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December 12, 2005

復活したものの…

■ 一時の「絶不調」状態から復活したら、片付けなければならない原稿が、あちらこちらにある。とりあえず、二つを片付けて、まだ二つが残っている。
 ① 産経新聞「正論」欄
 ② 『月刊自由民主』「論壇」欄
 この内、①は、皇位継承に関する原稿である。「有識者会議」答申提出以降、この案件に関する議論は、明らかに仰々しいものになっているので、「そもそも、この案件は『熱い議論』の対象として相応しいものであろうか」という趣旨のことを述べておいた。
 ②は、日本の対モンゴル戦略に関する論稿である。モンゴルといえば、日本では、横綱・朝青龍の印象がかなり強くなっているけれども、モンゴルとの関係は、対中関係や対露関係をにらんで、重要な意味合いを持つことになるであろう。

■ 昨年末、外務省が実施していた「モンゴルにおける対日世論調査」の結果は、誠に興味深い。

Q1.あなたのもっとも好きな国はどこですか(複数自由回答)。
(%)
米国41.8
日本33.4
中国5.8
韓国23.9
ロシア7.5
北朝鮮0.8
英国8.1
フランス8.4
ドイツ10.4

Q3.今後モンゴルが最も親しくすべき国はどこだと思いますか(複数選択回答)。
(%)
米国35.1
日本37.4
中国10.4
韓国14.0
ロシア28.2
北朝鮮4.4
英国9.3
フランス6.6
ドイツ10.4
その他0.6

 モンゴル国民の「中国嫌い」は、つとに指摘されているところである。モンゴルには、「中国人に嫁を出すと一家の恥である」という風潮もあるようである。この世論の調査の結果は、モンゴルにあっては、昔日の社会主義の盟邦に対する視線が、冷ややかなものであることを示している。
 その一方で、米国や日本に対する想いが強く伺われる。モンゴルは、もしかしたら、「日米海洋国家同盟」にとっては、誠に得難い「拠点」になるかもしれない。このことを念頭に置いて、次の『朝日』(11月22日)記事を読むと中々、興味深い。
 □ ブッシュ米大統領がモンゴルを初訪問 イラク派遣を評価
 米国のブッシュ大統領は21日、アジア歴訪の締めくくりとして訪れたモンゴルで、同国のエンフバヤル大統領と会談し、「共通の価値観と戦略的利益に基づく包括的パートナーシップの枠組み強化」をうたった共同声明を発表した。米大統領のモンゴル訪問は初めて。
 モンゴルはイラクに130人規模の部隊を派遣しており、米政府は「人口との比率では3番目の多さ」(グリーン国家安全保障会議上級アジア部長)と評価している。アフガンにも派兵しており、10月のラムズフェルド国防長官に続く大統領の訪問は、対テロ戦争協力への「お返し」の意味合いが濃い。
 共同声明によると、両首脳はテロとの戦いを続けることで一致した。ブッシュ大統領はモンゴルのイラクやアフガンへの派兵を高く評価。モンゴルが北朝鮮と伝統的な友好関係を維持しているため、両首脳は6者協議の共同声明の履行が重要と強調した。
 ウランバートルで同日講演した同大統領は、モンゴルについて「中央アジアの中心に自由な社会を築いた」として、中国とロシアに挟まれた同国の戦略的意義を重視した。90年に人民革命党が一党独裁を放棄して以来、モンゴルが「たった15年間で活気にあふれた民主主義を築いた」とも称賛した。
 イラクでのモンゴル軍の活動については、「テロとの戦いの前線にいるモンゴル兵らに感謝したい」「恐れ知らずの兵士らとともに戦えることに米兵は誇りを抱いている」などと述べた。
 モンゴルはコンゴやスーダンでの国連平和維持活動(PKO)に参加するなど、平和維持活動にも取り組んでいる。米国は軍事面での協力を強めており、04年には平和維持部隊の養成施設建設のため、100万ドルの支援を約束している。ブッシュ大統領は同日夕、米国への帰途についた。

 日米蒙三ヵ国提携という枠組で物事を考えると、色々と楽しい。小渕恵三総理が外務大臣在任時以降に推進した「陸」の外交機軸としての「シルク・ロード外交」、そして「海」の外交機軸としての「太平洋フロンティア外交」の二つをつなぐ「結節点」としては、モンゴルの占める位置は、「余人を以って代え難し」という趣きをもつものなのである。そして、これは、壮大な「対中封じ込め」の図でもある。
 

