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April 23, 2006

「春の突風」、去る。

■ 日本と韓国の「時ならぬ春の嵐」は、去ったcようである。『読売』記事である。
□ 日韓協議合意…韓国は名称提案せず、日本は調査中止
 【ソウル=中島健太郎、福島恭二】竹島周辺海域での日本の海洋調査に韓国が反発していた問題をめぐり、日韓両政府は22日、ソウル市内で前日に引き続き外務次官協議を行い、打開策で合意した。
 韓国は、6月の国際会議でこの海域の海底地形について、韓国名を登録する提案をせず、日本も海洋調査を当面実施しないとした。
 調査の現場海域で日韓両国が衝突するという最悪の事態は回避された。ただ、竹島の領有権問題は残されたままで、再び海洋調査などの対立が再燃する可能性もある。
 訪韓中の谷内正太郎外務次官と韓国外交通商省の柳明桓(ユ・ミョンファン)第1次官は22日、ソウル市内のホテルで午前9時半から午後7時まで断続的に会談を続けた。
 日本側の説明によると、<1>韓国は、6月にドイツで開かれる海底名称に関する国際会議で、竹島周辺海域の韓国名の提案をしない<2>日本は今回予定していた海洋調査を中止する<3>日韓両国は排他的経済水域(EEZ)の境界画定に関する交渉を5月中にも局長レベルで再開する――の3点で合意した。
 ただ、韓国の柳次官は会談後、竹島周辺海域の韓国名提案について「必要な準備を経て、適切な時期に推進する」とだけ説明した。
 これまでの協議で、日本は、今回の海洋調査について、国際法に基づいた調査であると強調。6月の国際会議で韓国が竹島周辺海域の韓国名の提案を見送れば、日本も調査を見送る考えを表明したが、韓国は調査中止が先決との立場を示し、平行線が続いていた。しかし、「対立がこれ以上深まれば、日韓双方の利益にならない」として、ギリギリの妥協が成立した。
 谷内次官は会談終了後、記者団に「不測の事態が起こりかねなかったが、避けられてよかった」と述べた。安倍官房長官は22日夜、「合意は、国際法にのっとり日韓両国が互いに冷静に対処し、円満に解決しようとした努力の結果だ。今後も韓国とは話し合いを通じ、未来志向で友好を築くよう努力したい」との談話を発表した。
 EEZの境界画定交渉は竹島の領有権問題で対立したまま、2000年6月以来中断している。局長級協議の再開は、争いの根本原因について話し合いの場を設けることで対立激化を避ける狙いがある。しかし、竹島問題を解決するのは難しく、再開交渉の行方は不透明だ。
 海上保安庁の測量船2隻は鳥取県の境港沖合に停泊しているが、23日に東京に向けて出発する予定だ。

 この落着は、どのように解釈すべきであろうか。雪斎は、この落着の意義は、次の四つになると考えている。
 1、韓国政府が「落着」に動いた。
 2、政府の対応には野党も表立っては異を唱えなかった。
 3、国内に、竹島領有権紛争の実態を再確認させた。
 4、国外に、紛争の実態を知らしめることができた。
 この件、小泉総理と麻生太郎外務大臣の言動が表に出てこず、専ら谷内事務次官の手に交渉が委ねられていたのは、日本政府が「地名提案見合わせを。さもなくば、調査決行する」という方針で一貫していたことを意味している。韓国政府の誤算は、最初に「入ってきたら、拿捕するぞ」という趣旨のことを語ってしまったことにある。それは、国際法上、全く正当性を持たない対応であるが故に、明らかに「根拠のないブラフ」になってしまった。日本政府にしてみれば、「やるなら、どうぞ。国際的な非難が集中しますよ」と切り返す理由ができたのである。そうであればこそ、日本政府は、土曜日夜に期限を切るという対応をしながら、交渉を進めることができたのである。今朝のNHK『日曜討論』で、森本敏先生が「今回、一番大変だったのは韓国の柳次官であっただろう」という趣旨の発言をしていたのは、誠に印象的であった。 
 雪斎は、日韓摩擦は国際世論の衆人環視の下に置くべきだと唱えてきた。拙稿「対中デタントに舵を切れ」でも、対中関係に関して同じ手はずを整えることを提案している。世界には、日本と韓国、日本と中国のバイラテラルな関係だけがあるわけではない。対中政策も対韓政策も、中国や韓国そのものというよりは、日中関係や日韓関係の動向から影響を受ける多くの国々を対象にしている。。こうした政策展開には、単純な「反中」論も「嫌韓」論も役には立たない。
 此度の日韓合意が反故にされることがあれば、日本政府は、次回には粛々と調査に踏み切るだけである。その際には、BBCやCNNなどの海外メディア・クルーを「従軍記者」として同乗させた上で、「事実」を世界に伝えてもらえばよろしい。因みに、今朝の『報道2001』でも、竹村健一さんが同じ提案をしていたようである。これもまた、紛争の実態を国際的な関心の下にさらすという意味では効果的なオプションである。是非、検討してもらいたいものである。
 もっとも、日本側からすれば、竹島領有権紛争は「紛争」のままに放置されているいるほうが、都合がよいという見方も成り立つ。何らかの持病を抱えている人物のほうが、日頃から健康に気を遣い結果としては長命を保つというのと同じ理屈で、日本は、対韓関係に要らぬ幻想を抱かなくとも済む。むしろ、韓国が高々、二隻の日本海保調査船の活動を抑え込もうとして二十隻もの警備艇を派遣した経緯から判断する限りは、竹島という案件に自縄自縛になっているのは、現下の韓国政府である。韓国政府にしてみれば、「反日」は手っ取り早い求心力維持のためのツールかもしれないけれども、それは、確実に政策の幅を狭めるものでもあるのである。
 中国は、昨年の「反日」騒動の結果、国際世論の失笑を招いて、若干の軌道修正を図った。韓国政府といえば、柳次官のような「外交実務家はともかくとして、ノ・ムヒョン大統領の学習能力の乏しさは、既に「亡国」的であろう。
 

