« 雑感・釜山APEC | Main | 自民党立党50年 »

November 20, 2005

日中友好、万歳。

■ 釜山APECが終わった。興味深かったのは、次の『毎日』記事である。
  □ <小泉首相>独自の「日中友好論」展開 APEC全体会議
 【釜山・伊藤智永】アジア太平洋経済協力会議(APEC)の21カ国・地域の首脳がそろった18日の全体会議で、小泉純一郎首相は議題と関係なく独自の「日中友好論」を展開した。中国に胡錦濤国家主席との会談を断られたが、胡主席も列席する国際会議の場で、一方的に自分の立場を主張してしまう政治パフォーマンスだった。
 「全体会合で、皆の聞いてる前で、私が発言したんだ」。18日夜、同行記者団が盧武鉉(ノムヒョン)韓国大統領と会談した感触を尋ねたところ、小泉首相は質問をよそに、全体会議での発言について約10分間、身ぶりを交えて熱弁を振るった。
 米中タイ3カ国の冒頭発言後、各国数分ずつ順に発言。小泉首相は議題の経済問題を外れ、唐突に日中関係を論じた。
 「一つの意見の違いとか対立で、全体の友好関係を阻害してはならない。中国、韓国と政治的首脳の交流は途絶えているが、他の関係は良好だ。どんなに批判しても結構だ。私は何らわだかまりを持ってない」
 ブッシュ米大統領、プーチン露大統領の来日について紹介。ペルーのトレド大統領と「フジモリ問題」があっても握手したことなど、円卓を囲む各首脳との関係を引き合いに持説を強調。中国の会談拒否を当てこするかのような論法だったが、会議後、何人かの首脳から「いい話だった」と声を掛けられたという。
 胡主席は反論できず、議長の盧大統領も聞き役に回るしかない状況。小泉首相は記者団に「してやったり」の表情で高揚感を隠さなかった。2日間にわたるAPEC首脳会議の全体4時間半のうち、小泉首相が発言したのは、この時と鳥インフルエンザ対策を述べた2度だけで、計10分足らず。「日中友好演説」が、APEC外交のハイライトだった。

 以前、『諸君』(2005年7月号)「中韓の呪いから醒めよ 政財界人・言論人一目でわかるチャート式「米中愛憎度」」という記事の中で、雪斎は、「親米・親中」派の知識人として位置付けられていた。他に、どういう人物がいたかは、こちらが参考になる。どうやら、知識人という範疇では、雪斎が唯一の「親米・親中」派であったようである。
 そうした事情も反映してか、同じ頃、今は既に消滅した「売国奴列伝-ジャーナリスト・著名人編」というサイトでは、雪斎に関して、「こいつ、親米保守・・・・ならぬ親米左翼。日本が米国だけではなくて、あらゆる国に媚びるべきだと考えているフシが有る。 じゃあ、何のために日米同盟を維持してんだよ? ある意味、反米左翼よりもタチが悪いよ」という書き込みがあったのが、残っている。
 雪斎は、長らく「保守派」、「右派」と呼ばれてきたけれども、「左翼」と罵倒されたことはない。この書き込みをした人物がどういう人物かは知る由もないけれども、雪斎をはっきりと「左翼」と呼ぶ人物が登場してきたのは、誠に感慨深い。そういえば、最近では、小泉純一郎総理を「左翼」と罵倒した保守論壇の重鎮もいたはずである。今となっては、「左翼」と呼ばれるのも一つの「勲章」なのかもしれない。。
 そして、小泉総理は、自らを「日中友好論者」と語った。雪斎も、多分、小泉総理が「日中友好論者」であるのと同じ意味で「親中派」である。大体、まともな大人の社会では、初めから相手に対して敵対意識や対抗意識を剥き出しにして振る舞う馬鹿はいない。そうした振る舞いをする輩は、周囲からの失笑を買うに決まっている。日本と中国は、具体的な「利益」で一致できる限りにおいて協力できれば、それでいいのである。「政冷経熱」は、大いに結構ではないか。共産党政府を相手に「政熱」をやってしまったら、かなり気色悪いではないか。
 こうして、雪斎の頭の中で鳴り響いているのが、美空ひばりが歌った名曲『柔』のメロディーである。

