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February 16, 2006

国連事務総長の椅子

■ 一昨日、「産経」が次の記事を配信した。
  □ 韓国外相 国連事務総長選 きょう出馬表明
 【ソウル=久保田るり子】韓国の潘基文外交通商相(61)は十四日、次期国連事務総長選に正式出馬を表明する。出馬表明はタイのスラキアット副首相、スリランカのダナパラ元国連軍縮局長に次いで三人目。出馬が有力視されていた潘氏はすでに今年初めから支持取りつけに動き始めていた。
 潘氏は、現在の外交通商省に入省し、駐米公使やオーストリア大使を歴任。国連大使、国連総会議長秘書室長も務めた国連通で、実娘は国連児童基金の職員としてスーダンに赴任している。
 〇四年からは盧武鉉政権で外交通商相を務めているが、盧大統領の対米発言にはブレが目立つのに対し、米高官に知己の多い潘氏の対米外交は「安定感」がみられた。
 一月中旬に米韓戦略対話で訪米した潘氏は、アナン事務総長を表敬訪問し、安全保障理事会常任理事国の国連大使とも会合を持った。これをもって「事実上の出馬表明」と見る向きが多かったが、輪番制による自動的なアジアからの次期総長選出に難色を示すボルトン米国連大使も「潘氏が米国に勤務したときから知っている。たいへん尊敬している」と語った。
 国際舞台で存在感を示したい韓国では「現職外相で顔が広い点でも、アジア圏では有力候補」(外交筋)とされる潘氏への期待は大きい。
 だが、この問題は日韓に新たな波紋も呼びそうだ。事務総長は安保理の推薦を受けて総会で任命されるが、韓国は、現在、非常任理事国である日本の賛成を期待している。しかし、韓国は日本の安保理常任理事国入りに反対しており、日本としては当面、態度を保留する方向とみられる。

 日本が取るべき対応は、「① どの国が日本の安保理常任理事国入りに協力してくれるか」、「② どの国が事務総長ポストを取れば、全人類的課題の解決に寄与できるか」という二つの点に着目して、判断すればよいであろう。
 この判断基準に照らし合わせれば、現在のところ立候補への意志を表明しているタイ、スリランカ、韓国の扱いは、次のようになるであろう。
 韓国に関しては、①は現状では全く期待できない。②も、韓国でなければならない理由を説明する根拠は乏しい。タイに関していえば、①は日本に決して熱心な支持の姿勢を示していなかったと記憶する。
 スリランカは、①に関して日本の立場を明確に支持していたはずである。②に関しても、長引く民族紛争の収拾、「タミール・イーラム解放の虎」というテロ組織の扱い、インド洋大津波からの復興という課題が、スリランカにはある。こうした国から事務総長を出すということは、まさしく、全人類的課題に取り組む国連を象徴するものとして相応しいであろう。
 このように考えれば、事務総長選挙に際して日本が推すべきは、第一にスリランカである。韓国は、日本の国連安保理常任理事国入りに協力するという劇的な方針転換をすれば話は別であるけれども、今までの経緯からすれば、日本が推さなければならない理由は皆無であろう。タイとスリランカの比較でいえば、日本が米国や英国といった海洋帝国との提携を重視する建前からは、そして民族紛争、テロ、貧困といった課題の切実さという点からも、スリランカにこそ重点が置かれるべきである。そういえば、幼少の頃の雪斎にとっては、英語とは、米国人の英語ではなく、スリランカ出身のアントン・ウィッキーさんの英語であったのである。
 無論、この事務総長選挙に際しては、中国がアジア選出候補の一本化を目指しているようである。中国は、おそらく、この候補一本化を通じて「キング・メーカー」としての立場を得ようとしているのであろう。これには、カナダが「透明性の確保」を掲げて、反対する意向を示している。雪斎は、カナダの方に理があると見ている。
 それにしても、国連事務総長のポストを取りに行こうとする韓国の論理は、雪斎には理解に苦しむ。このポストは、忠実な「クラブ支配人」として自分を余り表に出さないように振る舞える国にこそ、相応しいものであるからである。 歴代の事務総長は、次のとおりである。確かに、事務総長を出しているのは、地域の「小結・前頭筆頭」レベルの実力を持つ国々である。
1 トリグブ・リー 1946年2月-1952年11月 ノルウェー
2 ダグ・ハマーショルド 1953年4月-1961年9月 スウェーデン
3 ウ・タント  1961年11月-1971年12月 ミャンマー
4 クルト・ヴァルトハイム 1972年1月-1981年12月 オーストリア
5 ハビエル・ペレス・デ・クエヤル 1982年1月-1991年12月 ペルー
6 ブトロス・ブトロス=ガーリ 1992年1月-1996年12月 エジプト
7 コフィー・アナン 1997年1月- ガーナ
 韓国は、事務総長ポスト掌握によって、もしかしたらファン・ウソク教授の論文捏造で傷ついた国際威信の失地回復を目論んでいるのであろうか。しかし、それは、「世界の十大経済圏」の一つに成り上った現在の韓国には、相応しいポストではない。それとも、現在の韓国の自己認識は、依然として「開発途上国」だということなのか。何れにせよ、パンギムン外相の擁立に走った韓国の論理は、かなり見苦しい。

