« 人生はギャンブルなのさ… | Main | 政治家と政治活動家 »

November 09, 2005

在日米軍再編の「陥穽」

■ 小泉純一郎内閣への批判の中に、「対中、対韓関係の停滞」を指摘する向きがある。確かに、安倍晋三官房長官、麻生太郎外務大臣が「強硬派」と目されている経緯からすれば、そうした批判にも根拠がないわけではない。その一方、「ブッシュ・小泉」同盟とも称される現下の日米同盟の強さは、自明のように考えられている節がある。しかし、その日米同盟の強さは、果たして自明といえるであろうか。次の「共同通信」の記事を考えてみる。
 □ 米軍再編案容認できず 沖縄、神奈川知事が直談判
 沖縄県の稲嶺恵一知事は7日午前、安倍晋三官房長官と首相官邸で会談し、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設先がキャンプ・シュワブ(名護市)沿岸部に変更されたことを「容認できない」と反対の意向を表明した。
 神奈川県の松沢成文知事も、防衛庁で額賀福志郎防衛庁長官と会い、米陸軍第1軍団司令部のキャンプ座間(相模原、座間両市)への移転などを「3重、4重の負担増で到底承服できない」と撤回を求めた。
 日米両政府が在日米軍再編の中間報告で合意し、小泉改造内閣が発足した後、知事が関係閣僚と会うのは初めて。今後、中間報告の具体化をめぐる政府と地元の調整が本格化する。

 米軍再編に伴う影響が及ぶのは、日本本土の市町村レベルでいえば、先ず山口・岩国である。岩国には、従来は神奈川・厚木に置かれていた空母艦載機部隊が、移転することになる。鹿児島・鹿屋には、普天間飛行場(沖縄・県宜野湾)配備の空中給油機12機が移転することになっている。米軍再編の動きとは別に、神奈川・横須賀への原子力空母配備の動きも、地元の反発を呼んでいる。
 おそらく、この在日米軍再編を首尾よく進めることは、小泉純一郎内閣が日米関係全般に残す最後の「置き土産」になるはずである。ただし、このことは、かなり難しい。目下のところ、在日米軍再編案「中間報告」を歓迎する地方自治体は、少なくとも表向きは、ほとんどないのである。こうした地方自治体の反発それ自体は、誠に肯けるものであり、何ら非難するに値しない。額賀福志郎防衛長官が「何度でも沖縄に出向く」と語ったのは、誠に賢明である。地方自治体の不満に対する対応は、日米同盟の大義を大上段に振り翳して押し潰すというようなものであってはならないからである。
 ただし、逆にいえば、この在日米軍再編への対応に手間取るようならば、日米関係全体に「暗雲」を呼び込むことになりかねない。向こう一年近くに限っていえば、「ブッシュ・コイズミ」同盟が機能することは期待できるし、その機能が働いている間に、在日米軍再編に絡む問題に決着が付いていれば、何の懸念もない。しかし、この問題の決着が「小泉以後」にまでずれこんでいるようならば、「ブッシュ・コイズミ後継」同盟が果たして「ブッシュ・コイズミ」同盟と同じ強さで機能するかは、定かではない。現下のジョージ・W・ブッシュは、かなり深刻な内憂外患を抱えている以上、対日関係の文脈で劇的な措置を講じると即断するわけにはいかない。結局は、在日米軍再編の行方を決めるのは、日本政府の努力なのである。
 雪斎は、在日米軍再編に絡む問題の決着が小泉総理の任期中になるか「小泉以後」にまでずれこむかは、小泉後継が誰であるかということにも、影響を与えるであろうと見ている。もし、「小泉以後」にも課題が残ってしまったならば、それへの対処は後継宰相の最初の仕事になる。それは、地方自治体の納得を一つ一つ取り付ける点で間違いなく地味なものになるであろう。そうした場合にはなおさら、安倍官房長官が「次」ということは、考えられなくなる。在日米軍再編という内政と外交の双方が複雑に絡んだ課題に取り組むには、安倍長官には、まだまだ「粗さ」と「硬さ」が抜け切らないところがあるからである。たとえ、その「粗さ」や「硬さ」が、世間的には「言動や姿勢の判りやすさ」と受け取られ安倍氏への人気に結び付いているとしても、それ自体は政治家に本来的に要請されることではない。だとすれば、後継宰相は、麻生太郎外務大臣か福田康夫氏か。雪斎は、そのあたりになるかと思っている。

|

« 人生はギャンブルなのさ… | Main | 政治家と政治活動家 »

「国際情勢」カテゴリの記事

Comments

いつもながら、現下の重要課題に関するシャープな分析に同意.
さて「かんべえ」氏の溜池通信で「任期がくるまで辞められないアメリカ大統領はつらいよ.その点、議員内閣制の総理は辞められるしなあ」というコメントがありましたが、ブッシュのあと三年と小泉さんのあと1年のギャップをどう埋めるのか、ここがある意味でキーポイント.総理の性格からいってよっぽどのことが無いかぎり、お辞めになるんでしょうが、日米同盟に決定的に影響する問題がおこたっら・・・?.
 「俺はもう辞めたよ」とはいかんのでは?

