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July 30, 2005

郵政政局の「潮目」

■ 昨日、『日経』は、「郵政法案を今国会で成立させよ」と題した社説を掲載した。社説は、次のように始まる。
 郵政民営化法案は参院での可決・成立が危ぶまれている。自民党議員のうち18人が反対すれば否決となるが、どのくらいが反対に回るか読めない情勢だ。否決となれば衆院解散・総選挙が予想され、郵政法案は雲散霧消するだろう。
 この法案にはいくつか問題があり本来は抜本的な手直しが必要と私たちは考える。しかし小泉純一郎首相が在任するこの機を逃せば、民営化は長期にわたり政治課題にならない可能性が大きい。その社会的、経済的なコストは計り知れない。
 ここは法案を成立させて、民営化を進める中でまともな形に改善するのが現実的な選択ではないか。良識の府、参院に日本経済の将来を見据えた正しい判断を強く期待する

 本日付『読売』も次のような社説を載せている。
  □ [郵政政局]「政治的な混乱は避けるべきだ」
 郵政民営化関連法案の参院審議が大詰めだ。与党は、8月5日の本会議採決を目指しているが、法案の成否は予断を許さない。いたずらに政治的な混乱を招くことは、何としても避けなければならない。
 郵政民営化関連法案は、やはり成立させる必要がある。法案が成立しないとなれば、郵政改革の挫折にとどまらず、日本経済の安定した発展の基盤作りにも影響する

 『産経』は、既に十日の社説で次のように書いている。
 問題は改革の行方だ。民主党は郵政民営化には組合との関係から慎重姿勢に終始した。自民党でも小泉首相でなければ、郵政改革は貫徹できまい。
 小泉政権の崩壊は、郵政改革にとどまらず、小さな政府の実現すら危うくしかねない。それだけではない。
 首相の靖国神社の参拝問題はどこかに消え、自民党憲法改正草案のとりまとめも推進力を失う。こうした事態を喜ぶのはだれだろう。
 首相は郵政法案の参院審議に対し「ゼロからスタート」と述べたが、これまで以上に説明責任を果たすべきである。自民党議員も否決で失うものがなにかを考えなくてはなるまい

 大体、郵政法案に対するメディアの旗幟は、明らかになりつつある。『読売』『日経』『産経』三紙は、法案賛成の論調を明示した。雪斎は、ピンクレディーのデビュー曲だった「ペッパー警部」の歌詞を思い起こす。 
 ♪ ペッパー警部 邪魔をしないで~ ペッパー警部 私たちこれからいいところ~ ♪
 景気は「踊り場」から脱しようとしているというのが、エコノミストの共通認識であるらしい。多くの人々は、景気停滞に苦しんだ歳月の後で、「私たちこれからいいところ~ ♪」と思っていることであろう。ところが、郵政法案が否決されれば、政局の混乱は避けられない。小泉純一郎内閣は、過去十数年にはない「本格内閣」になってしまったが故に、小泉総理退陣後の「喪失感」は内外に大きなものになるであろうし、それを埋め合わせる後任宰相の苦労は、並大抵のものではない。後任宰相への「移行期間」は、ある程度は確保されなければならないのであるし、その「移行期間」と位置付けられているのが、郵政法案成立以後の一年余りの歳月なのである。それ故に、現時点での政局混乱は、実は最もタイミングの悪いものとなる。それは、事態の推移によっては、「準備不足」の宰相を登場させることになる。それは、明らかに「景気の足を引っ張る」ものと意識されるであろう。『読売』社説にある「日本経済の安定した発展の基盤作りにも影響する」という記述は、少なくないメディアが、ペッパー警部ならぬ「郵政民営化反対派議員」に対して、「邪魔をしないで~♪」と唱え始めたことを示している。民営化反対派議員は、そうした「潮目」の変化をきちんと読んでいるのであろうか。「景気の足を引っ張った」という印象が政治家にとっては最たる悪評を意味しているということぐらいは、彼らも判っているはずである。
 雪菜は、郵政民営化法案は、参議院では、たとえ僅差でも可決し、成立するのであろうと思っている。「高き屋にのぼりて見れば煙立つ民のかまどはにぎはひにけり」と詠まれた仁徳天皇以来、統治の基本は、「かまどのにぎはい」に水を注さないことである。

■ 追記
  31日付『朝日』は、「郵政民営化 法案を可決すべきだ」という社説を掲げた。メディアの大勢は、既に決していたたようである。

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Comments

我が国の将来のこともあるし、衆議院の
センセイ方のクビのこともありますし、
いい加減空気よめって訳なんですなぁ
>造反無理組。

Posted by: おおみや%NEET | July 30, 2005 at 08:25 PM

ちょっとといいますか、相当うがった見方をしますと、郵政民営化をめぐる争点は、
①財政の規律を重視し、正統的な手段で財政再建の途を追求する
②いや、①の方途などもうムリポ。ここはガツンとインフレでも引き起こし、実質的な貨幣価値の切り下げによる、「徳政令」が現実的よ
ということではないかと愚考します。
②のスタンスに経つのであれば、やはりここはオカラ-コザワ-クダといった皆さんに一旦下駄を預けて、クチャクチャにしてもらうという道筋もそれなりに理にかなったものかとは思います。
尤も、市場の力をなめてかかる輩にはそれなりのお仕置きが待っていることと思いますので、私は是非②のルートが実現しないことを希求いたしますが。

