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March 22, 2006

「最後の勝ち」は俺が握る。続

 「ハルト将軍も亦曰く、凡そ軍人たる者は間断なる切磋琢磨し以て智識を得ることに勉めざるべからず。然らざれば其無識は勇侠なる部下を犬死せしむることあるべし。古来幾多の戦闘が単に将帥の無識の故を以て敗衄に帰したること枚挙すべからず」。
  ―秋山真之 『海軍基本戦術 第一篇』緒言より―
 先刻、入手した『秋山真之戦術論集』という書には、このような記述がある。昨日、世は、「王ジャパン」の世界制覇で沸き立ったけれども、雪斎は、その一方で、この秋山真之の言葉を思い出した。

 「王ジャパン」は勝ったが、雪斎には大いなる不安がある。日露戦争の後、「勝って兜の緒を締めよ」と訴えた東郷平八郎の有名な訓示のスピーチ・ライターは、秋山であったようであるけれども、秋山に倣って今後の「世界の中の日本野球」のことを考えなければならない。
 「長島ジャパン」、「王ジャパン」の後に、国際競技としての野球を担う「日本代表チーム」を誰が指揮するのであろうか。とりあえずは、この問題が浮上する。長島茂雄、王貞治といった伝説的なカリスマの後は、それに並ぶ位の強烈な個性を迎えなければ駄目だろうなと思う。二十年後ならば野茂英雄や古田敦也、三十年後jならばイチローや松井秀喜を「指揮官」として考えることができる。ただし、向こう十五年近くを引き受ける今の四十代半ばから五十代後半くらいの世代に、そうした存在を思い描くことができない、「次」だけならば、星野仙一かボビー・バレンタインかを考えることはできるけれども…。「次の次」あたりは、一体、どうするのであろうか。原辰徳とか落合博満とかという感じになるのであろうか。ちょっと違うのではないかという印象が消えない。
 「王ジャパン」は、確かに「最後の勝ち」を握った。しかし、それは、日本球界全体が「最後の勝ち」を握ったわけでもない。此度のWBCがそうであったよううに、日本球界の「将帥」としてのプロ野球機構上層部や各チーム経営陣が、国際潮流に巻き込まれた野球の現状について「無識」のままでいれば、結局、監督以下の「勇侠なる部下」を犬死させることになりかねない。「王ジャパン」も、下手すれば「犬死」寸前であったのを、監督以下の「勇侠なる部下」の超人的な努力で、栄冠に辿り着いたのである。結局、日本球界の「将帥」の人々が、「世界の中の日本野球」を前提とした仕組の構築を、どのように進めるかということが問題になる。審判同士の国際交流というのも開始しなければならない。引退した選手を世界各地にコーチ修行に出すというシステムを作らなければならないかもしれない。こうした一つ一つを着実に進めていかなければ、「王ジャパン」の勝利は、日本海海戦のように、「あれが頂点であった」という話になりかねない。
 最後に、民間放送局は、国際試合におけるコマーシャルの入れ方を工夫した方がいいと思う。王監督への優勝トロフィー授与のシーンを流さなかった日本テレビの判断は、率直に「阿呆」であったとしかいいようがない。こういうことが、既存メディアの信頼性を揺るがせているのである。

■ 奇しくも、昨日、「宇宙戦艦ヤマト」の作曲者・宮川泰氏の訃報が伝えられる。地球滅亡を単艦で救った戦士の物語であった。日本海軍の「魂」をSFの形で復活されてくれた作品であった。合掌。