Posted by: M.N.生 | November 09, 2005 at 09:15 AM

結局のところ、見返りなしに米軍施設受け入れを認める自治体はまずないわけですから、事前に特定地域に決めてから、地元と交渉して見返りとセットで無理やり飲ませるよりも、事前に「米軍基地を受け入れてくれたら地元にこれだけの見返りを与えますよ」と公表して、受け入れ先の自治体を募集するほうが、まだ良い方法のような気もしますね。

Posted by: Baatarism | November 09, 2005 at 02:32 PM

>額賀福志郎防衛長官が「何度でも沖縄に出向く」と語ったのは、誠に賢明である。地方自治体の不満に対する対応は、日米同盟の大義を大上段に振り翳して押し潰すというようなものであってはならないからである。

う~ん、政治って、やはり難しいですね。口を開けばどうしても「国益国益」になってしまうけど、そして中国の動きを見れば、一刻も早い解決が必要な、急いた気持ちになってしまうわけですが…

現実的な落としどころっていうのは、どこになるのかな。まあ、どこの地元もご指名受けたら、まず大反対でしょうから、まずは反対意見を言いたいだけ言わせ、主張したいだけ主張させて、いい加減出尽くした辺りから、改めて様々な対価というか見返りというか、そういうものを出しての、話を詰めていくというやり方でしょうか。
政治の実務の九分九厘は交渉と説得でありましょうなあ…

Posted by: るびい | November 09, 2005 at 07:22 PM

・M.N生殿
ブッシュ辺りの本音からすると、「ジュンイチロウ、俺と一緒に辞めよう」ということかもしれません。
・baatarism殿
岩国の財界関係者は「歓迎」だそうです。これがヒントかもしれません
・るびい殿
仰るとおり、「政治」は難しい。「忍耐」と「根気」の仕事でしょうね。

Posted by: 雪斎 | November 09, 2005 at 07:48 PM

 弱気なイメージだった額賀氏の「沿岸案提案」→「防衛庁長官就任」に野心的な行動と、それに応えて長官職を任せて党の安保調査会長の人事にも介入した総理の並々ならぬ意欲にただならぬ期待と興奮を持っています。
 僕は最終的には多少手荒な真似をしても総理はこの問題の解決に持っていくのではないかと予測しておりますが、来年の11月に沖縄県知事選があり、新総理一発目の大型選挙にそれほどの高いハードルを設けさせるのは酷ではないかという気も一方ではあります。
 9年前のSACO合意の際の、関係者の努力を無にしてしまった以上、普天間問題を解決することは総理の最後の大仕事に相応しいように思います。

Posted by: 副会長 | November 09, 2005 at 08:18 PM

辺野古についてはこの記事が注目ですね。
結局、額賀氏が言うように住環境か自然環境かという話になるんでしょうか?
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT1E0900A%2009112005&g=P3&d=20051109

あと、北部振興策を言うのであれば、那覇と名護を結ぶ鉄道でも作れば良いのにとも思うのですが。つくばエクスプレスかJR西日本の新快速並みのスピードにすれば、名護あたりは那覇の通勤圏になりますから、南部への人口集中対策になるでしょう。

Posted by: Baatarism | November 10, 2005 at 10:36 AM

どうも初めまして
基地のある土地の方には失礼かもしれませんが
戦闘機や空母など、兵器を近くで見れるのは
大阪に住んでいる僕としては羨ましいです。

Posted by: サウス | November 11, 2005 at 09:34 PM

・副会長殿
「小泉」任期以内に片付けないと、かなり大変なことになりそうですな、
・Baatarism殿
これは、「政治の技術」を鑑賞するつもりで向き合えば、特上のネタでしょうね。
・サウス殿
拙者も子供のときに「自衛隊機」を飽きるほど観てましたが、貴重な時間だったとは思います。

Posted by: 雪斎 | November 11, 2005 at 10:01 PM

最近韓国が柔軟な対応になりだしました。いい傾向です。自衛隊に関しては名古屋は小牧の基地があり高校の時の同級生のお父さんが幹部(当時佐官)ということもありました。イラクにも小牧から飛行機が飛びました。
東京ではヘリが多いのですが沖縄県庁に勤務する大学時代の友人にとっても自衛隊問題は重要で今後も推移をみていきたいと考えています。

Posted by: 星の王子様 | November 12, 2005 at 04:01 AM

逗子・葉山に在住していた者としては、横須賀にミッドウェイ(当時ね)(多分ミッドウェイだったと思うのですが)が入港すると、戦闘機の離着陸の音がものすごく、テレビの音も会話の声も全部聞こえなくなってました。閉じたサッシ窓がびりびりと震え、轟音に包まれると自分の身体が音の中で浮き上がるような錯覚に、よく捉われたものです。

しかしまあ、そんな環境でも幼子はぐっすり昼寝してるのだから大したものです。
公園仲間でも「いや、昨日はひどかったね~」程度で、土曜になるとお出ましだった暴走族の皆さんのほうが堪えました。あの騒音は戦闘機より、神経を苛立たせました。

最近判ったのですが、基地移転となると
まず「平和団体」の皆さんがデモを打ってアピールする。マスコミにも「こんな理不尽なことが通って良いのかっ」等と言っているところを大いに撮ってもらう。
で、気が済むまでアピールして貰って一段落付いたところでおもむろに現実的な折衝が開始される…
一種の様式美になってますね。
なるほど、みんな現実は良く認識しているのだなあ、左でさえも、と思いました。

Posted by: るびい | November 12, 2005 at 08:00 AM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/71618/6960517

Listed below are links to weblogs that reference 在日米軍再編の「陥穽」:

» 日本に常任理事国の資格はない [目指せ1億!復活ニッポンで儲けましょう。榊雲水雑記帖]
常任理事国の資格  考えてみた。 フランス 暴動で戒厳令。 ロシア  ロシア南部でテロ多発(北オセチア共和国) 中国   経済好調?されど全土で住民反乱、環境破壊 イギリス 英国病を克服、つい最近までアイルランド紛争       ロン... [Read More]

Tracked on November 09, 2005 at 09:30 PM

« 人生はギャンブルなのさ… | Main | 政治家と政治活動家 »