« 学者とカネ | Main | 宰相二代の「缶ビール」 »

August 06, 2005

「郵政・関ヶ原」前夜

■ 「郵政民営化法案の否決観測が濃厚になった」と伝えられている。中曽根弘文氏が「法案反対」を表明したのを機に、そうした雰囲気は一挙に広まった。事実、昨日、日経平均株価は中曽根発言が伝えられたのを機に、一時150円近くの下げを記録した。中曽根氏も、自分の決断で株価を大幅に下げることができるのだから、「大物」議員になったなと思う。

 慶長 5年(1600年) 9月 15日、美濃国関ヶ原において天下分け目の一大決戦の幕が開かれた。午前 8時の戦闘開始から各所において、戦局は西軍優位に推移したけれども、正午頃に小早川秀秋 が背反したことを契機に戦局は一変し、西軍は総崩れとなった。明治期、日本を訪れたドイツ軍将校は、東西両軍の布陣図を見て即座に「西軍の勝ち」と判断し、実際の戦局も、そのように推移したのであるけれども、この趨勢を逆転させたのが、「金吾中納言の裏切り」であった。
 ところで、家康率いる東軍が「小早川抱きこみ」工作をやっていたのは、合戦前日の14日であったと伝えられる。日本史上最大の合戦とされる「関ヶ原」は、「東軍が勝つべくして勝った」という後世の印象とは異なり、その前夜まで帰趨の読めないものであったのである。
 そうであるならば、この土日両日に何が行われているかは、決定的な意味を持つことになるであろう。「郵政・関ヶ原」もまた、本会議に至る48時間が「勝負の分かれ目」である。
 小泉総理周辺は、目下、熾烈な工作を続けていることであろう。政治の世界では、メディアに表明する言葉と実際の行動が一致しないことがある。そうした不一致は、しばしば「やむをえない」とか「断腸の想い」とかといった言葉で合理化される。自民党内反対派が十数名を数えたとメディアが伝えたところで、実際には「先のことは何も判らない」というのが、最も誠実な言葉であろう。
 また、野党内に「金吾中納言」を登場させる努力もまた、続けられているかもしれない。衆議院本会議採決の折、民主党「政策新人類」の頭目である枝野幸男氏が「造反」したという事実は、既に忘れられているとはいえ興味深い。自民党内の「軋轢」にばかり眼が行くのは仕方がないけれども、民主党にも「軋轢」の種は幾らでもある。もし、雪斎が小泉総理の「政治幕僚」であるならば、「野党からの造反」を誘うオプションは、当然のように考慮する。本来ならば「野党に手を突っ込む」オプションは、邪道に違いないけれども、政治においては「必要」に総てが従属する。今、現在、メディアを通じて伝えられているのは、専ら「自民党内反対派」の動向であるけれども、「野党からの造反」の可能性は、不思議なことに全く言及されていない。何故なのであろうかと思う。
 加えて、この「郵政政局」の行方を米国政府がどのように見ているかは、かなり興味をそそられる。ジョージ・ブッシュにとっては、「ブッシュ・コイズミ」同盟の維持こそが、東アジア戦略上、「肝心」の要件である。英国にトニー・ブレア、日本に小泉純一郎という「重石」があればこそ、米国政府は、かなり安心して対外戦略を展開できる。「コイズミ」の「重石」がなければ、米国政府も対外戦略上、だいぶ困ったことになりそうである。「米国陰謀論」が好きな人々ならば、「だから、米国は対日工作を活発にしているはずだ」と唱えそうであるけれども、此度だけはそうした「陰謀論」に耳を貸してもいいかなと思う。ジョージ・ブッシュが「コイズミ」を失う事態を黙って受け容れるとも、考えにくいからである。
 雪斎は、「法案それ自体は参議院で僅差で可決、成立」という読みを示していた。現時点では、この読みを変えない。否決への流れが勢いを増しているのは事実であるけれども、「否決で決まり」と断ずる根拠も持っていない。「郵政政局」、「六ヵ国協議」、「国連安保理再編協議」が同時に進行する「夏」の「熱さ」は、尋常ではない。


