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October 25, 2005

安保理常任理事国入りへの「潮目」

■ これは…と思ったニュースである。『読売』記事である。
  □ 日本の常任理入り、実現に向け日米で協議へ
 来日中のニコラス・バーンズ米国務次官(政治担当)は24日、東京の米国大使館で記者会見し、日本の国連安全保障理事会常任理事国入りを可能にする国連総会決議案を今後数か月をかけ、日米間で協議していく意向を明らかにした。
 米国は日独などの4か国グループ(G4)が策定した枠組み決議案には反対したが、人権委員会の改革など米国が懸案の処理にめどが着いたことを理由に、日本の常任理事国入りに向けて本腰を入れる姿勢を示したものだ。
 バーンズ次官は、米国が支持できる安保理拡大の幅について「安保理メンバー国の数では20~21だ」とし、「常任理事国と非常任理事国をいくつにするか、可能性はいろいろあるが、どんな場合でも日本の常任理事国入りを米国は支持する」と明言。「今後数か月をかけ、国連総会の支持が得られる案について日本と協議する」と語った。

 国連安保理再編関連の話題は、分担金拠出の話が出ていた影に隠れてしまっていると見ていたら、水面下では、きちんと動いていたようである。雪斎は、米国が示してきた「日本+α」案こそが日本の「本音」に沿うと思っていたけれども、この方向で物事が動くのであれば、結構なことであろう。この国連安保理再編の話は、「何年も付き合った彼女がいる男の前に、『理想の女性』が現れたら、どうするか」という問いに似ている。今までは、「大人の対応」をしていたのであるけれども、今後は、どうするのであろうか。
 下掲の論稿は、『中央公論』(2005年10月号)に載ったものである。我が国は、「仮面」ではなく「素顔」で語ることに方針を転換できるのであろうか、もし、そのような身も蓋もない豹変に我が国が踏み切ることができるのであれば、雪斎は、それを大いに支持する。「機」には乗じなければならない。

  □ 「時評2005」欄原稿 「仮面」のG4案と日本外交の行方
 国連安保理再編協議に際して、我が国は、独印伯三ヵ国との提携の下、「実質上、日独印伯四ヵ国にアフリカ二ヵ国を加えた分の常任理事国枠を増やす」という趣旨のG4(日独印伯四ヵ国グループ)案を提示しながら常任理事国入りを目指してきたけれども、我が国の方針は、暗礁に乗り上げたようである。G4と独自の再編案を示したAU(アフリカ連合)との調整は、AU内部での対立によって進展していない。我が国は、当初は七月中にG4案を国連総会で採択することを目指していたけれども、その目途は依然として立っていない。
 振り返れば、我が国が常任理事国入りを模索した折りに真っ先に示された論理とは、国連分担金の拠出実績などを事由にして、たとえていえば、「特等席の運賃を支払っているのだから、二等席ではなく特等席を占めるのは当然である」というものだったはずである。事実、北岡伸一(国連代表部次席大使)は、「日本は常任理事国になっているのが当然なのであって、現状は差別を受けているといって過言ではない。常任理事国入りは、この差別を是正するだけのことである」と書いている。そして、その論理は、たとえば「代表なければ課税なし」の標語を掲げながら対英独立運動を進めた歴史を持つ米国にとっては、誠に受け容れやすいものであったろう。それ故、米国政府が安保理再編案として示した「日本+α」(日本を含む二、三ヵ国のみを常任理事国として加える)案は、我が国が推し進めたG4案の展開を結果としては阻むものであったとしても、我が国の「本音」には明らかに沿うものであった。その意味では、米国の「日本+α」案は、我が国の「素顔の告白」を期せずして代弁するものであったとも評されるであろう。
  しかし、我が国が実際に展開してきた戦略は、「二等席の運賃しか支払っていない客が特等席を占める」事態を容認した上で、「二等席の運賃しか支払っていない客」の支持を背景にして事に臨むというものであった。特にアフリカ諸国が「拒否権付きの常任理事国議席」の獲得を模索する様子は、米国政府には、「二等席の運賃しか支払っていない客が特等席と特別な給仕を要求している」ように映ったことであろう。米国がG4案に難色を示したのも当然である。然るに、G4案それ自体は、「特等席の運賃を支払う客が特等席を占める」という我が国の当初の論理とは明らかに矛盾するものであったけれども、我が国は、G4案を通じて幾多の国々の支持を獲得するという政治的な考慮を優先させた。我が国が自ら「日本+α」案を示しても、それは広く受け容れられるものではないと判断されたのである。G4案は、我が国にとっては紛れもなく「仮面の告白」であったのである。
 目下、安保理再編協議に向けた我が国の戦略が不如意を来たしているのは、我が国の「仮面の告白」としてのG4案と「素顔の告白」としての「日本+α」案との間に、断絶が生じているからである。「どのような安保理の有り様が望ましいか」という展望と「どのようにすれば常任理事国の席を得られるか」という展望は、明らかに次元を異にしているけれども、この二つの「展望」の中で、我が国は身動きが取れなくなっているのである。
  この「仮面の告白」と「素顔の告白」の断絶は、率直にいえば越え難い。ただし、筆者は、我が国が国連という枠組を重視し続ける限りは、そうした断絶を諒解した上で、G4案の基本線を押し通すより他はないと考えている。我が国は、独印伯三ヵ国やアフリカ諸国との協調という「仮面」を付して事に臨んできた以上、その「仮面」を現在に至って脱ぐわけにもいかない。そのような振る舞いは、独印伯三ヵ国やアフリカ諸国からの信頼を失う事由になる。むしろ、我が国は、たとえば将来には間違いなく大国の地位を得ると目される印伯両国との現下の提携を「縁」にして、この両国との「特別な関係」の構築に早急に乗り出すべきであろう。我が国にとっては、G4案に拠る常任理事国入りは、確かに困難を極めているかもしれないけれども、我が国が安保理再編協議の過程で打った布石は、将来に至るまで様々な影響を残すことになる。そうした影響を読みながら様々な布石を打って置くのは、我が国の今後の対外政策の幅を拡げる意味でも大事な配慮である。というのも、安保理常任理事国入りは、我が国の対外政策上の「悲願」であるかもしれないけれども、決して「最終目標」ではないからである。
    『中央公論』(2005年10月号)掲載

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Comments

興味深い動きですね。そもそも、国連なんて「賛成か反対か全世界に聞いてみたい!」なんて解散もできない機構なので、改革のモメンタムなんぞあてにしないで見ていました。しかし、物事は変えることが大事ですし、国益を最大限反映させるのが国連の現実でしょうから、「身も蓋もない」転換に期待したいです。

Posted by: 副会長 | October 25, 2005 at 09:43 PM

読売新聞といえば夕刊に顔写真入りで雪斎殿が紹介されている記事を見ました。

Posted by: 星の王子様 | October 26, 2005 at 02:55 AM

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