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October 09, 2005

「王将」+「野球」=阪神タイガース

■ 『王将』 (作詞/西条八十、作曲/船村徹)は、村田英雄を有名にした歌である。

吹けば飛ぶよな 将棋の駒に 賭けた命を 笑えば笑え 
うまれ浪花の 八百八橋 月も知ってる 俺らの意気地

あの手この手の 思案を胸に やぶれ長屋で 今年も暮れた 
愚痴も言わずに 女房の小春 つくる笑顔が いじらしい

明日は東京に 出て行くからは なにがなんでも 勝たねばならぬ
空に灯がつく 通天閣に おれの闘志が またもえる

 この『王将』に描かれたのが、阪田三吉であったのは、知られた事実である。阪田三吉は、一時期、棋界から追放されていた。後に阪田三吉が棋界主流と和解した折、l阪田の復帰を記念し、読売新聞社の主催で京都・南禅寺特別対局が行われることになった。対局の相手は、当時の名人であった関根金次郎の弟子、木村義雄であった。
 「ウィキピディア」には、次のような記述がある。
 この対局は後手となった阪田が2手目に△9四歩と指したことで有名である。後手でありながらなお1手損とするこの指し手は、関西の棋界を背負っていた阪田の、東京への反骨精神の表れとも見られている
 阪田三吉の墓石は、日々、今でも削り取られているのだそうである。阪田三吉にあやかろうとする人々は、多いのである。
 因みに、雪斎は子供の頃、坂田三吉というのは、大阪・通天閣高校の坂田三吉だと思っていた。水島新司の漫画『ドカベン』に主人公、山田太郎のライヴァルとして登場するキャラクターである。ゴルフスウィングのようなフォームから高々と高層ビルのようにフライをあげる通天閣打法は、中々、興味深かった。棋士・阪田三吉が、この坂田三吉の元ネタだと知ったのは、少しあとのことである。これもまた、神奈川・明訓高校という「首都圏のチーム」が主流の漫画で、「アンチ」の位置を占めていた。もっとも、雪斎は、水島新司の別の漫画『男どアホウ甲子園』だけは読んだことがない。野球漫画といえば、『巨人の星』(1966年、梶原一騎・川崎のぼる) 、『アストロ球団』(1972年、遠崎史朗・中島徳博) 、『キャプテン』(1972年、ちばあきお) 、 『すすめ!!パイレーツ』(1977年、江口寿史)、 『がんばれ!!タブチくん!!』(19xx年、いしいひさいち) 『タッチ』(1981年、あだち充)といったものが、雪斎には馴染み深い。調べてみたら、『戦後野球マンガ史』という書もある。日本の日本らしさを象徴する漫画と「野球」が融合した「野球漫画」が、これだけ多いというのも、野球に対する日本人の想いの深さを物語っていよう。
 「王将」が描いた「反骨の精神」と「野球」が結び付いたのが、阪神タイガースという球団である。この球団に対する関西人の思いの深さが半端ではないのも、当然であろう。だとすれば、「村上ファンド」の村上世彰氏も、相当に思い切ったことをしたものだと思う。もし、世上、伝えられているように、村上氏が売却益を狙っただけの存在であるならば、「阪神」を金儲けの材料に使った姿勢は、大きな批判を浴びよう。村上氏が、最初から売却益目的の株式取得であることを公言しているならば、むしろ清々しい印象を与えるはずであるけれども、彼は、多くの株主の利害を代弁しているかのようjな「大義」を語っている。村上氏にとっては、阪神電鉄株買収は、「虎子を得る」結果になるのか、それとも「虎の尾を踏んだ」結果になるのか。怖いことにならねばいいがと思う。

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「日々の戯言」カテゴリの記事

Comments

一応阪神ファンですが、
今時はメディアの発達のおかげか地域対立的な感情ってそんなにないような気もします。
お祭りさわぎ的なものを共有したい住民のシンボルみたいになってるんじゃないでしょうか。
福岡なんかの盛り上がりを見ても、そういうもんではないかなあと思います。

Posted by: masa | October 09, 2005 at 02:41 AM

こんばんは
再度 トラックバック4を送りました。よろしくお願いします。ついでにリンクもしちゃいました・・・
話は飛びますが、私は太原崇孚雪斎を小説にしようかと思っていました。本来、不殺を旨とする禅僧が当時の最大の大名である今川義元を育てました。東海、駿河に楽土を築くためです。おそらく雪斎は上洛に反対であったと思われます。主従の絆に微妙な距離が開き、氏真の教育係をはずされた軍師は、松平竹千代にその叡智のすべてを注ぎ込もうとするってカンジ・・ではでは

Posted by: sakaki | October 09, 2005 at 08:30 PM

昨日と今日、京都に行っておりました。
野球漫画、突っ込むと話が終わらなくなりそうですが(笑)、雪斎さんが挙げられた名作に加え、『なんと孫六』や『あばれ隼』など思い出深いです(さだやす圭には『ああ播磨灘』という名作もあり、相撲と野球という二つの国民的スポーツをおさえているまさに大衆漫画家です(笑))。水島新司では『光の小次郎』が好きです。短編ですが『キララ』(平松新二)もキワモノ的にインパクト大でした。
坂田三吉の端歩の意味は、永遠の謎と聞きますが、そういう意味があると聞くとなるほどと思います。かんべえさんも一家言もってそうですね。
大阪の将棋といえば、阪本順治監督の『王手』も思い出します。

Posted by: やじゅん | October 10, 2005 at 01:11 AM

>それとも「虎の尾を踏んだ」結果になるのか。怖いことにならねばいいがと思う。
虎の尾を踏んだ事、じきに思い知るがよいっい!と思っております。
ぐっちー殿も、記事(のコメント欄)に触れられてますが
http://blog.goo.ne.jp/kitanotakeshi55/e/f8b26c68e9cea5ae9d357092e4b9d144
なかなかヤバイお金も村上氏のところに流れ込んでるようです。報道合戦が激化しそうで鬱です。

masa殿>
今の若い虎ファンに地域間対立の感情はあまりないでしょうね。健全だと思います。ただある年代から上には、東京への対抗意識が阪神びいきに転化している部分が間違いなくあると思います。中央へのコンプレックスは、関西側だけにあるのです。
どうも経済における関西の地盤沈下に比例して、阪神人気が盛り上がって来た感もなくはありません(笑)

Posted by: やすゆき | October 10, 2005 at 02:38 PM

Wikiを読んだんですが、名人僭称とかヒステリックな反応があったんですねえ。
相撲の春秋園事件みたいになれば面白かったのに。

やすゆき様
ほとんど85年以降の記憶しかないので阪神が強いと違和感を感じます(笑

Posted by: masa | October 12, 2005 at 04:15 PM

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