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August 02, 2005

真夏の夜の不快指数、上昇する。

□ 真夏の夜の不快指数が上がっている。郵政政局絡みで、自民党衆議院議員が「自殺」したという一件である。

  □ 「綿貫氏「異常な政治情勢」と批判=永岡氏自殺で反対派が会見-自民
 郵政民営化法案に反対している自民党郵政事業懇話会長の綿貫民輔前衆院議長は1日午後、永岡洋治衆院議員の自殺を受けて都内のホテルで記者会見し「永岡氏を死に追いやった政治情勢は異常なものがある」と執行部の対応を批判した。
 綿貫氏は永岡氏の自殺について、選挙区事情と郵政民営化法案への賛成を迫る執行部による圧力があったとの見方を示し「法案を通すために手段を選ばない多数派工作がまかり通っている」と強調した。
 記者会見には永岡氏が所属した亀井派の亀井静香元政調会長、平沼赳夫前経済産業相らも同席。「第2、第3の永岡君を出してはならない」(亀井氏)、「(反対から賛成に転じた永岡氏が派内で批判されたと)官邸筋、執行部筋から腹立たしいことが流布されているが聞き捨てならない」(平沼氏)などと語った。―『時事』
  □ 「相当悩み苦しんだ」 永岡議員自殺で亀井氏
 自民党の亀井静香元政調会長(亀井派会長)は1日午後、同派の永岡洋治衆院議員の自殺について「(郵政民営化関連法案への対応で)相当悩み苦しんだのが事実なんだろう。自殺をすべきようなことがほかに起きていたとは思えない」との見方を示した。
 その上で「今も参院で(各議員に)強烈なプレッシャーがかかっているみたいだが、政治家は自分の政治信念で行動すべきだ。執行部といえども行き過ぎたことをしてはいけない」と強調した。
 同派の平沼赳夫前経産相も「執行部からプレッシャーがかかって、政治信条を強引にねじ曲げられたことを相当悩んでいたと思う。今の強権的なやり方の犠牲者だったんだと思う。後に残るわれわれが無念の気持ちを果たすため一致団結して頑張りたい」と述べた。

 故人に鞭打つような振る舞いになるけれども、雪斎は、永岡議員は「政治家としての資質」を持たない人物であったと思う。郵政民営化の是非は、「国運」を直接に左右しない相対的に「小さな問題」である。そうした「小さな問題」で「自殺」したというのであれば、たとえば「戦争と平和」が絡む決断を迫られたときには、どのような判断ができたというのであろうか。イラクへの自衛隊派遣を決断した小泉純一郎総理が受けた「プレッシャー」は、到底、永岡氏の比ではあるまい。ペルーで日本大使公邸が占拠された折、特殊部隊突入を決断した際のアルベルト・フジモリ大統領は、何を感じたのか、映画『13デイズ』に描かれたように、キューバ危機の最中、核戦争の瀬戸際にまで事態が進んだ際、ジョン・F・ケネディは何を思っていたのか。国際政治の渦の中には、「途方もないプレッシャー」の世界があるのである、郵政民営化程度の問題で自殺するほど、日本の政治家が「やわな存在」になっているとすれば、こちらのほうが問題である。
 もっとも、綿貫、亀井、平沼の各氏は、早速、永岡氏の死を「利用し始めている。この三氏は、永岡氏を追い詰めたのは官邸・党執行部だという印象付けを行い、「友の死を乗り越えて」民営化反対を貫くという自己演出をやろうとしている。無論、政治家の資質は、そうした政治利用と自己演出を平然と行う「鉄面j皮」ぶりを発揮することにあるから、三氏の姿勢は、それ自体としては非難できない。「友の死を越えて…」という話は、大方の日本人は、心を動かされるものである。問題は、その演出が、世の人々から、どれだけの共感を得られるかということである。「友の死を乗り越えた」高校生ラガーの物語、『スクール・ウォーズ』は、誠に芳しき感動の物語であったけれども、綿貫氏らの演出は、堀ちえみが「あほでドジなノロ亀」、松本千秋を演じた『スチュワーデス物語』並みの「くさい」ものであると呼ぶ他はない。要するに、綿貫氏らの「政治利用」は、余りにも露骨で見え透いたものなのである。綿貫氏らは、少なくとも永岡氏の通夜が明けるまでは、こうした「政治利用」を手控えるべきであった。綿貫氏らは、現時点では、眼に涙を溜めながら、「惜しい男だった…」と一言だけ漏らせば、それでよかったのである。綿貫氏らの「政治感性」の劣化も相当に進んでいたのではないか。
 綿貫氏らの「くさい」演出以上に、真夏の夜の不快指数を上げているのは、岡田克也氏の「能天気な発言」である。
  □ 単独政権実現の好機 岡田氏「自民命脈尽きる」
 民主党の岡田克也代表は1日、日本記者クラブで講演し、郵政民営化関連法案が参院本会議で否決され、小泉純一郎首相が衆院解散・総選挙に踏み切った場合の勝敗について「今度の選挙は勝つときは大勝する気がする。単独過半数を取るチャンスは十分ある。自民党の命脈が尽きようとしている」と述べ、民主党単独政権を実現する好機との認識を示した。
 総選挙の争点について「4年間の小泉政権の総括、自民党政権を続けていいのかが最大の争点だ。国民の関心は郵政民営化にはない」と強調した。総選挙後に公明党と連立を組む可能性は「自民党は公明党なしで大きな決定はできない、選挙を含めた依存体質になっている。民主党の考え方を貫く内閣でなければ意味がない」と、重ねて否定した。 ―『共同』

