« 『坂本多加雄選集』刊行 | Main | 高熱を発して… »

December 03, 2005

安倍晋三内閣官房長官の「進化」

■ 昨日、ホテル・オークラで株式会社文藝春秋の忘年会に加わる。雑誌『諸君』現編集長・元編集長、その他文藝春秋の経営幹部と言葉を交わす。他にも、筑摩書房編集者、産経新聞論説委員長と話をする。
 雪斎が「いやはや。最近は私も左傾化したといわれていまして….」と話したら、文春幹部から「そうかい。世の中全体が、右に寄っただけで、雪斎さんは全然、変わっていないけどな…」という言葉が返ってきた。そして、「もっとも、おかげで『諸君』はだいぶ、売れているけどな・・・」と止めの一言である。いやはや、有難うございます。お陰で、忘年会では旨いものをゴチにいなりました。

■ 安倍晋三内閣官房長官に関する二つの記事が、雪斎の関心を惹く。『共同通信』と『毎日新聞』が伝えたものである。

  □ 皇室典範改正へ準備室 女性天皇容認で政府
 政府は1日午前、女性天皇を容認する皇室典範改正案の次期通常国会提出に向け、内閣官房に「皇室典範改正準備室」(室長・柴田雅人内閣総務官)を設置した。
 安倍晋三官房長官は同日午前の記者会見で「次期通常国会に間に合うような作業をしなければならない」と強調。「基本的に報告書を踏まえて法案作成に入る」と述べ、政府の「皇室典範に関する有識者会議」の報告書通りの改正を目指して法案作成を急ぐ考えを示した。
 皇位継承制度の見直しについては、有識者会議が女性、女系天皇を容認し、継承順位は男女を問わず天皇直系の長子(第1子)を優先する報告書を11月24日、小泉純一郎首相に提出した。

  □ 安倍官房長官 就任1カ月、最初の試練乗り越える  
 安倍晋三官房長官が就任して1カ月がたった。「閣僚1年生」ながら、三位一体の改革▽政府系金融機関の統廃合▽医療制度改革--と、重量級のテーマを3つも抱え、締め切りまでわずか1カ月。ポスト小泉候補として最初の試練を、先輩たちの助けも借りて乗り切った。内政ではこだわりと妥協を使い分ける柔軟性も見せ、「看板」だった外交での強気発言も鳴りを潜めている。
 ◇君子ひょう変◇
 「この案で了承してほしい」。11月29日、首相官邸の長官室。三位一体改革で、川崎二郎厚生労働相は補助金削減に「生活保護費を入れるべきだ」と主張し、竹中平蔵総務相は反対して譲らない。激論に耳を傾けていた安倍氏は、ころ合いを見てA4判の紙1枚を取り出した。直前まで自ら電卓をたたき、ひそかに準備した「生活保護費抜き」の私案だった。最終局面での裁定に、両閣僚は「お任せする」と一任した。
 もともと安倍氏自身は「地方のゴネ得にしてはいけない」との考えから、生活保護費を含める意見に賛成し、厚労省にもそう指示していた。
 だが、地方側の抵抗は、国へのデータ提供を集団ボイコットするなどエスカレートする一方。ぎりぎりの局面で安倍氏は生活保護費を外すことを決断。地方側も「国VS地方」のシンボルで主張が通ったことで留飲を下げ、代わりに本来は反対だった児童扶養手当の補助率引き下げなどが盛り込まれても、すんなり了承した。
 安倍氏側近は「最後まで生活保護費を入れる構えを見せたから、地方側は対案をのんだ。たとえ持論でも、状況によってはパッと下ろして果実を取る。バランス感覚が安倍流だ」と解説する。
 ◇応援団◇
 「安倍さんを傷付けるな」。政府・与党内には、首相候補として一番の「人気者」を守ろうという空気がある。一連の改革を予定通り決着させることができたのは、小泉純一郎首相の威光と併せ、同じ自民党森派の「兄貴分」である中川秀直政調会長らが、安倍氏を支える厚い布陣を作っている効果も大きい。
 政府系金融問題は、安倍氏が政府与党協議会の議長役だったが、実質的には中川氏が取り仕切った。29日の会議終了後、小池百合子沖縄・北方担当相は沖縄振興開発金融公庫について「合意文書には『統合する』と書いてあるが、沖縄に配慮して『統合を含めて検討する』に直せないか」と安倍氏に食い下がったが、代わりに中川氏が「せっかく苦労してまとめたんだ。これで終わりにしよう」と引き取った。
 ◇若葉マーク◇
 「安倍さんも大変だろうね。朝から晩まで各省の説明を聞かされ、1日2回の記者会見もちゃんとやって当たり前。失言したら大変だ。役を離れて気持ちが楽になった」。細田博之前長官は21日夜、女性議員らを相手に長官職の重圧を語った。
 まして安倍氏は初入閣。面会の多さや不慣れな分野の勉強に追われるためか、記者会見も定時から遅れることが多い。波風を立てまいとするためか、北朝鮮への経済制裁論や憲法9条改正などの持論も封印中。24日の参院拉致特別委員会では、民主党議員から「勇ましかった発言がトーンダウンした。変節したのか」とやゆされた。
 「首相のお考え、改革の方向性を念頭に置きながら、最終的な決定をするのが私の役割だろうと思います」。1日の記者会見でも、安倍氏はあくまで慎重、神妙だった。【犬飼直幸】