孫子曰く、昔の善く戦う者は先ず勝つべからざるを為して、以て敵の勝つべきを待つ。勝つべからざるは己れに在るも、勝つべきは敵に在り。故に善く戦う者は、能く勝つべからざるを為すも、敵をして必ず勝つべからしむること能わず。故に曰く、「勝は知るべし、而して為すべからざる」と。

 そういえば、昨年の今頃にも、雪斎は、次のようなエントリーを書いていた。自滅しようとする人々に手を差し延べなければならない理由はない。ところで、韓国のウォン高進行によって、韓国経済は大変な状況になっているようである。韓国中小企業の損益分岐点は、1ドル―961ウォンとのことであるけれども、今のところ1ドルー950ウォン前後のようである。こちらのほうを何とかするのが、現下の韓国政府の喫緊の課題である。どうしようとするのであろうか。

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Comments

大いに賛成です。
竹島問題は本質的には韓国がまともな国にならないと解決しませんが、予測可能な未来において韓国がまともになることは期待できません。
「問題の解決」よりも「日本がまっとうな国になる・あり続ける」ことを目指すべきだと考えます。

Posted by: 玄倉川 | April 23, 2006 at 08:09 PM

今回の件は収まるところに収まって良かったと思います。
ヲチャとしては柳次官がどうやってノムたんを納得させたのかが気になるところですけど。

Posted by: 飯研住人 | April 23, 2006 at 09:53 PM

 海保による海底調査とウォン高という現象がこの時期に重なったのは単なる偶然でしょうか。日米共に親北姿勢を強める現在の韓国政府に相当不信感を増しているのかななんて勘繰ってしまいます。

 ところで「自滅しようとする人々に手を差し延べなければならない理由はない」というくだりとの関連ですが、昨年日韓財務当局が通貨スワップ協定を結びましたが、この件の是非はどうなんでしょうか?。僕は必要ないと思うのですが。

Posted by: ささらい | April 23, 2006 at 11:18 PM

こんにちは。
このところ話題になっているこの映像ですが、
http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/608900.html
怒れない大使。
テーブル蹴飛ばして退席するくらいの態度を見せて欲しい気がするのですが、政治家サイドから見てどう判断されますか。

Posted by: 屈辱 | April 24, 2006 at 01:28 AM

今回の日本側の対応はほぼ満点に近いのですが、一つだけ問題があるとすれば、調査船を丸腰で行かせようとしたことだと思います。せめて巡視船を随伴させて、簡単には拿捕されないようにしておくことはできなかったのかと思うのですが。
本当に拿捕されてしまえば返還交渉がスムーズに行くとも思えませんし、何より調査船船員の生命や安全を利用するような外交はあってはならないと思います。

Posted by: Baatarism | April 24, 2006 at 01:07 PM

>調査船を丸腰で行かせようとしたことだと

いや、それは最初からそのつもりだったと思います。

つまり最悪の場合、丸腰の政府調査船を拿捕すると言う
国際法違反の暴挙を韓国側に侵させて、
国際世論を日本につける作戦だったのでしょう。

またその国際法違反を圧力として、拿捕そのものをさせない
手段でもありますし。
拿捕なんてしたら韓国側が国際的に悪者になりますから。
しかし仮に調査強行した場合、威嚇や進路妨害などは
してくるでしょう。
そのために海保の調査船にはビデオ機材を詰め込み
妨害行為を逐一記録する作戦だったという記事もありました。

