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September 13, 2005

「祭り」の後に…

■ 昨日未明以降、愛知和男氏の復活当選に関して、様々な方面から祝意を表して頂いた。一昨日深夜のエントリーにコメントを寄せて頂いた皆さんをはじめ、多くの皆さんには謝意を表する。皆さん、ありがとうございます。

■ 昨日夕刻以降、都内で「さくらの会」に加わる、集まったのは、かんべえ殿ぐっちー殿さくら殿やじゅん殿、とある雑誌編集者T氏、そして雪斎であった。もともと、さくら殿「慰労会」企画であったはずが、時節柄、大放談会と相成る。いやはや楽しかった。そして、雪斎は確信する。此度の選挙は、日本の「政治評論」の質をも暴露した。メディアの世界に「製造物過失責任法」が適用されるならば、賠償を請求される会社は続出する。マス・メディア関係の人々は、自らの「危機」を自覚すべきかもしれない。

■ 後世、この選挙の意味を考える時に言及されるキー・アイテムは、「森喜朗のミモレット」であろう。あの森前総理が「干からびたチーズ…。噛めないのだよ…」と評したフランス産高級チーズである。
 雪斎は、次のような仮説を立ててみる。
 「どうやら、ミモレットが売れ始めた瞬間が、世の人々の意識の『潮目』であった…」。

 ここで、森前総理がミモレットとシンハー・ビールを片手に記者団の前に現れた八月六日以降、「ミモレット」がどのように伝えられたかを拾ってみる。
 □ 小泉首相が出した「ひからびたチーズ」、実は高級品?「日本経済新聞 」(2005年8月15日)
 □首相、森氏と関係修復?選挙後に「ごちそう」約束「日本経済新聞」( 2005年8月25日)
 □森氏の「干からびたチーズ」大人気「スポーツニッポン」 (2005年9月3日)
 どうやら、「潮目」は八月後半に来ていたようである。「何故、ミモレットは売れたのか」。このことを考えることは、「都市部における自民党の完勝」を呼んだ人々の心理を占う上では、興味深い考察ができるテーマである。たとえばアイドル歌手や俳優ならば、「○○さんお気に入りのチーズです」という話が伝われば、そのチーズをほしがる人々が出てくる。しかし、ミモレットを手にしていたのは、在任中は気の毒なほどに人気のなかった森総理であった。どうして、こういうことになったのか。
 これに関連して思い出すのは、1991年の東京都知事選挙である。この選挙では、小沢一郎幹事長の采配で自民党が現職の鈴木俊一知事を公認せず、NHK報道局長・NHK特別主幹の磯村尚徳氏を公認した。これに自民党東京都連が反発し、事実上の分裂選挙となる。結果は、鈴木氏が当選した。小沢氏は幹事長を辞任した。この選挙戦中、東京都民の支持を磯村氏から離れさせる上で決定的であったのは、磯村氏が銭湯で他の客の背中を流すシーンが、テレビ画面に映ったことである。このシーンは、「ファッショナブルな国際派」という磯村氏のイメージを瓦解させた。一説によれば、この銭湯のシーンには、「庶民性」を演出しようという小沢氏の意向が働いたとされているけれども、これほど、「東京人」の心理が判らない演出もない。当時、バブルの残り火があった時期fであったから、磯村氏には、華やいだ表情で「東京はパリにならぶ『花の都』だ」と語ってくれれば、人々の共感を集めることができたはずなのである。東京は、少なくとも近代以降は、「バタ臭さ」、「華やかさ」に憧れた人々が築いた空間であった。
 そういえば、太田裕美さんが歌った「木綿のハンカチーフ」(松本隆作詞・筒美京平作曲)には、次のような一節がある。

恋人よ いまも素顔で
口紅も つけないままか
見間違うような スーツ着たぼくの
写真 写真を見てくれ
いいえ 草にねころぶ
あなたが好きだったの
でも 木枯しのビル街
からだに気をつけてね
からだに気をつけてね

恋人よ 君を忘れて
変わってく ぼくを許して
毎日 愉快に過ごす街角
ぼくは ぼくは帰れない
あなた 最後のわがまま
贈りものを ねだるわ
ねえ 涙拭く
木綿のハンカチーフ下さい
ハンカチーフ下さい

