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July 09, 2005

「グレンイーグルズ」の顛末

■ 去る八日、トニー・ブレアが発表した「グレンイーグルズ・サミット」議長総括の骨子は、『共同通信』記事によれば次の通りである。
 ▽ロンドン同時テロ
 グレンイーグルズに会合したすべての世界の指導者は、ロンドンでの野蛮な攻撃を非難した。テロリストは成功していないし、これからも成功しない。われわれはテロ対策への取り組みを強化することを決意する。
 ▽アフリカと開発
 アルジェリア、エチオピア、ガーナなどの指導者が議論に参加。繁栄したアフリカのために道徳的確信を共有した。2010年までに開発途上国向け支援を年間総額で500億ドル増加させ、そのうち対アフリカ支援は年間総額で250億ドルとなる。
 ▽地域情勢
 北朝鮮をめぐる6カ国協議を支持。北朝鮮の迅速な協議復帰と核兵器関連計画廃棄を要請。北朝鮮は人権状況、拉致問題に関する国際社会の懸念に応える行動を取っていない。

 「グレンイーグルズ・サミット」開幕直後の雰囲気jは、『産経新聞』が配信した記事によると次のようなものであった。
 今回で三十一回目となった主要国首脳会議。世界の政治・経済を左右する首脳が、直面する世界の問題にどう取り組むかが注目されるが、「今回ほど盛り上がりに欠けるサミットもないのでは」(外務省幹部)との声も漏れる。アフリカ支援と気候変動という主要テーマが、重要なわりに“地味目”なことにもよるが、各首脳とも国内問題で頭が痛く、サミットどころではないという“お家の事情”も影響しているようだ。 
 どことなく「気だるい会議」の様相を一変させたのは、ロンドン地下鉄テロの発生である。事件発生直後、トニー・ブレアは、サミットに参加した首脳らとともに「野蛮な攻撃」を非難し、「われわれは一致団結してテロに立ち向かう」とする緊急声明を発表した。トニーブレアが、ジョージ・W・ブッシュとジャック・シラクに脇を固められながら声明を発表していた様子は、中々、「絵になる」ものであった。そして、国連安保理は緊急会合を開き、事件を非難する決議案を全会一致で採択した。『ロイター通信』が伝えたところによれば、英国が提出した決議案は、「2005年7月7日にロンドンで起きたテロ攻撃は断じて許さない。あらゆるテロ行為を平和と安全への脅威とみなす」とし、全ての国に対して「こうした野蛮な行為の実行犯、組織者、そして援助者を発見して裁くため積極的に協力」するよう強く求めた。
 このように観れば、此度の破壊活動は、結局、特にG8構成国(プラス中印両国その他)の「虎の尾を踏んだ」結果に終わることになりそうである。テロリスト・グループが此度のオペレーションにどのような「意図」を込めていたかはともかくとして、「気だるい会議」を「対テロ国際協調の確認の場」に変質させたのは、テロリスト・グループには大いなる「誤算」であったという他はない。
 因みに、来年のサミット開催地は、サンクト・ぺテルブルグである。ホストは、かのKGB出身のウラジーミル・プーチンである。プーチンは、「昨年のロンドンを思い出そう」とでも呼びかけ、テロリズム撲滅を大義に据えながら、余り評判が良いともいえない自らの対チェチェン政策に対する理解を求めることになるであろう。現在のプーチンは、明らかに「強権」の色彩を強めているのであるけれども、「砂の社会」と呼ばれるロシアでは、社会に秩序を付与するためには、ある程度の「強権」は歓迎されるという事情がある。余程のことがなければ、来年のサミットは、テロリズム対処が議題として設定されることになるであろう。加えて、ロシア絡みの経済事象でいえば、エネルギーの供給の問題が議論されるのであろうか。
 ところで、国際社会はテロリズムに対する「耐性」を身に付けているようである。「9・11」の折には、国際経済情勢も、暫くの間、混乱を余儀なくされた。此度に関していえば、各国市場の反応は冷静なものであった。ロンドン株式市場平均株価(FTSE100)は、テロ当日は大幅に値を下げたもの翌日には既に値を戻している。ニューヨークではテロ後の二日、値を上げている。東京も、金曜日に日経平均株価が下がったものの、それは国内経済指標の悪さに因るものであって、テロに影響されたものではない。テロに一々、影響されないという「耐性」は、テロリスト・グループの「意図」を挫くという意味でも、大事な条件であろう。、

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Comments

「テロ」というと、昔は要人テロを思い浮かべたものですが、アルカイダのおかげでとにかく派手にたくさん殺すことがテロになりました。それだけテロをする側に無力感が強いのでしょう。民主主義国相手に最悪の手段を使っているようにしか見えないです。

他方でテロを根絶するのは難しいと考えます。とくに反米を目的としたテロは、アメリカが世界秩序の中心であり続ける限り、なくならないのかもしれない。「耐性」というのはなるほどで、テロを完全に防止するのは難しいかもしれないけれども、生じた後の被害・損害をできるだけ抑える工夫も考えてゆかないといけない。総じて安全に必要な費用は高くなる。自由諸国はそれに応じる姿勢を断固として示すことが大切だと思います。

同時に、テロリストを監視するには市民的自由にある程度の制限をかけざるをえないでしょう。ハイエクの集産主義の説明は、あまりに経済学に偏りすぎていると思います。戦争の準備と集産主義は密接に関係していると思います。テロへの対策が行過ぎれば、私たちの社会の根幹を揺るがしかねない。市民的自由を最大限保障し、なおかつテロ対策を行うという意味でも自由諸国は価値ある課題に挑戦してゆくことになるのでしょう。

Posted by: Hache | July 10, 2005 at 03:22 AM

ご無沙汰しています。今日は日経が大幅高、TOPIXはとりあえずプラスと、テロの影響はあまり感じませんね。

今回のテロで一番大きな影響、と思われるものとしてはポンドの全面安ぐらいでしょうね。
こちらについても、利下げなどもともと下げる要因が強く、がけっぷちにいたところを「テロ」で後ろから押されて、大幅安になったという側面があるので、今の水準まで下落するのは時間の問題だった、と取れそうな値動きでしたね。
(底でポンドの空売りをしかけてえらい目にあってます・・・)

9/11の時ですら、相場への大きな影響が観測されていない以上、今回の影響も限定的といえそうです。
そのときの相場については、こちらが詳しいです。
http://www.mr-sec.com/contents/chart/2001chart.php
(相場がもともと下げ基調だったようですね)

Posted by: とーます | July 11, 2005 at 10:00 PM

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Tracked on July 10, 2005 at 08:08 AM

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