 『柔』(関沢新一/作詞、古賀政男/作曲)
一、
勝つと思うな 思えば負けよ
負けてもともと この胸の
奥に生きてる 柔の夢が
一生一度を 一生一度を
待っている
二.
人は人なり のぞみもあるが
捨てて立つ瀬を 越えもする
せめて今宵は 人間らしく
恋の涙を 恋の涙を
噛みしめる
三、
口で言うより 手の方が早い
馬鹿を相手の 時じゃない
行くも住るも 座るも臥すも
柔一すじ 柔一すじ
夜が明ける

 頭に血が上り肩肘を張って向かってくる相手には、「柔」の姿勢で臨むのが一番である。だから、現下の中国には、「剛」の姿勢で臨む必要はない。そのような姿勢では、こちらのエネルギーが浪費されるだけである。にもかかわらず、保守論壇には、その「剛」の姿勢を説く議論が蔓延っているのは、何故であろうか。雪斎は、「日中友好、万歳」を唱えながら、「柔」の姿勢で構えたほうが、余程、いいと思うのだが…。そういえば、四十年近く前、高坂正堯先生と並んで日本における現実主義者の巨頭であった永井陽之助先生は、「これからの日本外交は柔道を手本とすべきである」と唱えられていた。当時は、「剣なき外交」の意味合いで柔道という類推を使っていたはずであるけれども、その意味するところは、今となっては深遠であった。

|

« 雑感・釜山APEC | Main | 自民党立党50年 »

「国際情勢」カテゴリの記事

Comments

 まさに雪斎先生の仰る通りですね。
 外交とは本音と建前が同居するところ。本音に熱い誇りをもちつつも、他人の面前では妥協も使わざるを得ないものです。しかしながら建前でもって他人をミスリードしてやることもできますし、そこが外交の妙といったところでしょうか。

 「クールヘッド、ウォームハート」

 私としてはこの言葉がまさに意を得ていると感じます。

 世間の論壇に対する目は、親○○派か反○○派のどちらか、という点に迫っているような気がします。和するか戦うか、その二分論の中でしか判断できない今の日本人は悪しき意味で「武士道の潔さ」を引き継いでいるのかもしれません。

Posted by: | November 20, 2005 at 05:29 PM

靖国神社をめぐる問題以外の問題、竹島問題とか、ガス田問題とかなら、日本人は冷静に対処できると思います。ところが、靖国に関しては、冷静になれない日本人が大勢いる事が問題を困難なものにしています。
反靖国の日本人は、中国韓国が反対しなくなって、首相が大手を振って靖国を参拝して問題が解決というのを、受け入れられないようなのですね。そういう人がマスコミにも大勢居て、問題の鎮静化を阻止しているように見えます。靖国親派の方も、首相が8月15日に参拝しない事を受け入れられないようです。そう考えると、靖国問題は日本の中にある根の深い対立を元にした国内問題であると言えると思えます。
実際の話、靖国神社がなんであるか知らない中国人の方が圧倒的な多数派であって、「中国人の感情を傷つけた」という中国スポークスマンの話は政治的難癖以外のものではありません。
とりあえず、中国韓国が文句を言わなく成るまで首相が参拝を続けて、外交問題と靖国問題を切り離してしまう方が良いと思います。
反靖国派にとっては打撃であるでしょうが、自分達の政治目的の為に外国を利用した罰であるとして受け入れてもらいましょう。

Posted by: T君 | November 20, 2005 at 06:55 PM

「大体、まともな大人の社会では初めから相手に対して敵対意識や対抗意識を剥きだしにして振舞うバカはいない。そうした輩は周囲からの失笑を買うに決まっている」。なんと申し上げるべきか。醒めた文章で「非道」の極意を教えていただいた感覚です。常識を「常識」として意識して行動したり発言することは、意外と難しいことだと思いました。よいお弟子さんを育てていただくのが、雪斎先生の役割でしょうか。私みたいな不規則生活をしている者が申し上げるのは気恥ずかしさがありますが、御自愛ください。

Posted by: Hache | November 20, 2005 at 10:15 PM

同感です!私もこの記事は超ウケました。総理の大演説に、「これが総選挙大勝の秘訣か・・・」と思った首脳はいたかなあと思ったり、にこにこしながら読みました。ちなみに紙面の見出しは「APECでもサプライズ」「唐突発言、中韓反発できず」で、毎日の無念さが感じられます(?)

激務のお疲れが出たのですね。お大事になさってくださいね!

