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August 22, 2005

自民党は「都市の政党」たり得るのか。

■ 此度の選挙の争点は、郵政民営化の是非であるけれども、もう一つ問われるべき重要な論点がある。それは、自民党は、「都市の政党」たり得るかという点である。この場合、「都市の政党」というのは、「地縁、血縁、利害関係といったしがらみ」から離れた人々の支持を受けた政党という意味である。従来、「都市の政党」としての顔を示していたのは、自民党ではなく民主党であった。そうであるが故にこそ、投票率が上がれば苦戦するのは、民主党ではなく自民党であった。
 しかし、「投票率が上がれば負ける政党」というのは、政党の有り様としては、おかしなものであろう。民主主義体制の下では、いかなる政党といえども、「投票所に行かないでください」とは訴えられない。「投票率が上がれば勝てる」仕組みを構築しなければ、政党の有り様としては本物ではないのである。

 丁度五年前の夏、雪斎は、『月刊自由民主』に下掲のような原稿を載せたことがある。原稿中、言及された「今次総選挙」とは、2000年6月実施の総選挙のことであり、この選挙で大都市部で落選した「有力議員」には、雪斎が仕えた愛知和男氏も含まれていた。雪斎は、この選挙を機に「永田町」を去った。

   □ 都市型政治と自民党の課題・総論

今次総選挙に際して、民主党の三十二議席増加に対して三十八議席減少という結果は、客観的に見れば、自民党の敗北を示している。しかも、「一区現象」と呼ばれる現象の下、全国都市部の自民党候補は軒並み苦戦し、大都市部では、閣僚経験を経た少なからずの有力議員が、議席を失った。都市部での自民党の権力基盤は、確実に侵食されているのであるし、この現状に適切に手立てを講じなければ、今後、自民党が国政に責任を負う政党であり続けることは、率直にいえば甚だ心許ないであろう。
今後の我が国の政治は、客観的に見れば、当面、複数の政党が連立を組んで政権を担当するという構図の下で推移することになるのであろう。たとえ、自民党が比較第一党としての地位を維持し続けたとしても、昔日のように単独で政権を担当することは、難しいことになるであろう。国民の政治的な関心が多様になる中、そのような多様な関心を一つの政党が受け止めるのは、無理を伴うことであるからである。しかし、そうであればこそ、なおさら、政党の「個性」は、大事なものになる。もし、自民党が衆参両議院で絶対安定多数を確保し、単独で我が国の舵取りに責任を負うようになった暁には、自民党は、どのような政策を断行しようとするのか。そのような政策「目標」に裏打ちされた政党の「個性」は、国民の側に正しく伝わることが肝要なのである。
その意味では、今次総選挙前に「連立与党統一公約」を策定し発表するという振る舞いは、政党の「個性」を判り難くしたという点において、誠に賢明ならざるものであったのではなかろうか。それは、連立与党の結束の確保という内輪の論理によっては合理付けられたとしても、政策の選択肢を選ぶ一般国民には不親切なものであったに違いないからである。大体、現在の連立政権の下では、自民党が他の友党を無視して政治運営を行ない得ないというのは、誰にも判ることである。連立政権の政治運営が連立与党を構成する各党の拮抗と協調の産物であることもまた、誰もが知ることである。そうであればこそ、当初から、政党の「個性」を消した政策「目標」を示されるのは、一般国民には腑に落ちないものになる。おそらくは、自民党が少なくとも予見できる将来に至るまで我が国の政治に影響力を及ぼし続けるのは、疑うべくもないことであるとしても、「そもそも、自民党は、何を目指した政党なのか」という政党としての「個性」は、適宜、明示される必要がある。他の政党との妥協は、手段であっても目的ではない。そうでなければ、特別な人間関係といった条件によって投票行動を起こすわけでもない都市部の人々にとって、自民党の政党としての「選び難さ」は、加速することになるであろう。今次総選挙に際して、自民党が都市部で苦戦したことの背景には、この「選び難さ」が明らかに存在しているのである。
この点、自民党の今後の課題は、政党としての「個性」を明確に一般国民に示していくことである。就中、「都市の課題に際して、どのように臨むのか」ということは、意識的に提示される必要がある。そして、その際に留意されるべきは、「都市層」と呼ばれるもの性格である。従来、俗説として示されているのは、「都市層は変革を求めている」ということである。しかし、都市層とは、現在の我が国が実現した「快適にして豊かな生活」の恩恵を最も広範に享受してきたという意味において、本質的に保守的な層なのである。たとえ、都市層が「変革」を志向したとしても、それは、自らの「快適にして豊かな生活」が影響を受けないということを前提にしている。都市に関る政策を構想する際には、このような都市層の性格は、見誤ってはならないものである。
然るに、現下、安全保障環境や経済情勢の変化の中で、都市層は、自らの「快適にして豊かな生活」を今後も維持できるかということについて、不安を感じ始めている。もし、今後の自民党が「都市の政党」としての性格を保ち続けることができるとすれば、それは、この都市層の不安に適切に応えることができるかということに依るのであろう。自民党が「都市の政党」たるために手掛けられなければならないことは、色々と山積しているけれども、その基本線は、割合、単純なものなのである。
        『月刊自由民主』(2000年8月号)掲載
 
