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August 18, 2005

よろしく、哀愁…。「国民新党」という泡沫

■ 綿貫民輔、亀井静香両氏を中心にして、新党「国民新党」が旗揚げされた。次の『朝日』の二つの記事を考えてみる。

 □  「国民新党」旗揚げ、代表に綿貫氏 幹事長に亀井久興氏
 綿貫民輔元衆院議長、亀井静香・元自民党政調会長らは17日午後、都内で記者会見し、総選挙にあたり郵政民営化法案に反対した前衆院議員の受け皿となる新党結成を発表した。新党名は「国民新党」で、代表には綿貫氏が就任した。
 会見には綿貫、亀井静香氏のほかに、幹事長に就任する亀井久興元国土庁長官、長谷川憲正参院議員、民主党を離党した田村秀昭参院議員が同席した。

□ 追い込まれて決断 亀井新党「選挙互助会」色彩強く
 自民党の郵政民営化反対派が結成する新党は、小泉首相や党執行部に追いつめられた結果の「選挙互助会」的な色彩が強い。「総選挙を勝ち抜いて、自民、民主両党の間でキャスチングボートを握る」(関係者)と強気の声もあるが、2大政党のはざまでの戦いは容易ではなく、生き残りをかけた大きなかけとなる。
 反対派議員の多くは、当初、無所属での立候補を目指した。新党をつくって、自民党を離党すれば、当選しても、選挙後の復党が難しくなるほか、自民党の地方組織の支援が得にくくなると判断したからだ。
 しかし、首相が反対派の全選挙区に対立候補を立てる方針を打ち出したことで状況が変わった。無所属のままでは、(1)政見放送ができない(2)使用できる選挙ポスターや選挙用はがきが少ない――などのハンディが多く、自民党の対立候補と戦ううえで不利になるためだ。
 さらに、比例代表への重複立候補ができなくなることも深刻で、反対派の間では、復活当選という「安全ネット」を求める声が強くなった。
 新党参加を検討している反対派の一人は「執行部が小池環境相の擁立を決めてから、新党は絶対に必要だと考えるようになった」と話す。
 ただ、自民党執行部の受け止めは冷静で、幹部の一人は「自民党員は自民党の亀井さんだから支持している」と、支持は広がらないとの見方を示した。公明党の東順治国対委員長も16日夜、新党は「比例(当選)狙いの選挙用だ」との見方を示した。
 一方、旧亀井派の分裂は決定的になる。同派内で賛成票を投じた閣僚経験者の一人は16日夜、「亀井氏が新党に移るのなら、我が派は亀井氏と袂(たもと)を分かつ。我々として新しいリーダーを立てるかどうかは、選挙後の話だ」と語った。

 「いかなる政体をとろうと、国家の指導者たる者は、必要に迫られてやむをえず行ったことでも、自ら進んで選択した結果であるかのように思わせることが重要である。思慮深い人間は、本当のところは行わざるをえなかった行為でも、自由意志の結果であるという印象を、相手方や周囲に植え付けることを忘れない」。
                 ― ニコロ・マキアヴェッリ
 このマキアヴェッリの言葉にある「統治の作法」をまったく踏んでいないのが、国民新党である。もし、自民党・公明党の与党連合と野党の勢力が拮抗し、国民新党が小所帯でも勢力を維持できれば、キャスティング・ヴォートを握る場面が出てくるかもしれないけれども、そうしたことは初めから期待できるわけではない。「追い詰められて」作った新党というのは、何ら積極的なものを生み出せるわけではない。この点は、十余年前の日本新党や新生党などとは条件を異にする。
 振り返れば、亀井静香氏は、小泉純一郎体制下では徹底して干され続けた。雪斎は、小泉総理にとっては、亀井氏は最も「肌の会わない」タイプの人物なのではないかと思っている。亀井氏は、小泉総裁を誕生させた選挙では、途中から急遽、小泉支持に回った。そうすることによって、亀井氏は小泉総裁の下での「幹事長」のポストを手に入れようと狙ったのだそうである。亀井氏の手法は、まちがいなく「あざとい」ものであり、小泉総理は、そうした「あざとさ」を嫌ったようである。もっとも、小泉総理と亀井氏には、政策指向の上でも、かなりの違いがある。亀井氏が、大人物然とした綿貫氏を煽り巻き込んだのが、現在に至る「郵政政局」の「そもそもの始まり」なのではいであろうか。
 ただし、こうしたことが、衆議院議長までも務めた綿貫氏にとって、よいことであったのか。雪斎は、郷ひろみさんが1974年に歌って彼の代表曲になった「よろしく哀愁」を思い出す。

