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March 09, 2006

産経「正論」欄原稿/国連関係

■ 昨日、雪斎は、産経新聞「正論」欄に今年最初の原稿を載せた。韓国からの国連事務総長選挙の出馬に関しては、以前のエントリーでも書いたけれども、これを論評の対象とした。
 「正論」欄原稿の書き方は、ブログでの書き方とは大分、異なっている。雪斎は、新聞や雑誌のような「表」の世界で「雪斎」の名前を使うことしないし、ブログのような「裏」の世界で実名を出すことはしない。こういう区別の意味を考えずに雪斎の議論に噛み付いている御仁がいたけれども、雪斎には、どうでもいいことである。「勝手にエネルギーを費やしているのが、よかろう」と反応するだけである。
 それにしても、中国や韓国は、山本晋也監督の言葉を借りれば、「ほとんどビョーキ」の世界に入っているなと思う。こういう「ほとんどビョーキ」の国々を前にして、我が国が同じ「ほとんどビョーキ」の論理に走らなければならない理由はない。本当に「喧嘩」をやる気ならば、言葉遣いは柔和にしなければならないというのは、外交の世界の鉄則であったと記憶する。

 □ 国連事務総長選は卑小な論理避けよ―問われる啓発された国益の感性
 ≪アジアから選出は2人目≫
 去る二月十四日、潘基文韓国外交通商相は、次期国連事務総長選挙への立候補を表明した。潘氏の他にも、スラキアット・サティヤンタイ(タイ副首相)、ジャヤンタ・ダナパラ(スリランカ大統領上席顧問)の二氏が出馬の意向を既に示している。
 次期事務総長は、第三代のウ・タント以来のアジア選出となるという観測から、特にアジア諸国にとっては、此度の事務総長選挙は、「熱い外交」の機会を提供するものとなろう。我が国の動向もまた、その意味では諸国の関心の対象となろう。
 事実、韓国紙『朝鮮日報』(二月十七日付、日本語電子版)が伝えたところによれば、潘氏は日本の立場に関して、「長期的未来関係、韓日関係を考慮して検討するものと期待する」と述べ、日本の対韓支持に期待を表明したのである。ただし、我が国の支持を云々する前に、そもそも現下の韓国が事務総長を送り出すに相応しい国であるか否かは、慎重に判断されるべきであろう。
 国連事務総長というポストは、初代のトリグブ・H・リーから当代のコフィ・アナンに至るまで、それぞれの地域にあって中小規模の実力を備えているか、中立を保っているかの何れかの国々の出身者によって占められてきた。
 事務総長は、安保理常任理事五カ国が段違いに大きな影響力を持つ国連の中で、喩えていえば「クラブの忠実な支配人」の役割を請け負うものであるから、それが特定の国々の「利害」を代弁し、「威信」を反映する存在であってはならないというのは、当然の諒解である。
 ≪疑問残る韓国からの出馬≫
 然るに、韓国は、既に「世界十大経済圏」の一つとしての地位を得ているという意味では、もはや中小国ではないし、国連加盟国たる北朝鮮との「休戦」状態が「終戦」状態になっていないという意味では、依然れっきとした紛争当事国である。しかも、潘氏当選の場合には、それが「外交部の大きな功績」であるという盧武鉉大統領の認識が象徴するように、韓国政府は、此度の事務総長選挙を「国家の威信」の発揚の機会ととらえている節がある。
 潘氏それ自身は誠に有能な外交実務家であるとの評が専らであるけれども、中小国でも中立国でもないという自らの立場を脇に置いてもなお、潘氏を送り出そうという韓国政府の姿勢には、筆者は疑問を抱かざるを得ない。
 もっとも、事務総長選挙に際しての我が国の方針を説明するものとして頻繁にして平凡に語られているのは、「日本の安保理常任理事国入りへの努力を韓国が妨げ続けた以上、日本が韓国の候補を支持することはない」というものである。
 確かに、筆者は、「情」の上では韓国の対日期待を「虫が良すぎる…」と感じている。日本の安保理常任理事国入りへの支持や竹島領有権紛争の国際司法裁判所付託への同意といった劇的な政策転換に韓国政府が踏み切るならば、我が国が潘氏支持を表明しても構わないという議論は、我が国の狭い国益を図る観点からは首肯できる。けれども、「理」の上では韓国に対する意趣返しの意味合いで我が国が潘氏を支持しないという論理に走るのは、率直に愚かなことであると思う。
 我が国は第二の分担金拠出国や現任安保理非常任理事国として国連の運営全般に相応の責任を負っているのであるから、事務総長選挙に際しても、そのような卑小な論理に走るべきではないのである。
 ≪改革に対応可能な候補を≫
 現段階では、我が国政府は事務総長選挙に際しての「旗幟」を明確にしていない。筆者は、その姿勢は賢明だと考える。日韓関係の現状への考慮を脇に置くとして、既に立候補を表明している三氏の他にも、事務総長の任に適した第四、第五の候補が登場する可能性がある。我が国はそうした候補が出揃った段階で、事務総長の任に相応しい候補を支持すべきであろう。
 我が国と国連の関わりという文脈では、近年、我が国の安保理常任理事国入りの議論に焦点が当たっているけれども、国連全体の機構再編や国連事務局組織の効率化といったように、他に色々と議論されなければならない課題がある。そうした課題に充分に対応できる候補をこそ、我が国は支持すべきである。
 国連もまた、諸々の国々の国益の相克の場には違いないけれども、そこで追求される国益が余りに視野の狭いものであってはならない。事務総長選挙への対応には、我が国の「啓発された自己利益」への感性が問われているのである。
       『産経新聞』「正論」欄(二〇〇六年三月八日付)掲載