 今は、まだ解散されたわけではない。にもかかわらず、「今度の選挙は勝つときは大勝する気がする」とは、どういう皮算用をしているのであろうか。雪斎は、二大政党制論者であるから、民主党の政権掌握それ自体は否定しないけれども、「岡田克也総理」登場という光景だけは出現させてはならないと思っている。余計なことを言わずに、どうして布石を打てないのであろうか。

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Comments

常識的に考えれば、自民党執行部が採決の終わった衆議院議員をそこまで責める必要があるとは思えません。
どっちからのプレッシャーが凄かったのか、子供でも分かるでしょう。
これで彼らの願い通り廃案になれば、思い通りにならないときは反対派議員をいびり殺せる悪魔的な権力の誕生です。
「選挙で選ばれ陛下の信認を受けた選良を、官吏の集団が自己の現状維持の目的で死ぬまで責めた・・・。」
後々までそう語り伝えられるでしょうが、それでいいのか?それが官吏の道か?と問いたいです。

Posted by: うめ | August 02, 2005 at 06:31 AM

民主岡田氏の「ビッグマウス」発言はあたしもNHKニュースで見ました。
大事なビールをこぼすところでしたが(藁

国民の関心は郵政民営化に無いとしても
「んじゃ年金問題とか対シナ外交はどーなんじゃい?」
という問いから逃げた事実しか民主党は手にしていないわけで、
「言いっぱなし党首であるうちは政権なんかとれね、オマイラ」
としか思わない。

Posted by: ペパロニ | August 02, 2005 at 10:03 AM

昨日昼過ぎにこのニュースに接した時の我が職場(寺なのですが)は反対派メンバーのインタビューに一斉に引きました。
雪斎氏がおっしゃる通り彼らはやりすぎたのです。少なくとも我々国民の目に触れた映像では「故人の死を先に政治利用的発言をした」のは反対派諸氏に他なりませんので。
(永田町内で何か飛び交っていようが一般人には届きません)
その後も三氏が揃って執行部批判を高らかにぶった会見の席を設けたのは当日夕刻です。正午前の訃報からわずか数時間という手回しの良さ、余りの情の乏しさに寒気すら覚えました。
小泉総理や武部幹事長がいつもの場所で最小限の哀悼の言葉を述べるのと彼らと、どちらが「衝撃的悲劇」に堪えているかというのは国民の目に鮮明に映るものだと反対派諸氏は自覚すべきです。
しかし全特という機関の異常なる圧力を国民は議員の死をもってしか感じられないのも悲しい話ですね。

Posted by: かずら | August 02, 2005 at 10:06 AM

永岡氏は精神疾患で投薬治療をうけていたようです。
故人には失礼ですが打たれ弱い人は政治家になってはだめですね。
先週あたりから新聞各紙(朝日まで)が郵政関連法案可決すべきを鮮明に打ち出し、空気が変わったところへこの自殺、もう否決はないでしょう。
このニュースで「亀井さん怖いよ、バックにいる特定郵便局やりすぎだよ」のイメージが決定的になったんじゃないでしょうか。
岡田氏はさておき、反対派の方々はいつからこんなに空気の読めない政治家になってしまったんでしょう。