含み損を吐き出し、一旦キャッシュポジションを高めておく局面なのでしょうか。
なお担当している夜間大学院の生徒さん(現役証券マン)曰く、不良債権処理がほぼ終わり、相場は解散総選挙の可能性も随分織り込んでいるので、短期的なショックは合っても無問題とのこと、悩ましい限りです。

Posted by: 小規模投資家@酔っ払ってカキコ | July 31, 2005 at 12:07 AM

> 小規模投資家@酔っ払ってカキコさん
オカラ-コザワ-クダというのは民主党の主要人物を揶揄した表現なのでしょうが、民主党の主張を見ると、小泉首相以上に①の方向に行ってるように思います。民主党はインフレ目標政策すら否定してますから。
今の日本の政界で、インフレで財政赤字を精算しようと主張する勢力はありません。だから②のルートが実現することは、今のところは心配しなくても良いと思います。

Posted by: Baatarism | July 31, 2005 at 12:59 AM

おおみやどの
「造反無理」ですか。これはおもしろい。
小規模投資家どの
Baatarismどの
法案否決のリスクは「市場」は既に織り込んでいるという観測は、その通りだとは思います。ただし、拙者が注目しているのは、そうしたリスクを強調しながら、法案賛成を打ち上げたメディアの判断です。随分、微妙なタイミングだなと思います。土曜日曜で地元に帰った反対派の議員の中には、「読売」「日経」を読んだ支持者(郵政関係を除く)から、「なぜ、反対なの」と云われた人々も、いるのではないでしょうか。

Posted by: 雪斎 | July 31, 2005 at 02:47 AM

>Baatarismさま

ちょっと品位を書いた表現でしたね。お許しのほどを。

民主党が小さな政府と財政規律をを志向しているのか否か、にわかには信じがたいものがります。
以前の道路公団総裁解任の件を一例に挙げてみますと(事の良し悪しは、小生、猪瀬氏の著作しか目を通して居らず、判断いたしかねます)、政府のトップにして相当てこずっていたように記憶いたしております。あの時つくづく思ったことは、利害関係が錯綜し行き着くところまで進んでしまったシステムに対しては、時の権力者とはいえ可能なことは極限られているのだろう、ということでした。
まして膨大な公的債務の削減という錦の御旗があっても、小さな政府への道のりは如何ばかり遠いものかと思わざるを得ません。
ならば、郵貯というお金の入り口を締める、あるいは市場原理に委ね、資金の取り手である公団等公的部門での支出の効率化を促す、直接公的部門を市場原理に委ねることは、迂遠であれ今考えられる中では最適解ではないかと強く考えます。

ここの議員のレベルでは、選挙区の事情から色々判断が出ることにも、共感はしませんが頭では理解ができます。しかし民主党が党として郵政法案に反対する論理とはいかなるものなのでしょうか?

まずは政権奪取から---政党の戦術レベルとしてはわからないでもありませんが・・・。巷間に喧伝されるよう「タナボタ」で与党となられたとき、民主党は一体何をするのか。よもや野党第一党が「空ろの衆」ということはあるまいとは思いますが・・・不安の種はつきません。

Posted by: 小規模投資家@今日も泥酔 | July 31, 2005 at 11:03 PM

>小規模投資家@今日も泥酔さん

>ならば、郵貯というお金の入り口を締める、あるいは市場原理に委ね、資金の取り手である公団等公的部門での支出の効率化を促す、直接公的部門を市場原理に委ねることは、迂遠であれ今考えられる中では最適解ではないかと強く考えます。

その件については、すでに2000年の財投改革で問題が解決されていると思います。
すでに解決されているはずの問題を今回の郵政改革の目的にするという理屈が、ちょっとよく分からないです。

郵政改革については、こちらの意見が的を射ていると思います。よろしければご覧下さい。
http://blog.goo.ne.jp/hwj-tanaka/e/85f9d6e4f423f0de2e18afdee48800a5

Posted by: Baatarism | August 01, 2005 at 02:27 PM

>Baatarismさん
ご指摘に感謝します。
しかし郵貯は国債を買う。また国債(の一部)は財投に回る。財投が公団等のかなりの資金を支えている。奇怪な構図がちらちら見えるようにも思えるのですが…小職も引きこもり生活に入り、ネット程度しか資料がありません。
もう少し勉強してみる必要はあるのですが…。

Posted by: 小規模投資家@にわか勉強 | August 02, 2005 at 10:54 PM

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