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November 03, 2005

大久保、牧野、吉田、麻生という系譜

■ 吉田茂の次女にして麻生太賀吉の妻である麻生和子さんは、三度、ドラマや映画で演じられている、最も有名な一つ目は、夏目雅子さんが映画『小説吉田学校』(昭和58年、監督/森谷司郎)で演じたものであり、二つ目は、これに便乗する形でTBSが製作したテレビ・ドラマ『吉田茂』で吉永小百合さんが演じたものであった。三つ目は、雪斎は確認していないけれども、映画『226』(平成元年)で松下美智子さんという女優が演じていたようである。

 麻生和子さんは、麻生太郎新任外務大臣の亡き御母堂様である。麻生大臣は、『小説吉田学校』と『吉田茂』で、自分の母親が往時の最高の美人女優によって演じられていたことに、どのような感想を持っていたのであろうか。大臣に実際に会う機会があったら、聞いて見たい気がする。因みに、この二作品で吉田茂を演じていたのは、森繁久彌さんであった。余りにも似過ぎた演技だった。当代の俳優で「森繁・吉田」を超える演技をできるのは、誰なのであろうか。
 麻生大臣は、吉田茂の孫という点が強調されるけれども、雪斎の感覚からすれば、大久保利通の玄孫、牧野伸顕の曾孫である。近代日本の外政家、あるいは宮中重臣層の「正統」系譜を継いでいるのが、麻生大臣である。大久保利通に関していえば、戦前期、清沢冽が『外政家としての大久保利通』という書を著したように、外政面での業績は大きい。大久保は、明治7年の台湾出兵直後、北京に乗り込んで清朝政府と交渉し、事態の落着に尽力した。この折に、明治天皇が発した勅書には、「此節清国使命ノ儀ハ不容易大任苦労候ヘトモ素ヨリ国家ノ重事汝其任ニ克ユルヲ信要ス宜シク朕カ意ヲ体シ尽力アルヘシ」と記されている。大久保の次男である牧野伸顕は、外交官になりヴェルサイユ講和会議の折の次席全権などを務めた後、宮中に入った。そうであればこそ、麻生氏の外務大臣就任には、「真打、登場」という趣がある。
 「ポスト小泉」の本命に麻生氏が浮上したという声が、強くなっている。もし、小泉総理の政策上の意図が「1940年体制」の一掃であるならば、それを直接に引き継ぐのが麻生氏であるのは、誠に違和感のないものである。元来、外政家、宮中重臣層には、「大きな政府」への志向はない。「小泉改革」の結果として「1940年体制」が一掃され、「1940年体制」成立以前の姿にに日本が戻るのであれば、そのことを象徴するのが麻生氏であるのは、率直に相応しいものだと思う。
 しかし、それにしても、戦後、日本が「華族制度」を廃止したのは、惜しかったという他はない。吉田茂は、その功績からすれば、「侯爵」(marquis)、少なくとも「伯爵」(earl)にはなっていたはずである。だとすれば、麻生太賀吉には、「男爵」(baron)の称号が与えられていても不思議ではない。もし、この雪斎の夢想の通りならば、今の麻生大臣は、「麻生男爵」(Baron Aso)である。これは、特に米国では、相当に強烈な印象を与えそうである。米国では、ジョージ・W・ブッシュであれビル・ゲイツであれ、所詮は「ミスター」にしかならないからである。「バロン」と「ミスター」が会えば、必ず上座になるのは、「バロン」である。そうした人間関係の機微を使うことには、もう少し意識的であって然るべきなのではなかろうか。

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Comments

最近、中学生の頃読んだ『小説吉田学校』を再読しています。改めて、戸川猪佐武の筆運びの素晴らしさに感服。恐らく、戦後日本政治を活写した書籍で、これほど政治の本質に迫った作品はないのでは。

冒頭、GHQの横槍で、自由党吉田茂総裁がその地位を追われ、山崎猛幹事長に首班を譲ることを強要される場面が出てきますが、政治という営みが優れて時の運に左右されるという、普遍的事実を巧みに描き出しています。

今回の組閣でも、入閣が噂された政治家たちは、総理との人間関係によってもその成否が決まったわけですが、本書の後書きを読むと、小泉総理も権力の魔力に憑かれていることが推察されます。麻生大臣は果たして本書を読まれているのか如何。

Posted by: burke | November 03, 2005 at 03:31 AM

確かに海外で麻生氏を吉田茂の孫にあたるという報道がなされましたね。欧州ではいまも称号としてバロン等ともつ人々がおり社会的地位が確立していますね。先日ドイツ人で日本の某大学に留学してその後ドイツでワイナリーを受け継いだ若きバロンの談話がでていましたが、今でも地元のひとたちの尊敬を感じると書いていました。外交面では重きをなす血と伝統。深いものがあるのかもしれません。

Posted by: 星の王子様 | November 03, 2005 at 04:38 AM

「封建制度は親の仇でござる」とは福沢諭吉の言葉。「天は人の上に人をつくらず・・・」というもっと有名な言葉と合わせて、現代ではあえて言挙げする必要も無い「大前提」だと思っていましたが、若い人たちの間ではまた別の感覚が芽生えてきているのでしょうか。。。

Posted by: やぶ猫 | November 04, 2005 at 11:30 AM

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