 「よろしく哀愁」.(作詞/安井かずみ、作曲/筒美京平)

もっと素直に僕の 愛を信じて欲しい
一緒に住みたいよ できるものならば
誰かに君がやきもち そして疑うなんて 君だけに
本当の心みせてきた。
会えない時間が 愛 育てるのさ 目をつむれば 君がいる
友だちと恋人の境を決めた以上
もう泣くのも平気 よろしく哀愁

 綿貫氏の「自民党」への想いが、どことなく表われている歌詞ではなかろうか。雪斎は、綿貫氏が議席を維持できれば、「郵政政局」の嵐が過ぎ小泉総裁が退任した後にでも、綿貫氏は自民党に復党し、自民党代議士として氏の政治キャリアを終えるのだろうと思っている。少なくとも雪斎は、そのように願っている。雪斎は、亀井静香氏が悲惨な末路を辿ろうとも「俺の知ったことか…」という気になるけれども、綿貫氏には、そういう気は起きない。

■ ホリエモンこと、堀江貴文氏も出馬だそうである。なるほど、選挙は、「お祭り」である。みんな、踊り出すわけである。「ええじゃないか。ええじゃないか」。

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「国内政治」カテゴリの記事

Comments

綿貫氏については、こういった怪文書?が
NETで流されております
http://byonabi.haru.gs/main/html/bkn_1123729791872.html
その為、今回の動きについてもなんだかなー
と、しらけた気分がありますね。
もういい年なんだから引退すれば良いのにと
考えてしまいます

Posted by: TOR | August 18, 2005 at 02:55 AM

聖徳太子の時代から、日本では「和をもって尊しとなす」という文化が大切にされてきました。
私自身もそういう日本を愛しています。
揉め事は嫌いで、和を尊びます。
でも、時代が大きく変わったときには、和を重んじていると改革はなかなか進みません。
だから日本が変わるときには、「和をもって…」の真逆なことが起こり、しなった竹がはじけるように過激に変わります。
この瞬間、それまで大切にされてきた価値観や、尊ばれてきた人間関係は一瞬にして過去の遺物となってしまいます。
一瞬にして変わった後には、また長い和の時代がやって来るというわけです。
それが日本の特質ではないかと思うのです。
大化の改新、織田信長の躍進、明治維新、そして大東亜戦争、その敗北。
今回の小泉の政変も、それに匹敵するものなのではないかと思います。
私は日本人の能力を信じます。
冷戦が終わって世界の構造が大きく変わった以上、日本も変わらざるをえないのは当然。
変わっていない事のほうが不自然だというほどの大変化でしょう。
そんな時代に小泉のような過激な個性が大きな力を持つということに、それが一部の策略ではなく国民的なムーブメントの結果であることに、私はむしろ日本の可能性を感じます。
残酷なようですが、旧体制で誠意のある人物とされた綿貫氏がはじけ飛ばされるような事態こそ、日本が次のフェイズに突入したサインになるのかもしれません。

Posted by: HOMERUN | August 18, 2005 at 03:27 AM

アンチ~というネガティブな意志の下で集まっていた人達がポジティブな理念を示すことは土台不可能でしょうが、どうやって選挙を戦うのかはそれなりに見物だと思います。
(他に見るべき物の方が多いでしょうが。)
最近の日本の内外には不毛なアンチ・パワーが渦巻いています。今回の選挙がネガティブな空気を打破しポジティブな面を打ち出せる契機とまではいかなくとも、その第一歩にとなることを願っています。

Posted by: yu_19n | August 18, 2005 at 05:44 AM

はじめまして雪斎さん、横レス失礼いたします。
はじめまして、HOMERUNさん
聖徳太子の「和を以って尊しと為す」とは、「いくら気に食わないからって暴力は良くない、ころしちゃダメ」という意味だ、という話を聞いたことがあります。第十七条で「夫れ事独り断むべからず。必ず衆と論うべし。」とあることからも、言論を以って争うことを否定したものではないでしょう。