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Comments

 「汝自身を知れ」
 ギリシャのアポロン神殿に刻まれた格言ですが、最近の韓国の親北・反米・反日政策を見ていると、国際政治において自分達がどんなポジションに置かれているかを客観視出来ていないんじゃないかと思いますね。中国も似たり寄ったりな感じもしますが。

Posted by: ささらい | February 16, 2006 at 12:47 AM

韓国は普段から自国のことを「世界で1?番目の経済大国」と公言しているのですから、そのような「先進国」が事務総長の椅子を狙うというのは、全くのお門違いですね。

普段は「先進国」と公言しながら、このような時にだけ「途上国」のように振舞う韓国には「小狡さ」さえ感じてしまいます。

残念ながら「韓国人の事務総長」が日本の安保理常任理事国入りを支持することは、太陽が西から昇るのと同じくらいありえないことであると言えるでしょう。韓国人の気質から考えて、「韓国人の事務総長」が中立的に行動するとは実に考えづらい。

日本が潘基文氏を支持しても、得られることは何一つないばかりか、貧乏くじばかり押し付けられる可能性さえあります。ここは日本としては、粛々とスリランカを支持すべきでしょうね。

Posted by: 藤田 | February 16, 2006 at 02:23 AM

 韓国はファン・ウソク教授の論文捏造発覚のかなり前から、次期事務総長を目指していました。朝鮮・東亜・中央の新聞からうかがえる政府の意向は、おそらく、経済大国である韓国は国際政治でも影響力を持たなくてはいけない、と思っているのでしょう。故に、韓国は『忠実な「クラブ支配人」として自分を余り表に出さないように振る舞える国』の正反対の国ですから、ネガティブ評価でも推せない国です。
 与党の政策決定の近いところにいる人の意見表明として、国益に沿うと歓迎しますが、しかし、外務省はもろもろ勘案して潘基文支持になるような気がします。

Posted by: toshi | February 16, 2006 at 09:05 AM

韓国が国連事務総長の椅子を欲しがるのって、ノーベル賞を欲しがるのと同じノリでやってるような気がします。
まあ、日本にとっては何のメリットもない話なので、支持しない方が良いでしょう。
もっとも、次の首相が安倍か麻生になれば、今年の暮れにはまた日韓外交がゴタゴタして、「韓国だけは支持するな」という世論が盛り上がりそうな気もしますが。w