 もし、森総理が手にしていたのが、ミモレットではなく、地方名産の「するめ」であったとしても、その「するめ」が品薄になるまで売れるとは思えない。ミモレットは、「都会の人々」が持つ「バタ臭さ」、「華やかさ」への潜在的な嗜好を確実に刺激した。しかも、ミモレットは、高級チーズとはいっても「手頃な値段」で買えるものであったのである。これは、「小泉総理が肴にしたチーズ」に転化して、自民党への「風」になったといえるであろう。
 自民党のメディア対策の前線指揮官であった世耕弘成氏も、選挙結果大勢判明後、同僚議員とミモレットを肴に飲んだのだそうである。「ミモレット」は、小泉自民党を支持した人々の「お洒落な連帯のアイテム」になったのである。これは、誰かが意図して行った上での結果ではあるまい。「時代の流れ」が、ミモレット人気を呼んだということであろう。

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「国内政治」カテゴリの記事

Comments

雪斎殿
こちらこそたいへん楽しかったです。お世話になりました。しっかし、ミモレットですね、本当に。あれがするめや柿ピーだったら面白くないですもんね。新しい時代という演出だったとしたら凄いんですけどね。
また、今後ともよろしくお願い致します。

Posted by: ぐっちー | September 13, 2005 at 09:18 AM

昨日は楽しい時間をありがとうございました♪
やっぱりミモレットが流れを変えたんですね。「森先生がミモレットを持っていた」というのがまたよかったんですね。
ところで、永田町にはいつ戻られるんでしょうか??→煽動(笑)

Posted by: さくら | September 13, 2005 at 11:36 AM

雪斎氏の論壇での「確かさ」が前進してよかったと思ってます。

しかし、知識人ってのは、やっぱり高級な雰囲気に憧れるものなのでしょうかね。ちびたはミモレットには是非シャトゥーヌフ・ドゥ・パプを合わせていただいて欲しいと思います。

ちびたは両切りのタバコ咥えながらワインをコップで呑むような下衆ですので、チーズも果物ナイフで突き刺して喰っちまいます。ですので味は分かりません。

ところで、マスコミVSブロガーの構図はますます鮮烈になりますね。ニューヨークタイムスやフィガロのようなニヒルで決して発行部数を誇らない高級紙が日本からは産出されないのですかね?(ちびたは外語は判んないのですが)やっぱり格調高い日本語の文章は紙ベースで読みたいものです。

Posted by: ちびた | September 13, 2005 at 12:14 PM

なんと、この「極悪非道」会には「さくらの会」
って名前がついてましたか、名前に全然そぐわ
ないような話が飛び交ったんでしょうなぁ(笑

Posted by: おおみや%NEET | September 13, 2005 at 05:09 PM

ミモレットと森前首相がいろいろな人を目覚めさせた訳ですね 森さん首相でなくなってから多方面でご活躍 TVで役者としては2流だなと御自分ではいわれていたが、時と人を得、まさしく強運の人、小泉首相の人生劇場が展開したというところでしょうか

Posted by: 星の王子様 | September 13, 2005 at 11:18 PM

雪斎さん

昨日はお疲れではなかったでしょうか。どうもありがとうございました。
また日本映画のお話などお聞かせ下さい。米国では『座頭市』などの武士道ものの他、70年代~80年代初頭のカラテアクションもの(千葉、真田、倉田など)がマニアの間で人気で、私もうぶな米国人の若者を相当啓蒙したものでした(笑)。

Posted by: やじゅん | September 14, 2005 at 01:19 AM

選挙が終わってから、なんだか妙に深刻になってしまいました。

小泉シンパの私としても気になるのがやはり「勝ちすぎ」。
個人も組織も、何らかの「危機感」や「脅威認識」があってこそ健全さを保てるはずですが、もはやそれはない。
緒戦に大勝利をおさめたWW2の帝國陸海軍のようにならないよう、そればかりを願います。

もっとも、「地滑り」の規模においてはブレアのような先例もあり、小選挙区制においては「想定の範囲内」だったのでしょう。教科書的な知識ですが、これも「世界標準」ということでしょうか。
(ブッシュはブレアに「地滑り君」という渾名をつけているようですから、小泉さんは「地滑り君2」とか呼ばれるかもしれません。そんなわけないか。)