亀井氏については、雪斎さんの仰せのとおり、あまりにも思慮が足りませんでしたね。解散の後あれだけ醜態を晒しておきながら、いまさら新党を創ったところで苦し紛れにやってるとしか思われません。国民新党は公募をするそうで、一体何人の公募が集まるか、が今のひそかな楽しみです。

(アドレスを要求されたので、ウソアドレスを入力しました。お目汚し失礼いたします)

Posted by: アリサン | August 18, 2005 at 10:33 AM

はじめまして。いつもブログを読ませて頂いております。

私の立場は、今回の郵政民営化法案には反対です。
もちろん郵政3事業は効率化すべきところが多々有ると思いますので、民営化自体は有効な手段となり得るでしょう。
がしかし、実際に民営化するとなると、郵貯・簡保による資産などはその額が膨大であり、その殆どが国公債で運用されている以上、これらのお金が民営化の暁にどのように動くのか、またマクロ経済にどう影響するか、議論を尽くす必要があると思います。国債が相当量売られた場合に金利はどうなるのか、これらをどこが吸収できるのか、国内の資金需要はどうなのか、所謂「グローバルマーケット」にどれだけ資金が流れて行くのか・・・等等。

これらの漠然とした疑問・不安をもっている人は多いと思いますので、それらを国民に説明する責任が小泉総理・竹中大臣にはあると思いますが、今までに納得できる説明が聞こえてきたことがありません。(私が寡聞にして知らないだけか、それとも報道されないだけかもしれないですが・・・)
聞こえてくるは、「民間の知恵で効率よく運用」とか「経済の活性化」とか「小さな政府」とか「改革の本丸」とか、曖昧でしっくりこない文言ばかりです。

というわけで私は現状の(議論を尽くされていない状態での)郵政民営化法案通過に反対なのです。今回の選挙で郵政が争点とされている以上、亀井さんがたとえ泡沫でも新党を立ち上げてくれてやっと投票できる政党ができましたので、素直に喜ばしいことだと思います。すみません、これが言いたかっただけです。。。
私は海外在住なので、比例投票しかできませんので・・・。

失礼いたしました。

Posted by: 佐伯王(サエキング) | August 18, 2005 at 08:59 PM

はじめまして。
先日(16日)に、私のブログにコメントをいただきまして、ありがとうございます。思わぬリアクションに驚きました。


今回の新党騒ぎに関して、亀井氏の行動については様々見方があるようですが、僕は次の ように思われてなりません。

たぶん、彼は派閥の領袖としての道を全うしたのであろうと思います。

雪斎さんが述べたように、亀井氏が小泉総理
を支持する選択肢を取ったものの、亀井派が 冷遇されてきました。そして今回の騒動。

 「いかなる政体をとろうと、国家の指導者た
 る者は、必要に迫られてやむをえず行ったこ
 とでも、自ら進んで選択した結果であるかの
 ように思わせることが重要である。思慮深い
 人間は、本当のところは行わざるをえなかっ
 た行為でも、自由意志の結果であるという印
 象を、相手方や周囲に植え付けることを忘れ
 ない」。        
 ― ニコロ・マキアヴェッリ

あらためてこの文章を読むと、いろいろなことを思わずにはいられません。亀井氏はあくまで、“キャスティングヴォートを握る”というでしょうが、むしろ、自民党からあぶれた亀井派の子分たちのために身を砕いているように思えてなりません。
道は続いていないかもしれない。それを知りながらも、自らの自由意志の結果のように振舞って、子分のメンドウを看る。そんなコンテクストで読み取ることもできるのかもしれません。
興味深く事の次第を見守ろうと思います。


郵政に関しては、話すとあまりに長くなってしまいます。ただ、2つの論点を分けて考える必要があることはいうまでもないでしょう。

①資金の流れに関して。
②ネットワーク維持に関して。

そして、今回の改革の目的からすれば、①が改革の主眼であることは間違いありません。
郵政が抱える300兆円を超す資金をどのようにマーケットに流していくのか。その手段として、「民営化」が本当に適切な手段なのか。疑問でなりません。
個人的な意見を述べると、
(以下、自分のブログからの引用ではありますが・・・)