 小泉純一郎総理執政下の四年の歳月は、自民党にとっては、「都市の政党」に変貌しようと模索する歳月であった。自民党が、特定の利益集団の狭い支持に依らずに広く「無党派層」からも支持を集められる政党に変貌していくのは、一種の「実験」に他ならないけれども、その大いなる「実験」に一応の結果が示されるのが、此度の総選挙である。「小泉改革」以前、都市居住層の相当数を占める「無党派層」は、自民党にとっては、森喜朗前総理の曲解された言葉を借りれば、「寝ていてくれればいい」層に他ならなかった。しかし、此度の自民党は、「無党派層を布団から叩き起して、投票所に行かせる」戦略を採ったようである。自民党の「刺客」の顔ぶれが、ほぼ出揃ったけれども、その顔ぶれは、自民党の「無党派覚醒」戦略の中身を伺わせる。
 「無党派覚醒」戦略の具体策は、堀江貴文氏の実質擁立以上に、日本の「ベスト・アンド・ブライテスト・ウーメン」(最良にして最も聡明な女性たち)を前面に押し出したことに表れる。猪口邦子教授や佐藤ゆかり氏は、学歴や職歴を眼にする限り、「並みの男」では太刀打ちできない人材であるのは、間違いない。これは、「若い女性候補」を擁立し、「無党派層」に訴求しようとした従来の社民党や民主党の論理を完全に逆手に取ったものである。それは、真珠湾で日本の空母機動艦隊に煮え湯を飲まされた米国が、その後に大々的な空母建艦を通じて日本を圧倒した構図を思い起こさせる。社民党の福島瑞穂党首は、「刺客として、ヒットマンとして女を使うな!」 と絶叫していたようであるけれども、この演説ぐらい馬鹿な発言もあるまい。それは、「零戦」を無敵と信じて、後継機の開発に手間取った旧日本軍が、グラマンF6FやF8Fの出現を前に悄然としている風でもあるからである。社民党は、「女性の地位向上」を唱えるのであれば、何故、辻元清美氏のような「旧式戦闘機」ではなく、自民党が擁立した女性候補のような「新式戦闘機」を揃えられないのか。福島党首以下、そうしたことができない不明と非力を恥じるべきであろう。雪斎は、「無能なくせに自ら有能と信じ込んでいる女性」(代表的なのは…、新潟の大立者の娘かな)には虫唾が走るけれども、「本当に有能な女性」は大好きである。だから、此度の自民党候補のライン・アップは楽しいと思う。
 振り返れば、フランクリン・D・ローズヴェルトは、1932年の大統領選挙を契機に、WASPの労働者・中産階級・北部の黒人・中小の農民の支持の上で民主党との連合関係を構築し、それは、「ニューディール連合」、あるいは「ローズヴェルト連合」と呼ばれた。この連合関係は、久しく民主党の支持基盤として機能し、1960年代に民主党が黒人差別撤廃政策を進めて南部白人の離反を招くまで続いたのである。もし、自民党が、都市居住層や女性に支持基盤を移そうとしているのであれば、これは、自民党の「体質」を劇的に変えるものになるであろう。無論、この実験が「吉」と出るか「凶」と出るかは、定かではない。ただし、こうした「実験」を経なければ、自民党が「都市の政党」であることは無理である。
 変化に対応できない存在は、死滅する他はない。これは、個人であれ政党であれ、あるいは企業であれ、同じことである。
 尚、田中康夫知事を中心に「郵政造反派」による「都市型」新党が結成されたようである。この.「新党日本」と称する政党は、国民新党よりはましかもしれないけれども、一体、どこが「都市型」なのであろうか。

