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August 25, 2005

2005年夏、日本政治の対立構図

■ 衆議院解散直後、 『ザ・タイムズ』紙の《High noon in Japan-Japanese voters should back Koizumi 》という記事を配信した。この記事には、次の一文がある。
 The debacle in the Diet puts Japan at a crossroads: the choice between smaller government or the old-style high-spending big government.
 確かに、此度の総選挙は、「大きな政府」か「小さな政府」かの選択を争点とする。しかし、この争点設定が単純だと評する向きは確かにある。此度の総選挙の構図は、どのようなものかl。
 これを考えるために、下のようなマトリックスを示してみる。丁度、八年程前に雪斎が雑誌「諸君」に発表した論文で示したコンセプトである。こたびの総選挙の意味を説明する上でも有用であろう。

 〇 「55年体制」下の構図

             強い政府
               |
               |
            B  |
               |
  大きな政府 ---------------- 小さな政府
               |
            A  |
               |
               |
            弱い政府

 「55年体制」下の我が国の政治情勢は、この構図では次のように説明される。
 A-社会党、共産党、公明党の大勢
 B-自民党、民社党
 二日前のエントリーでも書いたように、昔日の自民党と社会党の「五五年体制」には、「大きな政府」を前提とした「談合体制」という側面が多分にあったけれども、郵政民営化法案審議の過程でも明らかになったように、特定郵便局に支持された自民党と労組に支持された社会党は、「大きな政府」を指向していることには変わりがなかった。対立が尖鋭になるのは、安全保障政策絡みで「強い政府」の対応が要請された時だけであったのである。「強い政府」は、憲法改正、有事法制整備といった課題に眼を向けるものであるけれども、「55年体制」下では、そうした動きは、具体的には進まなかったのである。

 〇 「55年体制」崩壊後のの構図

            強い政府
               |
               |
            B  |  C
               |
  大きな政府 ---------------- 小さな政府
               |
            A  |  D
               |
               |
             弱い政府

 1993年の「55年体制」崩壊時の我が国の政治情勢は、この構図では次のように説明される。
 A-社会党、共産党、公明党の大勢
 B-自民党、民社党
 C-新生党
 D-日本新党、新党さきがけ
 1993年、「55年体制」崩壊前夜、日本新党などに主導された「改革」の動きは、「大きな政府」か「小さな政府」かという対立軸を明確に出現させた。細川護煕内閣の性格は、「CD+A」三層連合内閣と呼ぶべきものであったのである。その後、小沢一郎氏の政治手法への反発から、A、D両層が離反し、自民党は、そのA、D層を巻き込む形で、「ABD」連合の枠組の下、「自社さきがけ」政権を発足させた。
 この構図で2005年8月現在の政党の「色彩」を説明しようとすると、次のような具合になる。
 A― 社民党、共産党、民主党(横路孝弘系)
     自民党(加藤鉱一、河野洋平)、公明党の大勢
 B― 自民党(旧橋本派、旧中曽根派)
     民主党(旧民社系)、国民新党
     田中康夫を除く新党日本
 C― 自民党(小泉路線同調系)
     民主党(鳩山由紀夫系、小沢一郎系)
 D― 民主党(菅直人系、岡田克也系)、田中康夫
 この構図で説明する限り、此度の総選挙の対立構図は、〈C vs A+B〉という具合になる。民主党内に存在するD層(郵政民営化支持層)は、本来はC層に同調してもよかったよかったけれども、結局、動かなかった。さらにいえば、「普通の国」を標榜する民主党内C層(小沢一郎系)は、自民党内C層と政策指向上の差異はないけれども、小沢氏は今では「政策の人」ではなく、「政局の人」として動くようになっている。民主党内C、D両層が労働組合の影響力の強いA、B両層に引き摺られたというのが、此度の民営化法案反対の事情を説明していよう。現在の民主党に「旧態依然」としたイメージが付いてしまったのは、故なきことではない。C層(小泉総理に率いられた自民党〉が、AB両層(民主党)とB層(「造反組」新党)に対峙しているのが、現在の様相である。
 尚、「B-D」連合という政策上、あるまじき枠組で結成されたのが、新党日本である。政策的には明らかなD層である田中康夫氏とB層主体の他の議員(小林興起氏・荒井広幸氏)とでは、政策指向上の一致点は何もない。結局、これは、C層(小泉路線同調層)に対する反発だけを「絆」とする政党なのである。過日のエントリーで、「国民新党よりもましかもしれない」と書いたのは、雪斎の不明であった。兎にも角にもB層の政党である国民新党と比べれば、新党日本は、はるかに存在意義の希薄な政党といわねばなるまい。
 このように見れば、我が国の過去十数年の政治の風景は、小沢一郎氏が打ち出したC層の政策指向を前にして、それを推し進めるか、押し止めるかのせめぎあいを映し出してきたといえるであろう。小沢氏は自民党から離れたC層として、結局は多くを成すことができなかった。小泉純一郎総理は、自民党の大勢をC層に誘導して自らの政策を断行してきたのである。
 雪斎は、十二年前、小沢一郎氏が率いた新生党で政策担当幹事を務めた愛知和男氏の政策スタッフとして社会人生活を始めた。当時の雪斎は、小沢氏の「普通の国」路線の熱烈な支持者であった。そして、雪斎は今、小泉総理の「構造改革」路線を支持している。雪斎は、C層指向の「政策屋」なのである。


