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June 10, 2005

国連安保理再編への疾走

■ 『読売新聞』は、「新理事国の拒否権15年凍結、日本など修正案を提示」の見出しで次の記事を配信している。
 【ニューヨーク=白川義和】国連安全保障理事会の常任理事国入りを目指す日本、ドイツ、インド、ブラジルの4か国グループは8日、安保理拡大の枠組み決議案について、新常任理事国の拒否権を「国連憲章改正発効から15年後の見直しまでは行使しない」とすることを柱とした修正案をまとめた。
 事実上の最終案となる見通しで、すでに主要関係国には提示している。4か国は同日夕(日本時間9日朝)、賛同国数十か国を集めての説明会をニューヨークで開く。
 読売新聞が入手した修正案によると、拒否権は原則保持としたうえで、「見直しで新常任理事国にも拒否権を拡大するか否かが決まるまでは、新常任理事国は拒否権を行使しない」と明記された。
 5月に4か国グループが提示した草案では、見直しは2020年に概括的に行うとしていたが、現常任理事国が「既得権が侵されかねない」と反発したことから、修正案では見直しの対象を新常任理事国に限定した。また、見直しの年は2020年と特定していない。
 4か国は7月にも枠組み決議案を総会に提出し、採択したい方針だが、中国や反対派グループは早期採決に強い反対を示しており、激しい攻防が展開されそうだ。

 この修正案を眼にしたとき、雪斎は、日本政治の「曖昧さの発揮」という芸当が再び披露されたと思った。「有しても使わない」という理屈は、集団的自衛権の扱いに始まり核開発の能力に至るまで、御馴染みのものである。雪斎は、集団的自衛権の扱いだけは、この理屈に依るのは止めるべきだと思っているけれども、国連安保理再編のような事例では、「曖昧さの発揮」は大事なことであろう。

 早速、この「拒否権凍結」という施策は、成果を挙げたようである。『時事通信』は、「国連安保理の常任理事国入りを目指す日独など4カ国(G4)は8日、安保理改革の枠組み決議修正案を提示、全加盟国を対象に説明会を行った。フランスは修正案を評価、共同提案国になる方針を表明した。現常任理事国5カ国(P5)の中で共同提案に名乗りを上げたのは、フランスが初めて」と伝えた。日独印伯四ヵ国のラインにフランスが乗ってきたのだから、これは「成果」である。雪斎は、小泉純一郎総理がジャック・シラク大統領に謝意を伝える電話を掛けている光景を想像する。
 さて、問題はこれからである。イラク戦争に至る過程では、英米両国と独仏両国との間に亀裂が走り、日本は英米両国を支持する側に回ったけれども、安保理再編に限っていえば、日本の「同盟国」は独仏両国である。時間の制約があるかもしれないけれども、イラク戦争時の「誼」を生かして英米両国にも修正案共同提案国になってもらえるように働きかけるべきであろう。米国はドイツの常任理事国入りに難色を示しているようであるけれども、日本は、そうした米国の姿勢を再考するよう促す必要がある。国連安保理再編に伴う工作が、英米両国と独仏両国を「架橋」する作用も持つならば、それは意義のあることである。中国政府が対日感情に眼を曇らせて修正案それ自体に反対する姿勢を示している以上、英米両国の「抱き込み」は極めて大事なステップになるはずである。
 ところで、北岡伸一先生(国連次席大使)が執筆した論稿「戦後日本外交における国連」が、外務省ウェブ・サイト上に載っている。北岡先生は、この論稿の中で、「仮に日本が常任理事国になれなくて、上記のいくつかの国がなったとしたら、常任理事国入りに消極的な論者は、これを歓迎するだろうか。一転して、政府外務省の失敗を非難するのではないだろうか」と書いているけれども、雪斎は、その懸念を共有する。政府批判に忙しい従来のマス・メディアの習性を考えあわせれば、常任理事国入り失敗の折には、新聞や雑誌に「日本外交の失敗」といった見出しが躍ることなど想像するに難しくないからである。
 国連中心主義という考え方を支持したのは、従来、リベラル層であった。保守層には、そうした経緯に対する反発の故にか、国連に対する冷笑的な眼差しを向ける傾向があった。しかし、国連安保理は、既に半世紀以上の歳月を刻んだ「影響力行使の老舗舞台」である。そうした老舗舞台にメーン・キャストとして立てる機会が巡っているときに、その機会を生かそうとしないのは愚かなことである。雪斎は、現下の日本外交団の努力を熱烈に応援する。機会が何度でも巡って来るなどと考えてはならない。

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Comments

>政府批判に忙しい従来のマス・メディアの習性を考えあわせれば、常任理事国入り失敗の折には、新聞や雑誌に「日本外交の失敗」といった見出しが躍ることなど想像するに難しくないからである。

 鋭いご指摘だと思います。まさに目に見えるようですね(笑)。
 「国連中心主義」を唱えるマスコミや論者ほど、日本の常任理事国入りには消極的であるという極めて奇妙で不可思議な行動をとります。そしてもし日本が常任理事国になれなかったら、自分達が望む結果になったにもかかわらず、ヒステリックに政府を批判するのがこの手の人々の行動ですね。
 彼らにとっては、ただ政府を批判することだけが目的であって、日本が今後どう国際社会で生きていくべきかという指針を全く持っていないことを、彼らの不可思議な行動は示していると言えるのではないかと思います。
 

Posted by: 藤田 | June 10, 2005 at 10:19 PM

国連の常任理事国入りだけな何としても果たす必要があると思います。庶民にとっても国連は象徴的なものですので、(また庶民は象徴的なものに弱い)現政権・政府のポイント稼ぎにもなります。また、外交上でも軍事力ではなく、国連の立場からはっきりと物申し、はてまた調整役にまわり、しっかりとお金を出すことは日本の国益に適います。ODAこそ日本の最大の武器ですので、ODAと国連常任理事国がセットになる必要があります。雪斎さんが言われるように、最低でも国連公用語に日本語を入れるべきですし、どんな手段でも今回は常任理事国になる必要があります。そこに「曖昧さ」を発揮することについては、私の理解を超えておりましたが(笑)。
ちなみに「東洋経済」は23頁です。雪斎さんの占める位置は大きいかと。また、マスク・マンでいるのはもう無理ではないかと思いますが・・・(笑)。

Posted by: ファガスの森 | June 10, 2005 at 11:32 PM

・藤田殿
町村外務大臣が米国への働きかけを強めると表明したようです。やはり。考えていることは、そう変わらないなと思いました。

・ファガスの森殿
「東洋経済」記事は見ました。思いっきり実名が晒されていましたな(汗)。サイバー空間だけでも、「千の顔を持つ男」と呼ばれたミル・マスカラス「(ううっ、古っ)の気分を味わってみたかったのですが…(苦笑)、

Posted by: 雪斎 | June 11, 2005 at 07:57 AM

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先般の国連総会以来、国連安保理改革に関する議論が高まりを見せています。 一般的に考えて、日本が拒否権を持つ常任安保理国となることは良いことだと思います。日本の経済規模、国連拠出金、昨今の国際問題への積極的な取り組みから見ても、その地位に値する責任は果たしていると思います(憲法9条については、意見が分かれるところでしょうが、対外的な意味において大きな障害になることはないと思います)。 日本の常任理事国入りについて文句のある国は実際のとこ... [Read More]

Tracked on June 10, 2005 at 11:01 AM

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