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「学者生活」カテゴリの記事

Comments

北はモンゴルから、南はインドから、
面白い挟み方ですね。あとは、東南アジア
地域との更なる関係の強化(海洋側の強化
にもつながりますね)とロシアとの決定的な
関係の進展でしょうか。
できれば、こちらの方も機会があれば、
中公なり産経なりにご寄稿いただければ
幸いでございますm(_ _)m

Posted by: おおみや%バイト君 | December 12, 2005 at 08:20 PM

もと外務省の佐藤優氏が、「正論」のインタビューで
拉致問題解決の方策を聞かれて、「わたしだったら
モンゴルの朝青龍関経由で北朝鮮の金正日とのルートを作る」と
答えていたのを思い出しました。朝青龍関の家はモンゴルの
警察関係の有力者だそうで、目のつけどころが鋭いですね。

Posted by: nanoshi | December 13, 2005 at 01:57 AM

蒙古ですか。
漢字で書くとまたオモムキが違いますね。

「蒙古、突厥、匈奴、吐藩・・・」と書けば、中国史を彩った諸民族が疾駆する姿を彷彿とさせますが、これをカタカナで書けば「モンゴル、ウイグル、チベット・・・」ということになりますか。

いずれ劣らず漢民族の天敵たち。
そしていまなお「漢民族政権」である「中共」にとっては最大の脅威でありましょう。

いよいよ政府は米国と連動して「対中人権カード」を切ったようですが、チベット、ウイグル地域はその要です。反政府独立運動につながれば、中共の自壊もありえます。その場合、「蒙古」の地政学的、戦略的価値は限りなく高いのです。

蒙古人の日米に対するシンパシーはうれしい材料です。こりゃ静的な「中共包囲戦略」だけでなく、動的な「中共壊滅戦略」においても、「蒙古」は鍵をにぎる同盟国になるのではないでしょうか?(^^)

Posted by: 雪風 | December 13, 2005 at 07:40 PM

日本が「対中人権カード」を切ったということは、先日のAPECのあたりで、日米の間で対中国外交政策の摺り合わせが行われたと考えて良いのでしょうか?
今週号のアジア版Time Magazineにリークアンユーのインタビューが載ってましたけど、東アジアサミットにインド、オーストラリアを加えたのは、中国に対するASEANの対策であると述べていました。
中国の台頭と一部の中国の若者の過激な愛国主義は日本だけでなく、ASEANでも不安視されているようです。
日、米、ASEAN、インド、オーストラリアで対中国外交が歩調を合わせつつある様に見えます。
モンゴルに対して日本が働きかけるとすると、対中国包囲網を日本がキーとなって形成することになるでしょう。
今までですと、日本が他国と対立する場合はだいたい、米国が矢面に立って、日本は影に隠れているという印象でしたが、今回は日本が矢面に立って米国に楽をさせていると言う印象があります。
日本は五月の反日デモで標的にされたので、矢面に立つのは自然な成行きかもしれませんが、これからはこういう役回りが増えそうな予感がします。

Posted by: T君 | December 13, 2005 at 09:27 PM

>T君様

すなわちそれが「地域覇権」ということでしょうか。

中国古典的な言い方をすれば、「世界皇帝」たる米国が、日本に「東洋の王」を命じたようなもんでしょうね。

米皇帝は自分が楽をするために、東洋王に地域覇権をまかすのですから、矢面に立つのは当然です。
それが嫌なら東洋王を辞退するほかなく、日本が辞退したら、中国か統一韓国かが「東洋王」に浮上してきます。
どっちが我慢できるか、という問題ですね。

気に入らない人も多いと思いますが、「米皇帝の天下」を認めないのであれば、「中国皇帝」に臣従するしかありません。
それもいやなら、日本が独力で世界覇権を握るか、国連を「世界皇帝」に即位させるしかありませんが、当面、現実味はない。

漫画的にいえば、そんなとこでしょう。国際政治は「力学」ですので、これぐらい単純化したほうが構図がわかりやすいかと思います。

「東アジア共同体」問題で一気に日中が激突しましたが、米国としてはこれくらいは「応分の仕事」と思っているのではないでしょうか?

Posted by: 雪風 | December 17, 2005 at 04:32 PM

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