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October 17, 2005

POLICY PLANNING ADVISOR

■ 雪斎の名刺の裏面には、〈POLICY PLANNING ADVISOR TO REP.KAZUO AICHI〉と記されている。雪斎が以前、この国家公務員特別職の立場を得ていた折に、〈POLICY PLANNING ADVISOR〉と英語標記することを決めたのである。実は、昔日、この政策担当秘書には、定まった英語標記がなかった。それ故、〈POLICY SECRETARY〉、〈LEGISTLATIVE ASSISTANT〉、〈POLICY AIDE〉といったように、様々な英語標記の「政策担当秘書」が存在していた。
 雪斎は、政策担当秘書に要請される活動の性格に照らし合わせるならば、その英語標記は、〈POLICY PLANNING ADVISOR〉にしかならないはずだと思っていた。イメージとしては、〈National Security advisor〉「国家安全保障担当補佐官」という肩書きを持ったヘンリー・A・キッシンジャーのものである。日本でも、「内閣総理大臣補佐官」〈SPECIAL ADVISOR TO THE PRIME MINISTER〉という官職が出来上がっている。
 

 この様々な英語表記は、政策担当秘書という職務に対する世のイメージが、ばらばらであった事情を如実に物語っている。だからこそ、「給料の高い秘書」と扱われて給料が詐取される事件も、起こったのである。雪斎は、、〈POLICY PLANNING ADVISOR)と表記された場合の政策担当秘書に要請される活動の領域には、次の三つがあると思っている。
 ① 政策それ自体の有効性や難点を解析しながら、政策を練り上げる。
  : その政策は、どのような効用を持つのか。
  : その政策は、どこを変えれば、さらなる効用を見込めるのか。
 ② 政策に対する世論の反応などを解析する。
  : その政策に対するメディア(新聞、雑誌など)の反応は、どのようなものか。
  : その政策は、どのような層(政党、利害関係団体…)から、支持され、あるいは反対されているのか。
 ③ 政策を打ち出した場合の政治的な得失を勘案する。
  : その政策を支持、あるいは反対することは、当の政治家の立場を強め、声望を増すことに結び付くのか。
   ・ その判断の結果、どの層の支持が離れ、あるいは新たに加わるのか。
 この内、政策担当秘書の活動として大事なのは、②と③である。①は学者、ジャーナリストにも手掛けられるものであるし、むしろ、そうした人々にこそ相応しいものであろう。ただし、ただし、②と③は、学者、ジャーナリストには期待できない領域の活動である。そして、②と③の領域の活動の大事さを痛感させられたのは、たとえば此度の「郵政政局」である。「郵政政局」の際、たとえば「造反」という選択のプラス・マイナスを「造反議員」に客観的にして冷静に説く側近の存在は、確かに必要だったはずである。これは、関ヶ原の戦いに際して、寝返りを逡巡した小早川秀秋に対して「決断」の利害得失を説いた平岡佐渡のような役回りである。こうした役回りを担うのも、政策担当秘書なのである。
 政策の立案と遂行、広い意味での政治という営みは、登山と趣きが似ている。登山の目的は、「山頂到達」(政策実現)であるけれども、それに至るまでには、登るべき山(政策目標の設定)の選定から始まり、登頂ルート(政策遂行の手順)の選定、装備(資金・スタッフ))の調達といった過程を経なければならない。そして、登山家(政治家)は、一合目から地道に体力(政治的な実力)と足許〈支持勢力・反対勢力の強弱〉に気を付け、気象変化(国際環境・世論動向)に注意しながら登っていかなければならない。そうした「登山」の随伴者を務めるのが、「政策担当秘書」の仕事なのである。
 学者やジャーナリストを初めとして広く論壇と呼ばれる空間に身を置く人々の多くは、特に日本では、そうした「登山」の現実を知らないし、知ろうともしない。そうであればこそ、「頂上まで一気にヘリコプターで乗り付けてしまえ」といった類の粗い議論が、横行することになる。彼らは、「登山」の様子をテレビ画面を通じて見ながら、気楽に論評しているのである。国際平和の実現のために「核兵器廃絶」を唱えた昔日の左翼知識層も、北朝鮮に絡む問題の解決のために「対朝経済制裁の発動」を唱える右翼知識層も、その点は何ら変わりがない。
 結論からいえば、政策担当秘書というのは、「永田町」ではかなり大事な仕事である。この制度が〈POLICY PLANNING ADVISOR〉として定着した暁にこそ、この国の政治の風景も変わるのではなかろうか。

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Comments

雪斎殿のいわれる政策担当秘書が、当の代議士と浮沈を共にするということであれば、官僚と区別できますね。

Posted by: ちびた | October 17, 2005 at 04:02 PM

連投で失礼いたします。延滞債務を二つ返済し、あと2ヶ月で権利が消滅してしまうオプションを行使すべく、邁進中といいたいのですが、正直なところはよれよれです。よれよれの癖に連投しているじゃないかと言われると、困るのですが。

この記事を拝見して私が知識人層とは無縁であることを自覚いたしました。なぜなら①は教科書的で②、③のプロセスの方に興味をもってしまいます。空理空論を唱えている方々はどうでもよいのですが、政策プロセスの分析をしている方が、②、③に本当に無関心だとすると、深刻だと思います。

ただ、政治学に疎いのでわかりませんが、②と③は検証の方法が難しいので既存の手法では限界があるのでしょう。イノベーションが不可欠だと思います。といっても、多様なルートから情報を収集し、矛盾する情報の中から、適切な判断をするのは意外と難しいという気もいたします。

雪斎先生には大きな「ビジネス」・チャンスかな、なんて思ったりします。

Posted by: Hache | October 19, 2005 at 02:24 AM

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