竹島問題に言及されておりました。 以下首相官邸HPから 4月21日、小泉総理は、みどりの週間及び緑の募金の行事である「緑の羽根着用キャンペーン」で総理官邸を訪れた、第21代日本さくらの女王の平林美智瑠さんらの表敬訪問を受け、緑の羽根をつけていただき、シャクナゲをプレゼントされまし... [Read More]

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