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June 11, 2005

米韓関係の現実

■ 韓国『朝鮮日報』「記者手帳」欄では、「『ブッシュ牧場』への道」と題した次のようなコラムが載っている。
 盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領の米国訪問を準備してきた韓国政府がついに実現できなかったことが2つある。その一つは、米議会本会場での演説だ。
 金大中(キム・デジュン)前大統領は就任初期、米国を訪問して上下院議員らの前で英語で演説を行った。英語の発音はいまいちだったが、民主主義の価値を力説した同氏を米議員らは総立ちで歓迎した。
 盧大統領は金前大統領のような姿を演出するために多角的に努力した。ワシントンを訪問した野党の中堅議員にも頼んだほどだ。
 しかし、米議会の反応はそれほど好意的ではなかった。共和党も、民主党指導部もいざ話がそっちに流れると知らないふりをしたりしたという。
 外国の首脳にとって米議会の本会場は敷居が高い。
 盧政権はまた、今回の首脳会談をブッシュ大統領のクロフォード牧場か、キャンプ・デイビッドで開くことを希望していたが、米国は最後までこの要請に応じなかった。
 クロフォード牧場にはプーチン・ロシア大統領、江沢民前中国国家主席らが訪問している。先日にはイラク戦争に戦闘兵を派遣したオーストラリアのハワード首相が招待された。
 これら首脳はブッシュ大統領が直接運転するピックアップトラックに乗って牧場を一周したりした。
 キャンプ・デービッドにはブレア英首相が数回訪問している。肩を並べて森の中を歩く両国首脳の姿はしばしば新聞の紙面を飾る。
 盧大統領はホワイトハウスでの首脳会談と晩餐会を最後に、ブッシュ大統領との日程を終える。
 米国が盧大統領を冷遇するのではないかという向きもあるだろうが、これが米国における韓国のステイタスである。
 米議会の本会場と「ブッシュ牧場」に招かれるほど、米国の外交リストにおける韓国のランクは高くない。
 このような冷静な外交の現実を認識できないまま、「対等な外交」ばかりを唱えていたら、韓国大統領にとって「ブッシュ牧場」への道は遠くなるだけだ。

 このコラムでは、小泉純一郎総理もまた「ブッシュ牧場」に招かれた一人であった事実は、言及されていない。従来、ジョージ・ブッシュは「最も信頼できる国の首脳」を「ブッシュ牧場」に招待し、宿泊してもらっていた。 これまで招待された首脳は、トニー・ブレア(英国)、ホセ・マリア・アスナール・ロペス(西国)、ロン・ハワード(豪州)、ウラジーミル・プーチン(露国)、そして小泉純一郎の五名を数えるのみである。ブッシュは、私邸というブライベートな空間を共有させることによって、自らにとっての「国家の格付け」を行ったわけである。それは、アメリカ人らしいといえばアメリカ人らしい振る舞いである。因みに、江沢民は、私邸に招かれはしたけれども、宿泊まではさせてもらえなかった。ブッシュにとっては、アジアでは、小泉総理執政下の日本が「唯一無二の同盟国」なのである。

 この現実は、韓国国民には、どのように受け止められているのであろうか。此度の米韓首脳会談でも、この「扱いの差」は、かなり露骨に表れたようである。
 結局、米韓両国の「溝」は、余り埋まっていなかったようである。たとえば、AP通信が配信した〈Bush, S. Korean Leader Differ on N. Korea〉という記事は、ブッシュがノに対して「米韓両国は、非核の朝鮮半島という同じ目標を有している」と語ったことを伝えているけれども、「ブッシュとノが総ての議題で判り合えたわけではないのは、明瞭だ」という見方を示している。また、IHTの記事によれば、ノは、「米韓両国は基本的な原則について全面的かつ完全な同意に達している」と語っているけれども、この発言は、実は何も語っていないのと同じことである。「非核の朝鮮半島」を実現するといった総論は、既に何度も語られてきた。政治家が用いる「問題は皆無」、「完全な同意」などという言葉は、その裏にある多くの「差異」や「軋轢」を糊塗するものとして使われる場合が多いけれども、ノの発言は、その最も判りやすい事例であったといえるであろう。
 雪斎は、此度の米韓首脳会談では、実質的なことは何も決まらなかったのではないかと見ている。政治は、結局、「人間関係の産物」である。ノが小泉総理に対抗心を持っていたとしても、「ブッシュ・コイズミ」同盟と同じくらい親密な「人間関係」をノがブッシュと築いていない以上、ブッシュが小泉総理と同じ待遇をノに与えるわけにもいかないであろう。本日昼刻、放送されたNHKニュースは、ブッシュがノに対して「日米韓三ヵ国連携」の維持を求めたと伝えているけれども、これは、ノが弄んだ「韓国バランサー論」の否定をも意味しよう。今後、ブッシュ政権は、「日米韓三ヵ国提携」の維持に向けて韓国が具体的に何を行うかを注視することになる。ブッシュは、ノが「日米韓三ヵ国提携」の趣旨に韓国政府がどれだけ誠実に振る舞うかによって、今後の韓国の扱いを決めることになるであろう。ノがブッシュから申し渡された「宿題」は、国内の反日気運や反米気運に乗じて政権に就いたノにとっては、だいぶ難儀なものになりそうである。振り返れば、ジョージ・F・ケナンは、米国がどうしても守らなければならないのは、欧州と日本だけだと語っていた。韓国政府は、そうした米国の極東戦略における位置付けの「対日格差」を自覚すべきであろう。