 安倍官房長官は、凄まじい経験を積んでいるようである。雪斎は、こうした報道が行われる限り、安倍長官は、着々と「宰相」への道を歩んでいるのであろうと思う。「皇室典範改正案」国会提出は、内閣府の所管事項であり、その法案策定の総責任者が安倍長官である。安倍長官の個人的な「信条」が、どのようなものであれ、この仕事を成就できなければ、安倍長官の政治家としての経歴には傷が付く。諸々の政策の遂行は、一人でやものではないからである。
 石原慎太郎、西村真悟、安倍晋三の三つの「shin」に期待を寄せていたのが、少し前の「保守」層の一般的な傾向である。しかし、石原氏は、既に二人の子息を自民党議員として送り込んでいる以上、また氏の個性が東京都知事という官職に見事にはまっている以上、もはや政治的な「冒険」を考える段階でもないのであろう。西村氏は、政治生命どころか社会人としての生命まで失おうとしている。残るのは、安倍氏であるかもしれないけれども、安倍氏は、ちゃんと手堅い政治家としての「顔」を整えようとしている。「保守」層が安倍氏に自らのイデオロギーを実現する役割を期待していたとすれば、それは、途方もない「お門違い」と呼ぶべきものであろう。
 政治は、知識層の考える通りには動かない。唯一の例外は、フランス革命、ロシア革命や中国・文化大革命のような時節である。そうした歳月が、もたらした「災厄」は、あらためて指摘すべくもない。

|

« 『坂本多加雄選集』刊行 | Main | 高熱を発して… »

「永田町の話」カテゴリの記事

Comments

雪斎先生の一貫性には驚くばかりです。第一印象で意思の強い方だなあと思いましたが、これまでほどとは。安倍長官の評価も例外ではなく、非常に一貫している。現実主義という視点で。

幹事長代理時代のタカ派的発言は、確信犯的なものだったと思います。「確信犯」というのは、政府と党の役割分担という雪斎先生の分析がまっとうだと思いますが、安倍さんの場合にはやや異なっていると考えます。安倍さんが目立つ発言をするときに、それは本音でしょう。同時に、それが直ちに実現しないことも理解している。実現しないからといって無理をするかといういえば、そういう「壮士」的な発想からは無縁でしょう。幹事長時代にも集団的自衛権の行使で明言されていて、ご自分でも前衛的な役割とおっしゃっていてなるほどと思いました。

私は、安倍さんの有している最も望ましい徳、中庸を発揮されることを期待しております。

Posted by: Hache | December 04, 2005 at 12:58 PM

環境と地位が安倍さんを変化進化させているのですね来年は量的緩和が予想され日本の金利動向が世界から注目されています。最近の日経ビジネスには三菱証券の水野和夫氏の量的緩和についての文が掲載されていました。バーナンキもまもなく登板するし、小泉後継は誰がきても経済運営容易ならざるものがあり外交にも経済にも造詣を深めていただきたいものです

Posted by: 星の王子様 | December 04, 2005 at 04:50 PM

「政府と党の役割分担という雪斎先生の分析」を「政府と党の役割分担という副会長の分析」に訂正いたします。トラックバックで副会長様のブログの記事を拝見して雪斎先生の記事と混同してしまいました。頭の悪い私がときどきやってしまうポカミスの典型です。お許しのほどを。

Posted by: Hache | December 05, 2005 at 12:28 AM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/71618/7442095

Listed below are links to weblogs that reference 安倍晋三内閣官房長官の「進化」:

» 期待しないで [副会長だより]
 以前、「鷹揚政党」というエントリーで「自民党にあまり期待しないでください」という趣旨のことを書いた。多数の期待には最大限こたえるが、度を超えたことは出来ないというつもりで書いた。また「21世紀の社会党になってはいけない」ということも書いた。  ここで....... [Read More]

Tracked on December 03, 2005 at 04:46 PM

» 日本株高値引けJGB安値引け [Star Prince JUGEM]
今日は日本株高値引けJGB安値引けでした。景気の先行きに自信をもつ向きが増え連日東北で地震が起きても日本株は崩れず。アメリカはいまいちの年末商戦でさらに値引きが進むとの見方もでていますが、どうなることでしょうか。週末から寒さが増しコートを着る人、マフラーをする人が目立つようになりました。小生も厚手のコートを着だすかもしれません。東海北陸は大雪の恐れということでそちらにお住まいの方々はお気をつけ下さい。 週末TVでおいしそうなふぐを見たせいもあり、会社帰りにふぐ刺しが値引きされていたので買い自宅で家... [Read More]

Tracked on December 05, 2005 at 07:59 PM

« 『坂本多加雄選集』刊行 | Main | 高熱を発して… »