となればさしずめ次の脅威は「将来において民主党(存続してれば)が起こすであろう地滑り」しかないでしょう。自民党に起こったことは民主党にも起こりうるわけで、自民党に対抗し得る政策軸を鮮明に打ち出し、そして「ブレ」なければ「次の内閣」は現実化する可能性が高いわけです。

自民党の弛緩を戒めて健全さを維持し、「改革の流れを止めない」ために絶対必要なのは、「民主党の反転攻勢」だと思います。

そういうわけで、大嫌いな民主党ですが、せめてこの危機をチャンスに変えて欲しい。一致団結して足腰の強い健全な政党に生まれ変わって欲しい。
しかし、聞こえてくるのは内紛、分裂、瓦解の噂ばかり。干からびたスルメみたいな党首をかつぐ話まで出てきて、かわいそうになってきます。2年後の参院ですら危うい空気が漂っています。自民、民主両党のために哀れです。


雪斎先生、そういうわけで自民党のためだと思って、「民主党再生のための処方箋」を分析していただけないでしょうか。
「民主党が自民党にとって最も脅威となる次の一手」を予測することは、ポスト小泉のための「その先の一手」を用意することになります。決して「反党的行為」とはならないと思いますがw

Posted by: 雪風 | September 14, 2005 at 05:06 AM

>雪風さん
「民主党再生のための処方箋」は面白そうですね。
雪斎さんだけじゃなくて、いろんな方々が処方箋を作って自分のブログやページに発表すれば、色んな視点が出てきて面白いと思います。
自分でも暇があったら考えてみようかな。

Posted by: Baatarism | September 14, 2005 at 12:29 PM

あぁ・・・わたしも雪斎さんの「民主処方箋」または、「対抗できる政党とは」を読みたいですね。

雪風さんが仰るように「干からびたスルメ」の再登場は勘弁な気持ちです。

Posted by: 名無し@政経オタ | September 14, 2005 at 12:45 PM

>雪風様
 例の三次元立体(8/31付けエントリー)の
xz平面をとると、民主党の政治家は、その
全てに分布し、それぞれが一定の勢力を
有しております。よって、次の選挙で今回の
ような戦略を自民党がとってきた場合には、
また党内事情で対応がswingしてしまうハメに
陥ることでしょう。となると、今回のland
slideの反動以上のものは期待できず、政権を
とれない状況はつづくと思います。
よって今彼等に必要なのは「解党的出直し」の
六文字から「的」の一文字を取り除いたものです。
分裂の軸はx,y,zどれでも、分裂時の
情勢に応じてとればよいでしょう。

Posted by: おおみや%NEET | September 14, 2005 at 10:47 PM

皆様、ありがとうございます。
御要望の「民主党」再生案ですが、これは後に用意します。「敵に塩を送る」風情になりますが、これは考える価値があります。
尚、「国民は愚かな選択をした」といいたげな論がありますが、こういう議論ぐらい、民主党の再生に邪魔なものはない。問われているのは、日本の言論の質でもあるといういうことは理解されるべきでしょう。

Posted by: 雪斎 | September 15, 2005 at 12:34 AM

はじめまして。宵の明星と申します。愛知和男でぐぐっていたらここにたどりつきました。まずは当選めでたしです。

ところで民主党の惨敗ですが、わたしは今回の選挙はだれが党首であっても負けたであろうと思っています。ですからあまり戦術的なところで反省してもどうだかな~という気がするのです。

自分は政治的にはノンポリで典型的無党派ですが、その自分がなぜ自民にいれたか?ということを考えてみるとそういう結論になるのです。一言で言うと

小泉! おまえそこまで啖呵切るならもう一度チャンスやるからやってみろ!

ということなんですよね。そして私が思うに多くの国民はこう考えたのでは・・・

ここで小泉に負けさせると(すなわち民主党政権ができた場合)結局小泉を(国民は)一番やりたいことをさせずに終わらせることになってしまうのではないか? 

まあこれだけではないのですが、そういった思考回路が働いたよおうに思えます。

で、最後に。私は選挙前に「易」をたててみました。
結果は自民党は「天火同人」。民主党は「山水蒙」でした。「天火」とは、改革の意思を火とみて、その炎が天に届く卦ですから願望成就。「山水蒙」の「蒙」は啓蒙の蒙。いかにも岡田さんが国民をかんでふくめるように説いていった姿と重なりますが、勢いは弱い卦なのです。

ではまた!

Posted by: 宵の明星 | September 15, 2005 at 11:58 PM

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