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Comments


ブッシュの顔を見てたら、「北朝鮮問題さえなければ、こんな不愉快なやつと会わなくてもいいのに・・・」と言ってるように見えました。

それにしても韓国の立場は痛すぎる。その辺の心理状況については、↓このエントリーが上手く説明していると思います。

http://blog.goo.ne.jp/kitanotakeshi55/e/fc8b1916f59f968a81ef45807dff925e

Posted by: かんべえ | June 11, 2005 at 07:51 PM

 韓国以外の国から見れば、おおよそ「身の程知らず」としか思えないような「韓国バランサー論」ですが、この危険な戦略の源泉は一体何なのでしょうか。
 私の全くの素人考えですが、どうも彼らの自家撞着的な歴史観に原因の一端があるのでは、と思うのです。
 彼らの歴史観では、古代から中世そして近世に到るまで、文化的・文明的に日本を圧倒し、中華帝国とも属国としてではなく、「協調」してうまく付き合っていた、ということになっております。つまり、彼らの歴史観の中には、自国が「周囲の大国に挟まれてそれに翻弄される弱小国」であったという認識はほとんど無いものと思われます。
 「我国は決して周囲の強国に如何こうされるような弱小国ではなかった」というあまりにも自己撞着的な歴史観が、現在の彼らをして危険な「バランサー論」を打ち出させているのではないでしょうか。

Posted by: 藤田 | June 11, 2005 at 10:14 PM

冷静に自国のおかれてる状況と自国の実力を
見さだめられないばかりに、国を誤らんとしてる
かの如くに見える隣国。でも、これと我が国の
状況を重ね合わせると、「愛国心」をいかに教育
すべきか、に何らかの指針が与えられそうな
気もするのです。

Posted by: おおみや%NEET | June 11, 2005 at 10:45 PM

韓国人の心理状況の分析はあまり当てにならないと思います。村山談話は歴史認識を共有しなければ外交ができないみたいで幼稚な話だと思います。残念ながら、経済は成長したものの、東洋は外交においては西洋には及ばないのかもしれないとも思います。もっとも、極東に集中していて、感情論の原因の一つが戦前のわが国に振る舞いにあること自体は否定できないとは思いますが。

「東洋人の精神の背後にあるものを見出そうとして時間を浪費してはならない。多分その背後には何もないかもしれないのだ。それより、君の精神の背後にあるものに関して、どのようなことであれ、彼が些かも疑うことのないよう専心したしたまえ。」

Posted by: Hache | June 12, 2005 at 02:01 AM

・かんべえ殿
 期せずして同じネタを使ったようですね。
 それにしても、わざわざ「韓米同盟は強固ですよね」とブッシュに同意を求めたノ・ムヒョンは、かなり痛々しかったと思います。
 ところで、ご紹介のブログは、面白かったです。 「韓流ブームの盛り上がりですら、韓国人は馬鹿にされていると感じる」という件は、なるほどなと思いました。

・藤田殿
朝鮮半島のメンタリティーとして、しばしば指摘されるのは、「小中華」思考ですね。「小中華」思考は、「中華」思考よりも先鋭だということですので、この思考が残っていると、たとえば「東夷」の日本が自分よりも大きくなっているのは、耐え難いことなのでしょうね。

・おおみや殿
韓国は、前世紀の「亡国」の歴史を日本のせいにすることによって、自らのうちにあった「亡国」の因から眼を背けているようなところがあります。今のままだと「亡国」の道へまっしぐらということになりかねません。

・hache殿
過度に「一般化」できないのも、当然でしょう。

Posted by: 雪斎 | June 12, 2005 at 09:09 AM

民主主義という手垢のついた言葉で説明できるかどうかわからないのですが、韓国はまだそれに成熟していないのだと思います。ノ・ムヒョンを支持するものが韓国すべてを代表するとも思えません。ついこの間の金大中だって、ある種政治的リアリズムも持ち合わせていました。日本は、韓国のリアリスト達ともうすこし連携できないかなと思います。朝鮮半島で民主的リアリズムをメジャーなものにすることは、日本にとっても大事です。いや、ノムヒョンのばかばかしさは、韓国人だってわかりすぎるほどわかっちゃってると思うんですけどね。

Posted by: soulnote | June 12, 2005 at 10:01 PM

・soulmate殿
韓国のメディアには、「バランサー論」に懐疑的な向きがあります。外交通商省も政策決定から外されているようです。ノ・ムヒョンだけの問題ならば望みはありますが…。

Posted by: 雪斎 | June 14, 2005 at 06:07 AM

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