今回韓国側が最終的に引いたのが、
政府の丸腰の公式調査船拿捕or妨害
=国際法違反=竹島問題が国際法廷に出される。
と言うの恐れたためだと思います。

Posted by: たか@ | April 24, 2006 at 02:03 PM

韓国は経済成長率が日本より遥かに高く、サムソン電子という国際優良企業がドルを稼いでいると世界に誇っています。結果、土地投機も発生しているので、金利を4パーセント近くに設定してあったと思います。米国との金利差を考えれば、ウォン安への誘導は難しいでしょう。日本は通貨危機を救ってやった韓国から散々バカにされながらも、低金利に誘導し、成長を止めて不良債権処理をしました。その間も企業は研究開発を怠らなかったので今があります。現状を自国の問題として処理した日本と、問題を反日に転嫁してごまかす韓国・・孫子はどちらの軍師となるでしょうか。

Posted by: SAKAKI | April 24, 2006 at 05:26 PM

明日、ノ・ムヒョン主席の声明発表があるようです。

"【海洋調査】盧大統領、韓日関係談話生放送へ"
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/04/24/20060424000045.html

第2ラウンドでもあるのでしょうか?

Posted by: けむ | April 24, 2006 at 06:17 PM

こんにちは。
ノムヒョン談話見ました。私自身は韓国の文化にはかなりの親近感と敬意を表していますが、この大統領は、、、、、親日とか反日とかいう以前に頭のねじが1本はずれているのでは?という疑念を持ってしまいます。おそらく冷静な判断ができる側近は冷や汗ものなのでは?

Posted by: 宵の明星 | April 25, 2006 at 12:38 PM

盧武鉉談話ですが、このページの頭にある言葉「強く辛辣な言辞は論拠の弱さを示唆する」を地で行ってるようですね。w

Posted by: Baatarism | April 25, 2006 at 02:48 PM

横から失礼します。屈辱さんのコメントされていた映像の件について少し。

映像を日本の反対側から拝見しましたけど(日本で話題になっているとは知りませんでした)、大島大使の表情を見ていて気が付いたこととして、そもそも

「彼って、韓国語分かるんですか?」

これは素朴な疑問で、既に日本のメディアでは既に調べがついていることかもしれませんけど、彼の経歴を一覧したところで
http://www.cityu.edu.hk/slw/WTODR/cvOshima.htm
彼と韓国語の接点はなさそうです(また、大使赴任が確か05年8月頃)。そして横には通訳らしき人もいない。彼自身が会そのものを退屈していたことは間違いないのでしょうけど、この時点で何が話されているかについては分かっていなかったのではないでしょうか。

結果的に、「大島大使の映像を撮って若干の演出をした」韓国のメディアに感情的に反応してしまっているというのが実際のところではないでしょうか(自分も昔TV番組制作に携わっていたので、その辺の制作者の想像力が分からないでもありませんが・・・)。

なぁ~んて、思ったので取り急ぎ。失礼しました。

Posted by: Key | April 26, 2006 at 01:45 AM

> 此度の日韓合意が反故にされることがあれば、日本政府は、次回には
>粛々と調査に踏み切るだけである。その際には、BBCやCNNなどの海外
>メディア・クルーを「従軍記者」として同乗させた上で、「事実」を
>世界に伝えてもらえばよろしい。因みに、今朝の『報道2001』でも、
>竹村健一さんが同じ提案をしていたようである。これもまた、紛争の
>実態を国際的な関心の下にさらすという意味では効果的な
>オプションである。是非、検討してもらいたいものである。

ちょうどnewsweek見てたらこれやってますね。韓国側が。
観光船もあるそうで、一般人も独島に観光に行けるんだそうですね。
勝てないケンカ(ケンカが下手?)なら売らなきゃいいのに、と単純に思います。韓国側が海底の地名を提案する、っていうなら日本側も「竹島」を提案してはいけないのでしょうか?

Posted by: ななし | April 26, 2006 at 05:37 PM

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» 海洋調査問題で勝ったのはどちらか。 [Baatarismの溜息通信]
日韓の間の懸案であった、竹島周辺の排他的経済水域(EEZ)での海洋調査問題は、ソウルでの外務次官協議で当面の危機を回避する合意が成立し、日韓が日本海で衝突するという最悪の事態は避けられました。 この件について、勝ったのは日本か韓国かという議論が、ネットのあちこちで行われています。 僕は今回の件で勝ったのは日本であり、それは孫子の言葉「戦わずして勝つ」を地でいくものだったと思います。 何故そう思うかというと、今回の件において、韓国側の目的は「海底地名に自国名をつけること」であり、日本側の目的は「... [Read More]

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