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Comments

このマトリックスだと、現在の政権与党は自公連立なので、「A-C」連合というやはりあるまじき枠組みになってしまうと思うのですが。間に入るべき自民党のB層は今回の政変で追放するか無力化してしまったわけですし、D層は自民党にはいないですから。

Posted by: Baatarism | August 25, 2005 at 03:40 PM

・baatarism殿
正確にいえば、公明党のプロッティングは難しいのですよ。基本的には、平和と福祉への指向の強さからA層であるはずなのです。「児童手当を小学六年生まで拡充する」施策をだしたり素朴な平和主義を信条としたりしているところをみると、そのように判断されます。ただし、実際には、小泉路線に一貫して寄り添ったのも、公明党なのです。このマトリックスの原点にあるジョーカーみたいな政党が公明党かもしれませんね。

Posted by: 雪斎 | August 25, 2005 at 04:12 PM

非常にわかりやすい構図です。

さらにいえばこれに「親米か親中か」の外交軸が加われば、3次元マトリクスになりますね。

いずれにせよ、自民、民主の中に、違う象限の人々がたすきがけに混在してますので、あと数回程度の再編制は不可避といえるでしょう。

亀井・綿貫一派の粛清は、その収斂作用の一環であり、同じことは民主党でも必ず起こるはずです。

自民党が郵政民営化に賛成する野党議員に秋波を送り始め、小沢氏が岡田降ろしに出たなら、いよいよおもしろくなるのではないでしょうか。

1998年でしたか、栗本伸一郎氏が『自民党の研究』で小泉氏と小沢氏をキーに据えてましたが、軸線のブレないこの2人が、結局、政界大再編の枢軸を形成したのは非常に興味深いことです。

まことにエキサイティングな政治ドラマですね。

Posted by: 雪風 | August 25, 2005 at 05:05 PM

予想外に早く幣駄文集8/17付けの予想が的中
してしまったようで、正直驚いております。
そうなると

x軸:大きな政府--小さな政府軸
y軸:強い政府--弱い政府(=威信価値--福祉価値)軸
z軸:同盟重視--自立重視軸

という三次元立体ができてしまい、その中に、
各政党・政治家・言論人が分布してしまう
ことになるのです。
ここでこの三次元立体を構成するx,y,z軸の
うち、二つの軸をとって、その二つの軸で
つくる平面を考えて見ます。

(例)
・xy平面は本日の雪斎先生のエントリーに出てきた平面
・yz平面は2/5付けの雪斎先生のエントリーに出てきた平面

この平面に対して垂直になるように、平面の
上下から光を当てると、三次元立体一面に
分布している人々なり政党なりの影が、その
平面に映るはずです。かくして、雪斎先生の
おっしゃる分布図ができあがるのであります。
(この段落の一連の操作を射影と呼びます。)

かくして、

争点=選んだ平面(xy,yz)
分布図=三次元立体に分布する人々や組織
を、争点平面に射影したもの

ということになるわけなのですが、自分の政
治的信条に基づいた投票行動をおこなおうと
思うと、

1.三次元立体での自分自身と、各政党・政治家の座標を確認する
2.争点平面を適切に設定する
3.射影を行い争点平面における分布図を作り、
自分が属する象限(A,B,C,D)を確認し、最も
近いと思われる人に投票する

という手続きを踏むことになるのですが、上
記1,2の操作は難しいですね。ええ。特に、
外部の雑音に惑わされずに操作2ができれば、
十分高品質な政治系blogをやってけると思います(^-^)。

さて、自民党と公明党の位置づけなんですが、
上記xy,yz平面のどちらをとっても、A-Cの
政策上あるまじき組み合わせになるのです。
しかし、yz平面で見た場合、自民党にD象限
(強い政府・自立(アジア)重視)派がいることから、
この人士がA(弱い政府・自立重視)な公明党と
近寄ることが可能、と考えられるのです。
でも、このxy->yz平面の切り替えってのは、
言ってしまえば、争点のすりかえですから、
その意味において理解しがたいですね。

Posted by: おおみや%NEET | August 25, 2005 at 05:45 PM

>雪風様

こう考えてみると、争点の一次元化を図った
小選挙区制ってのは、政界再編にむけた余計な
手間を増やしてしまったのかもですね。

Posted by: おおみや%NEET | August 25, 2005 at 05:50 PM

・雪風殿
・おおみや殿
三次元マトリックスによる分析については、別にエントリーを用意しますので、よしなに。
これはやってみると、面白いですよ。

Posted by: 雪斎 | August 26, 2005 at 07:31 PM

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