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July 19, 2005

ラッフルズの遺産

■ 昨日の『読売』が伝えた記事である。
  □ 「ラッフルズ」など41ホテル、米投資会社に売却へ
 【シンガポール=菊池隆】シンガポールのホテル事業大手ラッフルズ・ホールディングスは18日、同国を象徴する名門ラッフルズホテルをはじめ、日本のスイスホテル南海大阪(大阪市)を含むホテル事業(開業準備中を含め計41ホテル)を米投資会社コロニー・キャピタルに売却すると発表した。
 売却金額は現金で14億5000万シンガポール・ドル(約960億円)で、コロニーはラッフルズ側の負債も引き受ける。
 1887年に開業したラッフルズホテルは、英国の文豪サマセット・モームなどが愛用した。英植民地時代の風情を残す外観やバーの看板カクテル「シンガポールスリング」で知られ、日本から訪れる観光客も多い。ホテルを運営するラッフルズ・インターナショナル社ごと売却するため、営業は売却後も現状のまま続けられる。

 「ラッフルズ・ホテル」は、雪斎が一度は泊まりたいと思っていたホテルである。雪斎は、巷間、「親米派の知識人」と呼ばれているけれども、趣味、嗜好の点からすれば完全な「親英派」である。中でも、雪斎は、「ラッフルズ・ホテル」に名を刻んだトマス・スタンフォード・ラッフルズ(Thomas Stamford Raffles)には、かなり興味を抱いていた。ラッフルズは、植民地行政官にして博物学者である。ラッフルズのことを考える上で興味深いのは、次の二書である。
  ○ ナイジェル・バーリー著、柴田裕之訳『スタンフォード・ラッフルズ』
  ○ 白石隆著 『海の帝国―アジアをどう考えるか』
  ○ 川勝平太著『文明の海洋史観』
 川勝教授によれば、「東南アジア多島海は自由貿易の発祥の地であった。イギリス人は東南アジアで自由貿易を学び、それをイデオロギーにした。自由貿易はアングロ・サクソンの専売特許ではない。その原形は東南アジアにある」とのことである。今、世界を覆うアングロ・サクソン型の「市場経済」を前にして「反米感情」を剥き出しにする人々は多いかもしれないけれども、その議論に若干の奇妙さが拭えないのは、彼らが批判しているのが、アングロ・サクソンに特殊なものではなく、アングロ・サクソンが東南アジアの民から吸収したものであるからである。近代以前、東南アジアには、華僑・ブギス人商人を主体とした「国家権力」不在のネットワーク型通商秩序が成立していた。そうした東南アジアの特性を受け容れながら、東南アジアに「近代国家」の枠組を付与しようとした人物の代表格が、ラッフルズであったのである。因みに、ラッフルズが東南アジアに来たのは19世紀初頭であるけれども、既に日本人は17世紀初頭に現地の各所に「日本人町」を形成して、その「国家権力」不在のネットワーク型通商秩序の中で活躍していたはずである。もしかしたら、日本が徳川幕藩体制期に鎖国をしていなければ、そして日本人がイデオロギーを構築する能力を有していたならば、アングロ・サクソン型「市場経済」論理と呼ばれているものは、日本型「市場経済」論理と呼ばれていたのではないかと想像する。

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Comments

ラッフルズは古い割りに高いので、観光資源としてはともかく、宿泊は別の場所にされることをお勧めいたします。

かんべえが土産物を買いにいったとき、たまたま通り雨が降ったので、それがちょいと嬉しかったのでした。いいでしょ、ラッフルズで雨宿り。

Posted by: かんべえ | July 19, 2005 at 11:21 AM

ぐっちはもっぱらバーのみ利用です。かんべえ先生おっしゃるとおり泊まるならすぐそばのリッツカールトンが遥かによいです。バーは結構雰囲気あります。ビールしか飲みませんけど・・・失礼しました!!

Posted by: ぐっち | July 20, 2005 at 08:37 AM

かんべえどの
ぐっちどの

シンガポールに行くときは、リッツ・カールトンに泊まり、ラッフルズのバーで「シンガポール・スリング」をあじわうという方向でいきたいと思います。

Posted by: 雪斎 | July 23, 2005 at 11:39 PM

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