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Comments

全面的に御説に賛成です。なお国連については、国連組織自体がひとつの巨大な官僚組織であり、腐敗・非効率等、官僚組織につきものの諸問題が山積しているに関わらず、わが国メディアではそれが問われず、国連中心主義など、お題目ばかりというのが困ったものです。

Posted by: 珈琲 | March 09, 2006 at 09:26 AM

韓国大統領の改憲反対演説に中国外相の「ヒトラー・ナチス」演説・・・、どうしてかの国々は対日本問題となるとかくも感情的な思考停止状態に陥るのでしょうか。まあそこが彼らの弱点なのでしょうが。

 日本の常任理事国入り問題と韓国の国連事務総長立候補問題。どちらの国が本当に国際的に孤立しているのか、外交が行き詰っているのかはっきりするのかもしれませんね。今の所韓国は日本はおろか、米国からも中国からもロシアからも北朝鮮からも支持が得られていないようですが。

Posted by: ささらい | March 10, 2006 at 04:56 PM

南鮮はアメリカの同盟国どころか敵対国と
みなされても仕方のない状況である以上、
南鮮からの候補者をアメリカが支持することは
ありますまい。そのような候補者を推すのは、
決して我が国の国益にはかなわないことでしょう。

幸い、タイ国・スリランカに候補者がいるよう
ですから、東欧に目の向いてるアメリカに、
そちらの方を検討するよう働きかけるのが
我が国のできる寝技でしょうか。

Posted by: おおみや%バイト君 | March 10, 2006 at 05:56 PM

使い分けはともかく、ページに著作のリンクもある以上、
人物的な関連付けは周知の事実なので止むを得ない反応かと。

また「表」「裏」という表現もどうでしょうか。
全世界に公開している以上こっちも表でしょう。
「公的」「私的」と表現すれば良いのでは。

国連事務総長の件ですが、私は地域で選出するのは
必ずしも良い結果をもたらさないのではないかと
思っています。やはり時代時代の要請に応えられる
人物本位のアプローチが正道なのでしょう。
私見では東欧あたりに良い人材が多そうに思います。
アフリカや中東対応メインだとアジア勢が弱いか?

Posted by: カワセミ | March 10, 2006 at 08:03 PM

サンケイの正論拝見しております。御説のは賛意を表したいと思います。
今日(10日)の夕刊で吉村健蔵先生の死を知りました。一時代の区切りでしょうか。

Posted by: 星の王子様 | March 10, 2006 at 08:15 PM

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