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August 17, 2005

「下界」に降りて…

■ 昨日朝、「震度5強」を記録した宮城県北の「田舎」より帰京した。拙宅に着いてコーヒーを飲みながら、五日分のメールのチェックやら株価の確認やら、やっていたときに、揺れが来た。「おお、強いな…」と思ってNHKのニュースに眼を遣ったら、「宮城県で震度6弱」と報じられて内心、慌てた。一族に被害はなかったようである。雪斎も、地震が起こる前に「田舎」を発って東京に着いていたのは、「運」がよかったと思う。
 ご心配頂いた皆さん、ありがとうございます。

■ 「仙人生活」から「下界」に降りてみたら、小泉総理以下自民党執行部の「刺客」の差し向けが、激烈の度合いを増している。これに関して、興味深いのが、『朝日』の次の記事である。
 □ 自民県連の反乱、腰砕け 大分、鹿児島、奈良
 自民党執行部が郵政民営化法案に反対した前職の対立候補を2次公認したことに対し、造反組を独自推薦する方針を打ち出していた同党県連で、決定を受け入れるところが相次いでいる。党本部への反乱が腰砕けになった格好だ。
 大分1区で衛藤晟一氏の公認を申請していた党大分県連は15日夜、佐藤錬氏が1区に公認されたことを受けて緊急役員会議を開き、衛藤氏を県連推薦するとしていた方針を事実上撤回した。岩屋毅会長は「衛藤氏の支援を決めた県連の決定は重いが、党本部の決定も同じくらい重い」と述べた。
 鹿児島5区で造反組の森山裕氏を独自推薦する方針だった党鹿児島県連も15日夜、加治屋義人選対副委員長(参院議員)が記者会見で「党本部の公認から漏れた人間に対し、県連推薦することはない。党の決定に従うしかないだろう」と語った。
 党奈良県連は15日、党本部が公認を決めた前奈良市長の鍵田忠兵衛氏(奈良1区)、元職の高市早苗氏(同2区)について、それぞれ支援することを決めた。当初は、郵政民営化法案に反対した1区の森岡正宏氏、2区の滝実氏の両前職を支える方針だったが、造反組に「刺客」を送り続ける党本部の強硬姿勢をふまえ、同調しなければ県連内が混乱すると判断した。

 この県連の「掌返し」に関連して、興味深い別の記事が『読売』に乗っている。橋本龍太郎元総理の「残務処理」の不味さを伝える記事である。
  □ ヤミ献金・不出馬・後継、沈黙の橋本元首相に憤る地元
 政界を引退する方向となっている橋本元首相(68)の二男、岳(がく)さん(31)が15日、元首相の「後継」として衆院岡山4区から出馬することを正式に表明した。
 しかし元首相は自らの進退についていまだ“だんまり”を続けたまま。元首相は日本歯科医師会(日歯)側からの1億円ヤミ献金事件や、小選挙区からの不出馬宣言についても、地元有権者の前で何も説明をしていない。
 地元の支援者は「どうして一言もないのか。自分を殿様か何かと勘違いしているのではないか」と不満を募らせている。
 岳さんの会見は15日に岡山県庁で行われたが、それに先立って元首相の地元後援会は橋本事務所に対し、「まず元首相が地元で会見し、『自分は4区から出ない』と有権者に説明するのがスジだ」と申し入れていた。
 しかし元首相はこの日も東京で行事などに出席し、地元には行かなかった。
 元首相のこの態度に、橋本事務所も「あまり人前に出たくないらしい。公の場で説明をしなければならないのは我々も分かっているが……」と困った表情。
 一方、岳さんは「(会見に)来なかった理由は、本人(元首相)に聞いて欲しい」と話すだけだった。
 元首相は、日歯側から自民党旧橋本派にあてた1億円の小切手を、料亭で直接受け取った事が昨年7月に発覚した際には、「記憶にない」を連発。派閥内外から「納得できない」と強い批判を浴びた。
 この結果、同月30日に同派を退会したが、その時、派閥議員の前で「次回、小選挙区からの立候補はいたしません」と表明した。その後、何度か地元に戻ったが、不出馬宣言の真意やヤミ献金事件の真相について、支援者に一切説明をしていないという。
 また元首相は派閥退会の際、「家族、親族に継がせるつもりはありません」と強調していたが、結果的に岳さんが「後継者」となる形になった。
 元首相のあまりの“説明責任放棄”に、後援会には離脱の動きも出ている。吉田吟之介後援会長(85)は「家族に継がせないというのは、元首相が誰にも断りなく言ったことで、了承していない。我々は『橋本』の名前を残して改めて団結したい」と組織の維持に懸命だ。
 岳さんによると、橋本元首相は当初、岳さんの出馬に反対していたが、最後は「後悔するなよ」と言ったという。だが、有力後援者の一人は、「元首相本人の口から事情を聞かなければ納得できない。支援者がいてこそ議員でいられたのに」と怒りをあらわにした。

