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July 13, 2005

大和魂また我国の一手独専に非ず

■ 「当地昨今吉野桜の満開、故国の美を凌ぐに足るもの有之候。大和魂また我国の一手独専にあらざるを諷するに似たり」。
 山本五十六は、ワシントン駐在武官時代に故郷の恩師に送ったポトマック河畔の桜の絵葉書に、このような言葉を書き添えた伝えられれている。ワシントンの「さくら祭り」については、こちらのサイトに詳しい。山本が観た「ワシントンの桜」は、日米友好の象徴であったのである。

 山本は、ポトマック河畔の「桜」に擬えながら、日本人にとって美しいと思われているものが、別に日本にあるが故に美しいのではなく米国においても美しいものであることを示すことにとって、「夜郎自大」の弊を説こうとしたのである。
 因みに、「溜池通信」「不規則発言」欄では、かんべえ殿による『エコノミスト』記事の抄訳の一節が紹介されている。
 「攻撃を受けたことで、ロンドンっ子たちがかえって普通の生活を取り戻すように決意することは疑いがない。ロンドンが何十年もIRAのテロ攻撃を耐えてきた事実がなかったとしても、歴史がロンドンをしたたかにしてきたことは信じてよいだろう」。
 第二次世界大戦勃発後、ナチス・ドイツとの孤独な「バトル・オブ・ブリテン」を闘った際の「ジョン・ブル・スピリット」を感じさせる記述である。雪斎は、この「ジョン・ブル・スピリット」には香しいものを感じる。「9・11」は、米国国民の「ヤンキー・スピリット」を、「7・7」は英国国民の「ジョン・ブル・スピリット」を奮い立たせた。確かに、、「大和魂また我国の一手独専に非ず」なのである。
 国事を考える折には、この「大和魂また我国の一手独専に非ず」という感覚は、大事なものであろう。というのも、国の現状を憂えるという動機付けで物事を考える人物は、往々にして度し難い視野狭窄に陥ることがあるからである。だからこそ、勝海舟は、「憂国の士が国を滅ぼす」と喝破したのである。善意や大義を背負ったと自認する人物は、自分の振る舞いが周囲からどのように受け止められるかということには、思いを致さない。そうした視野狭窄、自己愉悦は、率直に迷惑この上ないものであろう。
 昨日の『読売新聞』は、「2・26事件、将校ら17人の遺書発見」という見出しのの記事の中で、「大君(おおきみ)に 御國(くに)思ひて 斃(たお)れける 若き男乃子(おのこ)の心捧(ささ)けん」という栗原安秀中尉の辞世の句を紹介している。しかし、この栗原中尉の辞世の句には、自らの行為が昭和天皇の「股肱の臣」を奪い、帝の宸襟を悩ませたという結果に対する認識は、微塵も伺えない。雪斎は、自ら「保守主義者」を名乗る人物と同様、自ら「憂国の士」であると称する人物も、心底では信用しないことにしている。

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「国際情勢」カテゴリの記事

Comments

学生時代、卒論が「北一輝と226事件」でしたが、当時は碌な
論考もできませんでした<反省

で、その当時も今も226事件の反乱将校らに対しては感情的に
いやな物を感じます。

はっきり言って傲慢で粗暴です。
老人(首相)に数十発の銃弾を浴びせられる心根が異常です。
ネオナチと何が違うのか、と思います。

もっとも本人らは「陛下に刃をつきつけてでも従ってもらう」と公言
してますので、その忠臣ぶりは明らかですが(笑

Posted by: ぺパロニ | July 13, 2005 at 09:33 AM

私も「憂国」という言葉を旗頭に、過激な行動を行なう人間達には、ほとんど共感を覚えません。
「勝海舟は、『憂国の士が国を滅ぼす』と喝破した」というお話は、初めて伺いました。しかし、自分を暗殺しようとした「憂国の士」坂本龍馬を見事教え導き、大事をなさしめた彼ならではの言葉であると納得いたしました。
勝海舟という人物は、現在でも「あの坂本龍馬の師」として有名ですし、再評価もされているとは思いますが、彼の多大なる功績と比べるとまだまだその評価は低いんではないかと思います。

Posted by: 藤田 | July 13, 2005 at 05:53 PM

「憂国」だろうが「共産主義」だろうが思想的ベクトルの
向きはどうあれ、思慮が足りずに過激な行動に出る人
なんて、そりゃぁ信用なりませんわね。

Posted by: おおみや%NEET | July 13, 2005 at 09:47 PM

高貴な話題に下世話なレスをつけてしまうことをお許しください。私は政局とか政治の実際には疎いので、「どうなっちゃうんだろう」と思うと、ある政治評論家の先生のHPを拝見いたします。この数年、私がこうなってほしくないということが、その先生が「べき論」として述べられていると、安心いたします。表現はよくないのですが、なんとかとハサミは使いよう・・・などと言っていると、わが身に災厄が降りかかりそうなので、このあたりで失礼いたします。

Posted by: Hache | July 14, 2005 at 09:00 AM

その政治評論家って、あの逆神・森*先生のことでしょうか(笑)
Extremistは別として、日本の保守化は膨大な(?)金融資産を背景にした、債権者としての資産保全という意識も強く働いているのでは、などとつらつら考えます。

Posted by: 小規模投資家@含み損 | July 14, 2005 at 09:42 AM

・ペパロニ殿
・藤田殿
・おおみや殿
ところが、そうした「憂国の士」は世間では、もてはやされてきたのですな。
・hache殿
・小規模投資家殿
その「逆張り神」によると、「次」は亀井氏とか…。拙者は、その「分析」の根拠を知りたく存じます・

Posted by: 雪斎 | July 14, 2005 at 10:56 AM

>>雪斎さま
森○氏だけでなく、世に言う曲げ師(予想が正反対に外れる方)は、威勢がいいもの・声の大きいものについつい惹かれてしまうのではないでしょうか?(笑

株の北○、選挙の福○、軍事の田○元帥などの話を聞くと、どうもそんな気がしてなりません・・・。

Posted by: とーます | July 14, 2005 at 09:39 PM

>とーます様
 はじめまして。なるほど、予想ってこうやって
曲がっていくのかと、感心した次第であります。

Posted by: おおみや%NEET | July 14, 2005 at 10:47 PM

>小規模投資家さま
私もその側面が強いように思います。在外資産からの金利収入で食ってるという面もあるので。
ただ、これは投資と契約による正当な権益なのですが、途上国にはしばしば「先進国の利権、現代の植民地」などと言う人間がいる事を忘れてはいけないでしょうね。その意味でも、安全保障政策の近隣アジア地域限定を言い出すのは稚拙だと言う事は明白なのですが・・・・

Posted by: カワセミ | July 14, 2005 at 11:28 PM

こんばんは。2週間近く古い記事にTBさせていただきました。
極端・偏狭な思想に陥っていく人が居ますが、なぜなんでしょうね?

Posted by: やすゆき | July 30, 2005 at 03:44 AM

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Tracked on July 30, 2005 at 01:33 AM

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