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July 17, 2005

「核」という死霊・続

■ 昨日正午過ぎの時点で、昨年末に『雪斎の随想録』を開設して以来の累計アクセス数が、30万を突破する。今まで来訪された方々には、謝意を表する。皆さん、ありがとうございます。

■ 昨日のエントリーで取り上げた中国人民解放軍将官の「核先制使用」発言に対する反応として、『日本経済新聞』は、次の記事を配信している。

  □ 米、中国人民解放軍少将の「対米核攻撃」発言を批判
 【ワシントン=加藤秀央】米国務省のマコーマック報道官は15日の会見で、中国人民解放軍・国防大学防務学院院長の朱成虎少将が「米軍が中国を攻撃した場合、中国は核兵器で対抗する」と述べたことに対し「極めて無責任で、残念な発言」と批判した。
 報道官は「米国は中国にとって脅威ではない」と強調。「少将の発言が中国政府の見方を反映したものではないことを望む」と語り、米中関係の悪化につながらないよう冷静に対処する方針を示した。

 『日経』記事の根拠 即ち米国国務省の7月15日付「プレス・ブリーフィング」の該当箇所は、次のようになっている。

QUESTION: I'm sure you saw the comments by the Chinese general on the question of whether or not China should reserve the right for a first strike against the United States to using nuclear weapons if it gets to that point. Any reaction on it?

MR. MCCORMACK: Well, I think that we would say that I hope that these comments don't reflect the views of the Chinese Government. I haven't seen all the remarks, but what I've seen of them, I would say that they were highly irresponsible. But again, we hope that these are not the views of the Chinese Government.

The United States is not a threat to China. We have a broad and deep relationship in which we are trying to -- we try to work closely with the Chinese Government on a variety of issues. The Secretary has talked about the fact that this is a relationship that is probably the best U.S.-China relationship we've seen in quite some time. There are mixed elements to it. But again, she was just there and had good discussions with Chinese leaderships. Secretary Zoellick is going to be traveling to China later this month to begin a strategic dialogue with the Chinese leadership. So we have, we believe, constructive -- good, constructive relations with China and I think that the remarks from that one individual are unfortunate.

QUESTION: So what about them is highly irresponsible?

MR. MCCORMACK: Well, I think, Jonathan, I think the remarks speak for themselves. I'm not going to try to dissect them. But I think that, again, given the relationship of the U.S. and China and the fact that the U.S. is not a threat to China, that those remarks are certainly unfortunate.
Yes.

 「米国は中国に対する脅威ではない」。この米国政府の姿勢は、北朝鮮にも示されている。ただし、こうした姿勢は、中朝両国から額面通りには受け入れられない。北朝鮮に限らず中国もまた、米国の圧倒的な軍事上の牽制に「怯え」を感じているのは事実であろう。しかし、たとえばカナダやメキシコの民は、隣国としての米国に「怯え」を感じているのであろうか。こうした中国や北朝鮮の「怯え」は、自らが「自由と民主主義」の価値観を持たず、国際社会の「アウト・ロー」的存在であることを自覚しているが故のものなのであろう。
 中国政府は、朱将軍にどのような責任を取らせるつもりであろうか。それとも、中国政府は、朱発言を「個人的な見解」ということにして逃げを打つつもりであろうか。中国が「言論の自由」を尊重する社会土壌を持つのであれば、そうした理屈付けは、ある程度までは納得を得られよう。しかし、そうしたことを信じる人々は余りいない以上、中国政府は、朱将軍発言を肯定も否定もしないままに有耶無耶にして済ますのであろう。そして、日本だけでなく米国にも、対中不信の感情が深く根を下ろしていくことになる。

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Comments

報道官が"hope"を繰り返していることが非常に気になります。一見、やわらかい表現にも読めますが、これが中国政府の公式県警ではないことの立証責任は中国政府自身にあるという突き放した発言とも読めます。

世間は連休中ですが、私はそうもゆかないのでまた考えが整理できたら、コメントさせていただきます。

Posted by: Hache | July 18, 2005 at 01:02 AM

>米国の隣国
カナダとメキシコは経済的にかなりアメリカとのつながりが出ているので、いまさら恐怖を持っても・・・といったところでしょうか。
(このあたりは、対円の米ドル・カナダドルの値動きが連動していることが多い、という点からも窺えます)

かつてそれなりにプレッシャーを感じていたであろうキューバにしても、自国内で米ドルが幅を利かす始末ですし・・・。

あとは、戦争で勝てる確証があるかないか(合理的かどうかは別として)、によって強気な発言の有無につながりそうですね。

>Hache さま
確かに報道官氏の「hope」の使い方が気になります。
暗に「きっちりけじめつけないと(略」と脅し(いや、諭し)ているのかもしれませんね。

Posted by: とーます | July 18, 2005 at 12:25 PM

慌てるといけませんね。なによりも、30万アクセスおめでとうございます。冷静に見て驚く数字です。

それにしても、物議をかもした元の発言があまりに粗暴なので呆れました。しかも、わざわざ"territory"に「中国の解釈では」とくどい断りまでつけて艦船と航空機を含むというのは偏執狂的な感じすらします。単に反米的な言辞を弄したというより、中国の軍部が台湾に対して強硬になっていて、そうした雰囲気に悪乗りする形で偏執狂的なお調子者が過激な発言をしたという印象でした。コメントすることが憚られるぐらいどうしようもない発言です。

>>トーマス様
私は英語力が乏しいですし、外交上の慣例にも疎いのでこういう場合の常套句かもしれません。ただ、お役人がお役所的なことは日本に限らないと思いますので、マコーマック報道官の発言が「アメリカは中国との関係を悪くする気はないんだけどねえ。向こうさんしだいだから」って意地悪く読んでしまうんです。いずれにせよ、素人の意味のない深読みですので読み流していただければ幸いです。

Posted by: Hache | July 19, 2005 at 01:16 AM

・hacheどの
・トーマスどの
ありがとうございます。このところの暑さで早くもへばっております。
さて、この朱将軍発言は、案の定、中国政府からは「黙殺」されそうです。やはりな・・・と思います。

Posted by: 雪斎 | July 19, 2005 at 01:53 AM

>雪斎先生
 本筋からそれる書き込みで申し訳ないのですが、
これから内外ともに政治の駆け引きが面白くなる
ところで、雪斎先生のするどいご分析が鈍ってしま
うのは、いささか残念な気もします。
 どうぞファミリーマートの鰻あたりで気合をいれて
がんばってくださいませm(_ _)m

Posted by: おおみや%NEET | July 19, 2005 at 11:49 PM

・おおみやどの
拙者は、気温25度を超えると「夏眠」状態になるのですな。銀座・竹葉亭の鰻で数日は「夏眠」までの期間が延びましたが・・・。東北人のDNAには「耐暑因子」はなかったようです。

Posted by: 雪斎 | July 20, 2005 at 03:13 AM

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