 この二つの記事は、「国会議員」と「地元」の微妙な関係を示している。「地元」にしてみれば、「国会議員」の存在意義とは、「地方」の意向を「中央」の政策過程に反映させる「代理人」として振る舞うことである。ところが、「国会議員」の方は、そうした「地方」の意向のどれを実際に取り上げるかを差配する権力を有するから、次第に「地元」に対して「君主」然と振る舞うようになるのを避けられない。
 こうした事情を考えると、当初は党中央に刃向かおうとしていた大分、鹿児島、奈良の党各県連が「へたれてしまった」のは、彼らにとっての「国会議員」の存在意義を考えれば当然のことである。折角、苦労して当選させた候補が、党公認を持たないが故に自らの「代理人」たり得ないということになれば、「地元」の努力は無駄になる。大分を始めとする各県連は、「中央」の事情に関わることを専一の目的にしたのである。これに反して、岡山県連は「造反派」議員jの支持を決めた。自民党政権の下で、実質上の「野党」となる覚悟を決めたということであろうか。

■ それにしても、亀井静香氏と野田聖子氏への「刺客」が、現在の段階まで決まっていないのは、どういう事情によるのであろうか。「刺客」第一弾であった「自民党の上戸彩」」(映画『あずみ』がイメージされていたらしい)こと、小池百合子氏の擁立は、確かに「造反派」議員には恐怖を覚えさせたことであろう。ひとつの組織では、「粛清」が行われる折に最初に血祭りに上げられるのは、「中の上」、あるいは「上の下」クラスの人物である。そうすることによって、「下」のクラスに締め付けを行い、「上」のクラスの忠誠心を試すことができるのである。この伝でいえば、小池氏を当てられたのが小林興起氏であったのは、「お約束」の出来事であったと評する他はない。そして、雪斎は、おそらく党執行部が最も潰したいと思っているのは、「造反派」議員の中でも、綿貫民輔氏のような人物ではなく、亀井、野田両氏なのではないかと思っている。早々に「敵」が見えた場合は別として、「自分には誰がぶつけられるのか」という想いを抱きながら、「見えない敵」と戦うことは、精神衛生上、最悪の沙汰である。小泉総理周辺は、そうした「最悪の沙汰」に亀井、野田両氏を追い込んでいるのである。これは、なんと「酷薄」な対応であろうかと思う。

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Comments

記事と関係なくて恐縮ですが、帰省をしていくつか地方都市を回ったのですが、公教育の「東京化」というのを聞いてギョッとしました。「ゆとり教育」に乗じて私立の中高一貫校が伸びているようです。従来、「官業」とされていた分野でも市場化の波から逃れることはできない。波に逆らうのか、波を活かすのか。不思議なことに自民党の方が明快で民主党はぐだぐだな感じがいたします。

「刺客」分析は興味深く拝読しました。やはり非道は非道を知るというところでしょうか。ただ、「刺客」というのは大袈裟すぎで私自身は「空挺部隊」と呼んでおります。今回は偶然の産物でしょうが、これが制度化されると地味なところで政治改革が進むかもしれないなどと浅知恵を働かせております。

それにしても民主党には太原雪斎はいないのでしょうか。恵瓊でもいいんですけど。政策を見ていると、「政権準備政党」になるための予備選挙のような気がしてまいりました。

Posted by: Hache | August 17, 2005 at 07:26 AM

この「刺客」分析は雪斎先生ならですね。つーわけで、ご無事にお帰りの上、
当方のリクエストに早速お応えいただき
ありがとうございますm(_ _)m

Posted by: おおみや%NEET | August 17, 2005 at 07:59 PM

・HACHE殿
「空挺部隊」ですか。云い得て妙ですね。
・おおみや殿
どういたしまして。

Posted by: 雪斎 | August 18, 2005 at 05:08 AM

地震に巻き込まれず何よりでした。ニュース見たとき雪斎さんが無事帰ってこられるか心配しました。

Posted by: ファガスの森 | August 18, 2005 at 09:34 PM

・ファガスの森殿
おひさしぶりです。
ご心配ありがとうございます。

Posted by: 雪斎 | August 20, 2005 at 08:13 AM

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