Posted by: さくら | November 20, 2005 at 11:28 PM

>勝つと思うな 思えば負けよ

 柔の極意もいいですけど、勝海舟の言葉もいいと思いました.次ぎのようだったと記憶します.
「なあにみんな敵がいいんだ.味方にしようとするから誤るんだ」.

最近のマスコミ論調で気になることは「日本外交は孤立しつつある」というもの.言うまでも無く中韓との摩擦を前提にしているんでしょうが、実は孤立しているのは中韓じゃあないんでしょうかねえ.味方にしようとして、逆に日中韓が国際社会の不安定因子になってしまったら、元も子もない.
「味方にしようとするから誤るんだ」小泉さんは、この極意をよく理解されているように思います.

Posted by: M.N.生 | November 21, 2005 at 09:49 AM

日本の「保守論壇」はダメですよ。
たかだかゼニ勘定に過ぎない郵政民営化に反対する為に、「真性保守」なる珍語まで捏造してしまうにまで、劣化してしまひました。

もちろん、北京が「日本屈服の絵柄」を得んが為に、総理の靖国神社参拝に吼えている以上、九段へ行くしかありません。

それに「日本は孤立してしまう」とか言う連中は理解を超えています。インチキ看板大東亜共栄権の復活でも願っているのでしょう。
そもそも2千年前から日本は孤立しているのであって、何を今更騒いでいるのか不思議で仕方がありませんな(笑

Posted by: ぺパロニ | November 21, 2005 at 10:38 AM

 日本の「保守論壇」という人々は、何を「保守」したいのか、さっぱり分かりません。
 たとえば、議会制民主主義をかれらは擁護するのか、否定するのか、天皇陛下と自分、天皇陛下と国民との関係をどう規定しているのか、そういう根本的なところがさっぱり分かりません。
 外交的にも目指すところが分かりません。反米・反中、反**、何か赤子がいやいやをしているようにすら思います。赤子ならかわいいですみますが、15でそれをしたら親を苦しめる不良の家庭内暴力、20すぎたら社会を苦しめるヤクザでしょう。

Posted by: KU | November 22, 2005 at 07:11 AM

こんにちは
 おっしゃるとおりですね。外交はまさしく「柔道」。APECでは、ほよよんと小泉首相が受け流したように思えます。世界がこれだけ相互依存関係にある中、もう保守だの左翼だの、敵、味方を考えることが「浪費」なんですけどね。逆に日本の孤立が許されない状況でもありますよね・・。
 プーチンさんは柔道の猛者。よく心得ているようで、この訪日は、表向きは成果がないようでも、ガッチリ組んじゃったってカンジします。力の入れよう(抜きよう)が面白いですね。
 
 

Posted by: SAKAKI | November 22, 2005 at 11:55 AM

ビジネスの世界でも、「Judo Strategy」っていうのがありますね。

http://www.amazon.com/gp/product/1591391261/104-0062939-7250351?v=glance&n=283155&s=books&v=glance

このシンプルな「柔道」の解説、好きです。

Posted by: IOT | November 23, 2005 at 01:03 PM

>雪斎は、「日中友好、万歳」を唱えながら、「柔」の姿勢で構えたほうが、余程、いいと思うのだが…。

私は「剛柔」両方を使い分ければ良いかと。
以外と皆さん「保守」が嫌いなのかな?保守と自由主義は並存できると思っているのですが。

「日本の孤立」ですが、昔から孤立している思います。
まあイスラエル(ユダヤ人)ほど孤立していないので、問題はアメリカ次第でしょう。

Posted by: 方虎山 | November 24, 2005 at 08:54 AM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/71618/7222305

Listed below are links to weblogs that reference 日中友好、万歳。:

» すげ〜!朝日ってすげ〜! [ニッポンのこれから]
厚顔無知って、このblogで何回も使ってるんですが、基本的に媚中派、というか「中華主義大好き主義者」ってのは中韓も朝日も厚顔無知なんですね。〜引用開始〜 (小泉外交)取り繕えぬ靖国の影  小泉首相にとって気の重い韓国訪問だったのではないか。韓国の盧武鉉大統領とは短い会談を持てたが、中国の胡錦涛主席とは会えずじまい。冷たい関係は深刻さを増している。  韓国・釜山で開かれていたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議が閉... [Read More]

Tracked on November 22, 2005 at 01:23 AM

« 雑感・釜山APEC | Main | 自民党立党50年 »