Posted by: Baatarism | February 16, 2006 at 10:41 AM

いつもは、中国・韓国に甘い外務省ですが、悲願の国連安保入りを目指した改革案での、『韓国の振る舞い』をそう簡単に水に流すことはできないんじゃないですかねぇ~
はっきり言って、今回ばかりは外務省が韓国側につくことはほぼあり得ないかと思います。
韓国側は、それほどの反発を受ける行動をしたという感覚が無いでしょうけどねw

Posted by: ふにふに | February 16, 2006 at 10:46 AM

雪斎さま、

潘氏が当選確率の高い本格候補であるなら支持の損得を真面目に考えなければいけないと思いますが、雪斎さまやコメント欄のみなさまのご指摘の通り同氏は事務総長候補としてはあまりに筋悪です。わざわざ不支持を表明して無用の恨みを買う必要も無いのではないでしょうか。
むしろ、同氏が現職外相のまま選挙活動をすることを逆手に取り、アメリカと共同で国連改革への賛成を求め(立候補を諦めるまでの間)プレッシャーをかけるべきかと考えます。安保理改革案への支持は難しいとしても、他の国連改革案について韓国が日米案に支持の立場を取ることは望ましいですし、中韓の間に楔を打ち込むことになるでしょう。
逆に、本件が最悪の結果をもたらすのは、潘氏が中国寄りの国連改革案を元に活動を進めて最後まで候補として残り、アメリカがその就任に対して拒否権を発動することかと思います。

Posted by: mitsu | February 16, 2006 at 12:49 PM

次期国連事務総長選での潘氏への支持の見返りに、日本の常任理事国入りの支持を韓国に取り付けるように交渉できないものでしょうか。
 もし、韓国がそれを受け入れてくれれば、お互いの利益となり、日韓友好に大きく寄与できますし、もし反対すれば日本も潘氏を支持しない明確な理由ができます。
 もちろん外務省は何らかの交渉を行うのでしょうが、日本の立場を誤解されないよう、後で変に韓国の人々に恨まれないよう両国民にオープンな形で交渉を行うよう願います。

Posted by: momotato | February 16, 2006 at 04:32 PM

米国が地域輪番制にごねてるのは何でですか。有力と見られている人・出身国が米国の気にいらんからですか。

こっちの方もどうかと思いますが。

Posted by: フムフム | February 16, 2006 at 10:38 PM

私は、日本政府は、潘氏支持に動くと思う。
日本の政治は、そのぐらい半島と関係が深い。
スリランカの日本不信が生まれても、潘氏
支持に廻るだろう

Posted by: 反中派 | February 20, 2006 at 12:09 PM

>次期国連事務総長選での潘氏への支持の見返りに、日本の常任理事国入りの支持を韓国に取り付けるように交渉できないものでしょうか。

交渉はしていると思うけど、実際のところは現政権と今の韓国の世情をかんがみると、天地がひっくり返っても支持は無理じゃないかなぁ~
もしくは、日本の安保理入りを支持するふりをしておいて、実際の国連改革実行段階にきて、当時とは事情がかわったとか言って、反故にするか、どちらかで・・・
まあ、韓国の外交部自信は一応ある程度空気読んでるみたいですけど、上(現大統領)がまったく理解してないので無理ではないかな?

そして、日本が別の候補を支持したら、韓国が受けた~
のいつもの文言でぶちぶち言うと。

今回は、粛々と米国と同じ候補を支持しておけばいいかと思います。

Posted by: ふにふに | February 20, 2006 at 02:34 PM

「国連事務総長を出そうという国が領土問題で国際司法裁判所に出るのを拒否しているのはマイナスじゃないですか?」と外務省が言ってくれると面白いかもしれませんね。w

Posted by: Baatarism | February 20, 2006 at 09:31 PM

皆さん、ありがとうございます。
 実際の日本政府の対応は、韓国に対しては、「旗幟を明らかにしない」状態を続けるのであろうと思います。
 その間に、いかに高い条件を吹っかけるかということでしょう。
 このネタで産経「正論」で書いてみるかなという気がしています。

Posted by: 雪斎 | February 20, 2006 at 10:14 PM

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