■ 追記。「民主党「政策新人類」の頭目である枝野幸男氏が「造反」したという事実は、既に忘れられているとはいえ興味深い」は、事実と異なっていたようです。関係各位に陳謝致します。後々の戒めのため、該当記述は削除せずに残しておきます。

|

« 学者とカネ | Main | 宰相二代の「缶ビール」 »

「国内政治」カテゴリの記事

Comments

自民党の造反議員と同一選挙区で、
かつこの法案に賛成しそうな民主党
議員....そううまくいかないか。

Posted by: おおみや%NEET | August 06, 2005 at 07:25 PM

運スレでもかかれていましたが、枝野は反対票を投じています。

Posted by: vill | August 06, 2005 at 10:43 PM

おおみやどの
物事は、「これから起こること」を予測するよりも、「既に起こったこと」を解説するほうが、数段、楽だなと思います。

villどの
追記に書いたとおりです。

Posted by: 雪斎 | August 06, 2005 at 11:45 PM

いつもお騒がせしています。
・関ヶ原の合戦…中仙道から関ヶ原に向かっていた徳川秀忠の徳川主力軍の遅参ということがありましたね。真田氏に妨害されたということですが、その後の「政局」に大きな影響を及ぼしたようです。
・6日の新聞各紙の態度…日経がこれも「遅参」ですが、郵政民営化の断行を訴えていると聞きました。私は、日経を購読していないので…。
少しですが株式投資をやっている私の母が憤慨して電話してきました。私自身、どう答えればいいのか分からなかったのですが、一言だけ言いました。日経は多分参議院で通らないとは全く予想していなかった。仕方がないと。日経の論調や記事の質にはいろいろありますが、どう見ても政寒経暖でしょう。政治の見通しの甘さは、一貫して歴然です。もう一言付け加えれば、自社自身のマネージメント、OUTですから。政治貧困で言えば、田勢さんのような人がまだ解説記事を書いているようですから。いい人なんですけどね。
「遅参」かも知れませんが、個人投資家とか外国人投資家が危惧する事態になっていると思います。母は、何でもっと早く正論を展開してくれなかったのかと怒っていました。
・民主党の態度…私は、解散して総選挙になっても民主党政権になるとは思わないのですけど、彼ら分かっているのかな。棚ぼたでも政権獲ってみんさい。自民党の分裂、「明日は我が身」なんですよ。分かっているのかな。分かっていないボンヤリしている人が多すぎます。
私は埼玉に住んでいます。上田知事を民主党議員の時期から一貫して支持してきましたが、今回の「選挙」では、自民・民主の候補者の政見を確認し、判断しようと思っています。
失礼しました。

Posted by: さぬきうどん | August 07, 2005 at 03:40 AM

雪斎さんも民主党の動きに言及されましたが、民主党から4、50人くらい郵政に賛成する人間が出てきても全然おかしくないのにな、と、私は素人考えで思います。日本の既得権益構造へメスを入れるこの法案に対し、民主党が、野党だから与党に反対するだけという立場しか取り得ないのだとすれば、いかにも硬直的です。

Posted by: soulnote | August 08, 2005 at 10:25 AM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/71618/5321060

Listed below are links to weblogs that reference 「郵政・関ヶ原」前夜:

» [politics]郵政政局の枠組み [bewaad institute@kasumigaseki]
明日の参議院本会議における郵政民営化法案採決の行方ですが、自民党内の反対派の数が18を超えていることは間違いないわけで、そのうち何人が賛成票を投じるかによって決まることとなります。 反対派にとって郵政民営化が望ましくないことは当然ですから、執行部の説得手法はいきおい郵政民営化関連法案が否決された際には、郵政民営化を阻止できることを上回る損が生じるから賛成してくれ、つまりは否決の場合には解散・総選挙により自民党は野党に転落す�... [Read More]

Tracked on August 07, 2005 at 05:53 AM

« 学者とカネ | Main | 宰相二代の「缶ビール」 »