       (郵政)
国民→200兆→郵貯
国民→150兆→簡保

というお金の流れが悪いから、郵政を変えるというのが小泉さんの意見。
僕は、「国民」のマインドを変えましょう、それがスジだと思う。
これまで、日本と言う国は、長期雇用や年功序列に象徴されるように、非常に安定した雇用環境の下で人生設計が可能だった。そのような状況下において、日本人はリスク回避的な行動を取ってきた。
この雇用環境と表裏を成すように、企業による株の持ち合いなどが行われてきた。したがって株式マーケットは閉鎖的であり、大部分が安定的に長期保有する法人株主が占めていたわけである。そのような状況で、企業が獲得した利益は、マーケットを介して株主に還元される形ではなく、内部の従業員などへと還流してきたわけである。
しかし、この構図が崩れ、銀行保有株などを中心にして、株主の構成比率が大きく変化しているわけである。また、企業が獲得した利益を株主に還元するという仕組みが整いつつある。

このような現状で、企業との安定的なコミットメントが望めなくなった一個人は、郵貯で資金を運用することが、一つのリスクとなりうることを認識すべきであると思う。安全なところに寝かせておくだけではなく、しっかりリスクをマネジメントして、自分の人生設計に応じた資産運用をしていかなければならない時代が来ている。

“アメリカの個人株式所有率(株式のうち個人の貯蓄に由来するもの)は75%を超えていて、(金融商品による間接所有も含む)このようなアメリカ資本主義の仕組みによって、再分配されていくのである。”

資産運用と聞いて、デイトレーダーや企業の指名買いによって売買差益をとる、短期の運用を思い浮かべるかもしれない。しかし、企業が成長し続ける中で、アメリカでは平均株価はここ20年間で倍になっているわけで、投資信託などによって長期保有する中で、再分配されていく構図を描いているわけである。
このように、秩序ある資金により、安定したマーケットの環境を整えることで、資金調達をする企業の環境も、長期投資をする個人投資家の環境も良好になる。結果、郵政に流れる資金が減少し、郵政が整理縮小されていくことが本来のあり方なのではないかと、個人的には思うわけである。


追伸。
雪斎さんよりコメント頂いたブログにあった内容は、卒論として以下のようにまとまりました。
http://02.members.goo.ne.jp/~member/cooking.cgi?id=skyscraper-high@goo
今のところ、自身のHPに間借り中で、再編集の予定もありませんが、よろしかったらご覧ください。
あのブログの日記より半年以上の月日が経ち、私は記者として新たな生活のスタートを切っております。これも何かのご縁か、現在北の大地を振り出しに頑張っております。またご縁がありましたら、コメントをお寄せください。

Posted by: ただの | August 19, 2005 at 12:09 AM

・TOR殿
その話は聞いたことがあります。
・HOMERUN殿
日本人が変わるときというのは、「別の民族」なってしまったかのように徹底して変るのですね、この自己変革能力は本当に大事にされるへきだと思います。
・yu-19殿
「反」の論理では、何かをしたように錯覚しても、積極的なものはなにも生まない。この意味は大きいと思います。
・アリサン殿
国民新党のホーム・ページのしょぼさには、哀切の情すら覚えます。
・佐伯王殿
御説、ありがとうございました。また、よろしくお願いします。
・ただの殿
今は、北海道勤務ですか。「ムネオ新党」の動向は楽しそうですね。しっかり「道産子」になられることを。

Posted by: 雪斎 | August 20, 2005 at 08:46 AM

郵政利権について綿貫氏(一族)のファミリー企業がずぶずぶの関係であることをご存知だったとのことですが、それでもなお、雪斎先生は綿貫氏が自民党に復党すべきとお考えですか?
小生、いいかげんいい年なんですから隠居して欲しいと考えています。
何人かのオーナー企業創業社長の末路を見てきた経験から、引き際を間違えて欲しくないですね。
それこそ、衆議院議長まで務められたのですから。
この「郵政ファミリー企業利権」がネットで広められている以上、綿貫氏の政治生命は終了した、と思えてなりません

Posted by: TOR | August 21, 2005 at 03:28 AM

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