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January 01, 2006

新年の御挨拶

■ あけましておめでとうございます。

■ 「主義といい、道といって、必ずこれのみと断定するのは、おれは昔から好まない。単に道といっても、道には、大小厚薄濃淡の差がある。しかるにその一つを揚げて、他を排斥するのは、おれの取らないところだ。人が来て囂々とおれを責めるときには、おれは『そうだろう』と答えておいて争わない。そして後から精密に考えてその大小を比較し、この上にもさらに上があるだろうと想うと、実に愉快で堪えられない。もしわが守るところが大道であるなら、他の小道は小道として放っておけばよいではないか。智慧の研究は棺の蓋をするときに終わるのだ。こういう考えを始終持っていると実に面白いョ」。
          ―勝海舟著『氷川清話』―
 二〇〇六年の「最初の一冊」は、勝海舟が著した『氷川清話』であった。書中、政治や外交の要諦として「正心誠意」の意義を勝が説いていたのは、有名であるけれども、前に転記した件も、雪斎には誠に味わい深い。勝は、江戸城無血開城に立ち会い、維新後には旧主・徳川慶喜を初めとして旧幕臣層の立場の保全に奔走した人物である。以前、阿川尚之先生は、福澤諭吉の「痩我慢の説」を取り上げながら、「実際に痩我慢の言葉よろしく、自らの境涯と責任の重さに耐えながら黙々と振る舞ったのは、勝のほうであった」と指摘していたけれども、勝が引き受けた維新後の仕事の意味を考えるとき、阿川先生の勝への評価は、納得に価するものであろう。
 勝は、故・江藤淳先生の評では、愛されることを諦めた「政治的な人間」であったと記憶する。雪斎もそうした「政治的な人間」の姿には惹かれるものを感じているし、前記の『氷川清話』の一節も、誠に重要なものと諒解している。新年の始まりに際して、あらためて、この一節の意味を噛み締めることにしよう。

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Comments

あけましておめでとうございます。
旧年はブログを通じてご縁を賜り、またいろいろお言葉いただきありがとうございました。
今年もよろしくお願いします。

「氷川清話」を読むと、勝海舟は現代を見透かしていたかのような鋭い内容が、酒でも飲みながら法螺話でも語っているような口調で話しているところに、時折空恐ろしさを感じます。
雪斎さんに倣って、正月休みの時間潰しに、久しぶりに軽くを目を通してみようかと思いました。

Posted by: 佐倉純 | January 01, 2006 at 12:03 PM

謹んで新春のお慶びを申し上げます。引用されている文章は何度、読み返しても味わいがあります。海舟の文章を読んで感心する人は、数知れず。されど、海舟の言を行える人は・・・となると寂しいものがあります。雪斎先生のいっそうの御活躍を期待いたしております。

それにしても、昨晩、解けなくて放り出した数式を見ていたら、式を立てる段階で誤りを発見。「バカってつらいよねえ」としみじみ。前途多難な一年になりそうです。

Posted by: Hache | January 01, 2006 at 02:44 PM

雪斎先生、明けましておめでとうございます。

冒頭の勝海舟の言葉を読むと、"融通無碍"の言葉が真っ先に浮かんできます。でも、このタイプはバッシング受けたり評価されなかったりしますね。融通無碍の道は意外に険しいのだと思います。
あえて雪斎先生がその道を歩まれるのならば、声援を送ります。本年も宜しくお願いします。

Posted by: やすゆき | January 01, 2006 at 04:48 PM

明けましておめでとうございます。

「一年の計は元旦にあり」
使い古された言葉ではありますが、元日に勝海舟の書を引用するところに、雪斎先生の「自分もかくありたし」という決意を感じます。

私もそのような雪斎先生を支持していこうと思っております。今年もいっそうのご活躍を祈っております。

Posted by: 藤田 | January 02, 2006 at 11:22 AM

明けましておめでとうございます。年を越せなかった知人などのことを考えると、明けたことはたしかにめでたいことだなどとしんみりするきょうこのごろです。今年はオリンピック、ワールドカップ、総裁選、とイベントメジロ押しです。個人的には小泉任期切れを前に北朝鮮がどうでるか気になります。もちろん天災も考えなくてはならないでしょう。今年が混沌のなかにも希望が見える年あであればと祈っております。さらなるご活躍を。

Posted by: 宵の明星 | January 02, 2006 at 12:16 PM

・本年もよろしくご指導賜りますようお願い
申し上げますm(_ _)m

・「わが守るところ」を心得ていたとしても、
勝の境地に至るのは容易なことでは、σ(^_^;の
ような考えなしの人間にも想像はつきます。
それでも、その道に進もうとご決断できるのが、
さすがであると思ったのでした。

Posted by: おおみや%バイト君 | January 02, 2006 at 10:43 PM

・佐倉純殿
・Hache殿
・やすゆき殿
・藤田殿
・宵の明星殿
・おおみや殿

 早々のコメントを有り難うございます。
 昨年は年末になて色々と身辺騒がしくなりましたが、勝海舟に比べれば、何ほどのこともないですな。海舟も、「世の中に無神経ほど強いものはない」と書いています。

Posted by: 雪斎 | January 04, 2006 at 05:33 AM

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