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Comments

国民新党の次は新党日本ですか。
かつての「新党ブーム」の時もそうでしたが、大部分の政治家にとっては「理念」ではなく「利害」が唯一の価値基準ということなんでしょう。

Posted by: yu_19n | August 22, 2005 at 01:55 AM

細かいことですけど。

>辻本清美氏のような「旧式戦闘機」

「辻元清美」です。
福島瑞穂も相当旧式でっせ。\(^_^)/
すみません。

Posted by: さぬきうどん | August 22, 2005 at 02:51 AM

これに関していえば、小泉総理の主戦論は、「民主党に流れていた浮動票の取り込み」だという説はネットでも一部で流れています。造反20選挙区の刺客などはあくまでも陽動作戦であり、本丸は民主党の浮動票を奪い、民主党を壊滅に追い込むことでしょう。自民の相手は、国民新党やら新党日本やらの泡沫政党でなく、あくまでも野党第一党の民主党です。亀井氏や小林氏が国政に戻って来ようが来まいがもう眼中にないでしょう。

小泉総理の目的は、造反選挙区を劇場化することで都市部の票を掘り起こし、都市部で雪崩的勝利を収めることでしょうね。造反で20捨てても都市部で50とればいいという考えだと思います。小選挙区というのはそういうダイナミズムを持っています。

Posted by: タカダ | August 22, 2005 at 02:53 AM

・yu-19n殿
此度の「新党」は論外ですね。
・さぬきうどん殿
訂正しました。
福島さんも「自分は女性の代表」という顔ができなくなった分だけ、厳しいでしょうね。
小池、片山、猪口、佐藤、阿部…。よく、これだけの女性を揃えましたね。総て、福島・辻元両氏より、有能に見えます。
・タカダ殿
自民党の「長期戦略」からすれば、「主敵」が民主党であるのは、間違いないと思います。「主敵」と「当座の敵」の扱いをどうするかは、見物だと思います。

Posted by: 雪斎 | August 22, 2005 at 03:40 AM

かんべいさんが指摘していた「日本としては、久々に景気がよくなる時期の選挙であること」というのも、恐らく自民党の都市政党化にはプラスに働くと思います。
都市層が本質的に保守的であるならば、彼らが本当に求めるのは改革よりも景気回復でしょうから。

Posted by: Baatarism | August 22, 2005 at 01:04 PM

「かんべいさん」じゃなくて「かんべえさん」でしたね。
かんべえさん、どうもすいません。

Posted by: Baatarism | August 22, 2005 at 01:06 PM

 はじめまして。
 たしかに今回の小泉自民党の候補者擁立は「都会的」です。すなわち都市対田舎というのは、選挙区の地域的問題だけではないということですね。
 昨日、田舎政党社民党党首の謎な発言がテレビで流れていましたので、トラックバックさせていただきます。

Posted by: ぽいんと尺 | August 22, 2005 at 01:19 PM

「主敵」と「当座の敵」はコインの表裏
の関係にあると思います。郵政公社維持を
キーワードに、全逓と特定局長という
労使双方からのアプローチですな。
従って、現在の戦略に基づく戦術で双方に
対応できると思われます。
それよりも、今、当方が懸念してるのは、
このブームが本当に自民党の議席に
結びつくのか、でしょうか。一票の
格差のため、地方に議席数のウェートが
かかってますけど、その地方でどれ
だけ自民党が負けるか、読みきれんの
です。

Posted by: おおみや%NEET | August 22, 2005 at 07:22 PM

・baatarism殿
「株価上昇は政権交代への期待を込めてのものだ」とお馬鹿な発言をしたテレビ・キャスターがいたそうですな。
・ポイント尺殿
はじめまして。
「地縁、血縁、利害関係のしがらみ」がないといえば、郊外にイオンの店があるような地方都市も、そうした感じになりつつあります。
・おおみや殿
旧全逓の首脳が「造反」新党支持を明言したとか。構図が判りやすくなってきたようです。


Posted by: 雪斎 | August 24, 2005 at 08:38 AM

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