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March 01, 2006

鉄は熱いうちに打て

■ 第二次世界大戦後、ジョージ・F・ケナンが行った提案の中に、「外交のウェストポイント」創設というのがあった。ウエストポイントでどのような教育が行われるかは、たとえば映画『愛と青春の旅立ち』を観れば、そのイメージが伝わるであろう。
 ケナンは、軍隊ではなく外交の世界にこそ、「ウェストポイント」が必要であると考えた。戦後、超大国として国際問題に関わり始めた米国に求められていたのは、質の高い外交官の養成であった。ケナンは、軍人を養成するつもりで外交官を養成しようと考えたのである。
 ケナンの意図は、軍人にも比する過酷な環境の下でこそ、ソ連との外交闘争の中で米国の国益を守る外交官が育つというものであったのである。
 因みに、大英帝国期のエリートは、ケンブリッジやオックスフォードを卒業した後に、インドに送り込まれたという話がある。二十歳代半ばの頃に、生活環境もまるで違うインドで大勢のインド民衆を相手に「統治」という営みを課せられたのである。異国の地で価値観の異なる人々をまとめるわけであるから、「並みの神経」では到底、やっていけない。そうした過酷な日々の後で、「危機」においても平常心で対応できる胆力が身についていく。そうした胆力こそが、エリートの条件なのである。
 戦後の日本は、「エリート」を養成したのか。「ウェストポイント」が必要なのは、むしろ日本なのではないか。昨日、「永田町ジャンク・メール騒動」の主役として謝罪会見を行った民主党議員は、人生最初の「過酷な日々」を過ごしているのであろう。しかし、それは十五年は遅すぎた。
 古人曰く、「鉄は熱いうちに打て」である。今は、「熱い鉄を打つ」場所が、どこにあるのであろうか。

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「永田町の話」カテゴリの記事

Comments

石井米雄『道はひらける』なんかを読むと、往事の外務省には多少その雰囲気が感じられますが、あの程度では過酷さが足りないのか、課ごとに過酷さが違ったのか…。

Posted by: 中山 | March 01, 2006 at 04:37 AM

内容が良い文章だ

Posted by: 反中派 | March 01, 2006 at 08:29 PM

胆力をもったエリートが存在することが大切であるという論旨は非常に説得的だと思います。戦後生まれは、戦前生まれの人よりも知識・見識・胆識で劣るといわれると、わが身を振り返ってみても、「そうですよねえ」と思います。

ただ、英米の教育システムは様々な試行錯誤、それもかならずしも一貫した意図に基づいて設計されたのかどうか、私にはわかりません。アメリカの大学院で鍛えられた方たちは、戦前と比べて増加傾向にあります。それだけでは胆力がつかないかもしれませんが、彼らは学術だけでなく、政治や行政、経済活動などで今後、活躍するでしょう。日本国内にそのような教育システムが存在すれば、それにこしたことはないと思います。しかし、時間がかかります。また、エリート主義は、今日の社会では受け入れられにくいでしょう。昔のように、武士の規範が今日の若い人たちを律することができるかといえば、疑問が残ります。

武士道は廃れつつありますが、かわりにたるんだ部分が多いけれども、戦前と比較しても自由な社会になりました。けっきょく、人材育成の鍵は競争であり、成功した人たちが次の世代の憧れになることが望ましいのでしょう。そういう風土をつくるには持続的な制度設計の努力も必要だと思いますが、政党、官庁、企業など個別の組織が人材の確保・育成で競争を行ってゆくことがもっとも大切だと思います。経済の立場から、政治学者に非礼なことをおっしゃるブログの記事を拝見したことがあります。政治に限らないのでしょうが、政治学者が優れた人物を描き、世に広めることは、政治に志す人たちを増やし、鼓舞するという効果があると思います。門外漢の頓珍漢な戯言ですが、政治というものはこんなにおもしろいものだということを伝えることを研究と切り離さずに世に知らしめてゆくことにもっと力を注いでいただきたいと思います。

Posted by: Hache | March 02, 2006 at 01:45 AM

・中山殿
戦前と戦後の教育には断絶があります。
・反中派殿
恐縮。
・Hache殿
「月に人類が到達できる時代に、何故、ここの空港の二、三百メートルを拡張できないのか」。
「地球と月の間に人間は住んでいないからですよ」。
こういうやり取りがあったとか。政治は、大変は仕事です。

Posted by: 雪斎 | March 02, 2006 at 03:35 AM

お返事、ありがとうございます。肩の力が抜けました。お疲れさまです。私みたいなやわな人間は『戦史』に「逃避」するほうがよいなあと思いました。

Posted by: Hache | March 02, 2006 at 01:48 PM

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