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Comments

普段は「野球とベースボールは異なるものである」と考えているけれど、オリンピック、WBC、また国内のビッグスターがメジャー入りを表明すれば俄かに、雪斎先生のおっしゃる、「国際潮流に巻き込まれた野球の現状」を意識し、喉元過ぎるとまた忘れる…これの繰り返しを何とかしないといけないのでしょうね。
私は、この事件を思い出しました。

http://www.ne.jp/asahi/box/kuro/report/sinpan.htm

Posted by: るびい | March 22, 2006 at 07:03 AM

21世紀の日本は「ゾンビ」がキーワードかも知れませんな。今回も勝利の美酒で、いつまでも酔っ払っていてはいけません。反省点が多すぎたと思います。
ついでながら・・宇宙戦艦ヤマトのスキャットから始まるあの交響曲が大好きでした。宮川泰氏の訃報は本当に残念です。
もうひとつ・・かー娘の小野寺さん、結婚するそうですね・・お幸せに

Posted by: sakaki | March 22, 2006 at 01:08 PM

そうですか。あの「宇宙戦艦ヤマト」も宮川
先生でしたか。一生忘れられそうにない「男の
ロマン」を感じさせてくれる旋律でした。合掌。

Posted by: おおみや%バイト君 | March 23, 2006 at 12:36 AM

秋山真之の生誕祭が21日 松山市で執り行われました。
不思議な気がします。このWBC国際野球で世界一になった日に、雪斎さんが思い出したのですから。又メキシコ戦で勝利した時に日本の皇太子はメキシコに居たとは・・。
秋山真之が兄の好古陸軍大将と共に郷土の誇りです。
真之の方は正岡子規とも友達だったし私の母校の先輩です。坊ちゃんでお馴染みの旧制松山中学(県立松山東高等学校)です。藩校の跡をそのまま継承したのです。先祖伝来我が家は此処が母校なのです。戦後の学制改革で女子にも門が開いたのです。大江健三郎という左翼のノーベル賞作家も居るけれど大嫌いな奴なのです。それなら大藪春彦のハードボイルド小説の方がマシですよ。私は真之の参謀してのあの日本海戦の戦略は天才だと思っています。英国海軍より旧大日本帝国海軍は世界一の戦果を上げた海軍史に残る偉業だと思っています。司馬遼太郎の「坂の上の雲」で一般に紹介されましたが、同じ町内だったし生家が近所だったのでよーく祖父から話を聞かされたのです。確かに勝って兜の緒を締めよも言い聞かされました。良い言葉です。「実るほど垂れる稲穂かな」という静かで健康な晩年で無かったのが残念です。

Posted by: ようちゃん | March 23, 2006 at 01:15 AM

横レス、失礼致します。

>ようちゃん様。
でもって、最近では「頑張っていきまっしょい」ですね。
その前に「ひがしこう~」って付くのでしたっけ。
大学の同級生がOGなので、昔からよ~く、聞かされてございました。

原作は、もう20年以上前のことでしょう。
テレビドラマにあったように、今でも乙女たちもああやって海に漕ぎ出し、人生を自力で、或いは大切な人たちと切り開いていく意味を重ねているのでしょうか。
海、船、航海は、人の一生の歩みを重ね合わせていくような、そういう気持ちになります。

Posted by: るびい | March 23, 2006 at 06:38 AM

すいません。先のコメントのナベツネさんの部分は、さすがに表現が酷すぎました。
雪斎さん、すいませんが先のコメントを削除していただけないでしょうか?よろしくお願いします。
酷いコメントでこのブログと読者の皆様に迷惑をかけてしまい、申し訳ありませんでした。m(_ _)m

Posted by: Baatarism | March 23, 2006 at 12:18 PM

WBC初代王者の称号はプロ野球の人気が低下している最中に手に入れた得がたい奇貨だったと思います。
日本プロ野球は、「世界の中の日本野球」を前提に今後をどうデザインするかの分水嶺に立っているのだと思います。うまくいけば、内外から良い選手が集まる米メジャーとは別の高峰としてやっていけるのでしょうが、そうでなければ米メジャーへの人材供給リーグに甘んじ続けることになってしまうことになってしまうように思います。

Posted by: tomber | March 24, 2006 at 10:56 AM

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