Posted by: 波導 | August 02, 2005 at 11:23 AM

雪斎先生、永岡氏はうつであったようです。苦しかったでしょうね。私としては、郵政民営化云々より、この機会にうつの啓発をやってほしいなと思うところです。

波導殿>
打たれ弱いからうつになるのではない。真面目だからなるのです。いかにも元気そうな人でもなり得るのです。
写真で見た永岡氏は、いかにも実直で勤勉で真面目なって顔してました。こういう人が、うつを好発します。

Posted by: やすゆき | August 02, 2005 at 01:14 PM

永岡議員の政治家としての「資質」に関する部分、私も全く同感です。イラクへ自衛隊を派遣すると決断した時の小泉首相の精神的プレッシャーは、想像するだに恐ろしいレベルだと思います。逆に、これほどのプレッシャーに耐えられなければ、一国の政治家は務まらないということでしょうか。
また、「度胸・胆力・図太さ」は、一国の政治家(特に首相クラス)の資質として最も大事なものの一つではないか、と改めて気付かされました。
死者に対しては、まずなんといっても哀悼の言葉を捧げるというのが、日本の、いやおそらく世界の常識ある大人としてのあるべき姿だと思いますが、綿貫、亀井、平沼といった方々は、まさに「骸も冷め切らぬうちに」永岡議員の死を執行部批判に利用してしまいました。おそらく多くの良識ある日本人は、彼らのやり方に大いに眉を顰めたと思います。
本当に空気を読めない人たちですね。「空気を読む」というのも政治家にとって重要な資質だと思うのですが・・・。

Posted by: 藤田 | August 02, 2005 at 04:19 PM

>やすゆき様
 実に同感であります。発作的にこのような
行為に及んでしまったのだろうと思います。

Posted by: おおみや%NEET | August 02, 2005 at 06:18 PM

>やすゆきさん
うつになったときはゆっくり休むのが良い治療法なのですが、国会議員という立場ではそれもできなかったんでしょう。

政治家が精神的にきつい仕事だというのは分かるのですが、それでも何らかのメンタルヘルス対策はできないものなんでしょうか?小渕首相の急死も、精神的な原因は大きかったと思いますし。

Posted by: Baatarism | August 02, 2005 at 06:35 PM

うつは気力を無くし本当に酷い時期はむしろ死ぬことも逆に難しいと思います。投薬治療が進み、少しずつ快方に向かった時が意外に危険。自分も友人が躁とうつを繰り返しハイテンションの時の奇行に何度もヒヤヒヤさせられております(道路にパッと飛び出たり…)。
永岡氏も、ご家族のご苦労はお察し致しますが周囲の人達が今少し気を付けてあげて下されば…と。
せめて政治の世界を辞する勇気を持てるまでもう少し堪えて頂きたかった。

Posted by: かずら | August 02, 2005 at 09:01 PM

純粋な疑問なのですが、「イラクへの自衛隊派遣を決断した小泉純一郎総理が受けた「プレッシャー」は、到底、永岡氏の比ではあるまい。」というのはどのような根拠に基づくのでしょうか?政界でのご経験でしょうか?

Posted by: hsd | August 02, 2005 at 11:47 PM

みなさん。ありがとうございます。
亀井派も混乱しているようですね。
あの亀井氏の露骨さは、ちょっとなあと思います。
ところで、個別のコメントですが、ひとつだけ。
・hsdどの
「郵政のような内政ネタでは直接には人が死ぬことはないが、イラク自衛隊派遣のような外政ネタでは人が死ぬことがある」。「兵は国の大事なり」。政治家の決断の重さは、だいぶ違いますね。

Posted by: 雪斎 | August 03, 2005 at 04:09 AM

郵政問題そのものよりも、ご自分の政治生命(解散したあとの選挙で落ちたら、という意味で)の問題が大きいのではないかと思いましたね。
そもそものご病気もそういう要素が絡んでいたのでは。邪推になってしまうのでしょうか。
政治家たるもの、そういったことで悩んでいてるようなら政治家に向いてないのかもしれないですけれども、地盤を考えるとわからないこともないとも思いますね。

Posted by: politics | August 03, 2005 at 07:25 AM

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(要約)自殺者3万人時代、政治家のメンタルヘルス対策も重要であろう。ところで、私は永岡議員には同情的だが、亀井氏一派は振る舞いがやや粗雑だと思う。 [Read More]

Tracked on August 04, 2005 at 02:11 AM

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