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September 09, 2005

「試薬」としての愛知選挙区

■ 投票日二日前である。色々な情勢分析記事が飛び交っている。「なるようになるのだろう」という心理状態になるのが、大概、この時期である。投票日前日は、一転して恍惚状態に至るのだが…。本日は、「趣向」を変えて、次の「共同」配信の記事を考えてみる。
  □ トヨタ、自民支援に本腰 経営トップら集会に続々
 ≪「王国」民主に危機感≫
 日本企業最高の業績を誇るトヨタ自動車の経営陣が、おひざ元の愛知県で、衆院選での自民党支援を本格化させている。奥田碩(おくだ・ひろし)同社会長が率いる日本経団連の自民党支持表明の影響もあり、連日の閣僚や自民党首脳の来訪に合わせ、経営トップらが続々と集会に参加。対する民主党は、前回衆院選で県内15の小選挙区中、10区を制した「民主王国」が切り崩されかねないと危機感を募らせている。
 「小泉改革は成果を上げている」。6日、トヨタ本社がある愛知県豊田市で開かれた自民党候補の集会。応援に駆けつけた小泉純一郎(こいずみ・じゅんいちろう)首相に先立ち、前社長である張富士夫(ちょう・ふじお)副会長は自らマイクを握ってこう強調。その後開かれた別の演説会場には渡辺捷昭(わたなべ・かつあき)社長も出席した。
 選挙期間中同社は、役員らが手分けして県内の自民党候補集会に顔を出すなど積極的に動いている。地元のある市議は「総務担当の社員が企業回りに付き添ってくれるなど、大変尽力してくれている」と明かす。
 かつてトヨタは政治とは一線を画す主義とされた。だが今回は、経済財政諮問会議のメンバーとして小泉改革を後押ししてきた奥田会長が自民党支持を公言。創業一族で、中部経済連合会会長を務める豊田芳年(とよだ・よしとし)・豊田自動織機名誉会長も会員企業に自民党支援を依頼。「利益1兆円企業」として産業界を代表する存在や責任の重みをにじませた。
 約27万人のグループ労組をバックに対抗する民主党候補陣営も、トヨタ経営陣と自民党の蜜月を「脅威だ」(幹部)と警戒感を示している。

 雪斎が注目する選挙区は、実は愛知県全選挙区である。記事にも言及されているように、民主党は、前回総選挙では愛知県内15小選挙区中、10区を制した。比例復活を含めれば候補全員が当選を果たした。こうした「民主王国」が、どの程度まで保持され、あるいは切り崩されれていくかが、一大関心事である。
 今年の初め頃、かんべえ殿を初めとして多くのエコノミストの人々が指摘していたのは、「名古屋の元気」であった。「中部国際空港」、「愛知万博」、「名古屋嬢」、「ドラゴンズ」といった具合で、日本で最も羽振りのよい空間tと認識されたのが、名古屋近辺であったのである。こうした空間で人々の心を掴むのは、「…あきらめない」といった逆境を耐えるかのようなメッセージではなく、「イケイケ」のメッセージであるはずである。雪斎は、率直にいえば、「日本経済の復活」が先行した空間で、民主党がどれだけ議席を維持できるのかには、かなり関心がある。「失われた十年」の最中に結成された民主党は、実は「好況」の時期を一度も経験したことがない政党なのである。
 因みに、民主党色が濃いとされる「中日新聞」の分析によれば、情勢は「自民有利10選挙区、民主有利5選挙区」という雰囲気らしい。この分析記事の結果は、「アナウンス効果」狙いという解釈もあるだろうけれども、少なくとも「民主党の牙城」がもはや安泰ではないという現実だけは明瞭に表している。

>> 左側優勢
> 左側有利
≧ 接戦(わずかに左側有利)

1区  自・篠田≧民・河村
2区  民・古川>>自・岡田
3区  民・近藤>自・馬渡
4区  民・牧≧自・藤野
5区  自・木村>民・赤松
6区  自・丹羽>民・前田
7区  自・鈴木≧民・小林
8区  自・伊藤≧民・伴野
9区  自・海部>>民・岡本
10区 自・江崎>民・杉本
11区 民・古本>>自・土井
12区 自・杉浦>>民・中根
13区 自・大村>民・島
14区 民・鈴木>自・杉田
15区 自・山本>>民・森本

 トヨタの首脳が自民党支持を打ち出したということは、「愛知の元気」を象徴する企業が小泉現内閣の路線を支持したということを意味する。日本では、「労」と「使」とは対立しないというのが一般常識であるから、「愛知の元気」は、「労」にも恩恵を与えていよう。
 本日、トヨタの株価は、年初来高値を更新した。これが、愛知県の有権者に、どのような心理的な影響を及ぼすであろうか。やはり、「気分はイケイケ」なのではなかろうか。

■ 明日発売の『中央公論』10月号では、「ブログ・ハンティング」というコーナーが新設され、拙ブログとかんべえ殿のサイト『溜池通信』が紹介されている。「大正デモクラシー」の舞台だった老舗雑誌に、ブログの話である。「民間」は、何時でも変化を模索している。

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Comments

はじめまして。
そういえば、山口組の新しい組長も確か愛知でしたね。

Posted by: Sanzo- | September 09, 2005 at 05:17 PM

ありきたりですが、地元の反応はまちまちです。「万博が終わったら、どうかねえ」とか「よそはそんなに悪いのか」とか。景気が悪いと感じている人は少ないでしょうが、メディアが報道するのは、やむをえないでしょうが、断面にすぎません。尾張人は将来に対して神経質です。よって貯金に熱中する。三河人は過去・現在・未来の認識が辛い。ただ、底割れしにくい土地柄ではあります。基本的には田舎です。

昔は労組の力が強くて日頃は組合の悪口ばかり言っている人でも春日一幸が職場に来て握手してくれたというだけで民社党に入れてた時代もありました。今度の選挙の結果次第ですが、時代が変わったんだなあと思います。

個人的には地味な浜松がおもしろいです。「景気はどう?」と尋ねると、「西武もでてっちゃうし大変」という反応。しかし、繁華街を歩くと意外と繁盛している印象です。三河でも豊橋あたりから浜松に人が流れているようでけっこう景気は悪くない様子。横断歩道の代わりに地下道をつくったのは合理的ですが、街を歩く楽しみを減らしてしまうのは相変わらずです。いま一つ垢抜けないのですが、緑が多くて田舎者にはたまりません。「住むんだったら浜松が一番」というと相好が崩れるのは遠州人気質か。

期日前投票を済ませましたが、総務省の広報誌が苦労を感じさせます。投票日までのテレビ番組表なんですが、けっこう余ってて困っている様子でした。それでも、責任者と思しき人の話では前回と比べて多いとのこと。接戦が多いだけに出口調査では各局とも苦戦するでしょう。

Posted by: Hache | September 09, 2005 at 08:03 PM

あらら、中央公論、軽く眼を通したつもりだったのに気がつかなかった。後でもう1回見よ。

Posted by: かんべえ | September 10, 2005 at 05:59 PM

トヨタのおえらいさんの実力、とくと拝見
させていただきましょうか。議席数を逆転
できないと、彼等の経済界活動に影響がある
かもしれません。

Posted by: おおみや%NEET | September 10, 2005 at 11:52 PM

結局自民の9勝6敗ですな。切り崩し可能な雰囲
気を、トヨタのお偉方はうまく利用できたようです。
さすがですな。さっぱり空気を読めずに大敗北
食らったどこかの代表とは一味も二味も違います。

Posted by: おおみや%NEET | September 12, 2005 at 04:21 PM

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