「対中カード」としてのロシア
■ 世の中には、当初は誠に地味な動きであるけれども、後々に「大きな波」となって時代を動かすものがある。
たとえば、次のニュースは、どうであろうか。
自民党の森喜朗前首相は13日、ロシア訪問に出発。同日深夜サンクトペテルブルクに到着し、14日にプーチン大統領と会談する。森氏と大統領の会談は今回で計10回目。個人的信頼関係を生かし、懸案の大統領の早期訪日を促す。森氏は会談で、北方領土問題や、東シベリアのパイプライン建設計画についても意見交換する。
また、小泉総理も、嫌らしいことをやっているなと思う。中国の影響力をそぎ落とすためなら「鬼」にでもなるという雰囲気である。
ロシアの東方拡大の経緯を高校の世界史教科書を開く感じで確認しようとするならば、こちらのサイトが判りやすいと思われる。
要するに、1689年のネルチンスク条約以降、キャフタ条約、アイグン条約、北京条約に至るまで、清帝国の版図は侵食される一方であった。中国にとっては、「北方からの脅威」は、昔から変わらない。方や、ロシアには、「タタールのくびき」から脱して自らの国を作ったという民族的な記憶がある。中露両国には、表面上は「平静が演出された場合でも、その裏には拭い去ることのできない「不信」と「恐怖」の感情がある。
このように考えると、対露外交の展開は、今後の対中関係を切り回す上でも大事な仕掛になるであろう。ロシアは、一応は「自由と民主主義」を共通価値観とする「G8」の構成国なのであるから、こうした現下の事情は、適切に考慮に入れるべきである。韓国が東アジアでバランサーとして振る舞うという「韓国バランサー論」は、夜郎自大の極みであるけれども、日本ならば「経済力」を梃子にして中露両国の間を立ち回ることができるはずである。そして、今は、ロシアに軸足が置かれるべき時期なのである。
雪斎は、北海道大学OBなので対露関係には以前から深い関心を抱いていた。北海道大学には、法学部の建物の隣に「スラブ研究センター」というロシア・東欧圏研究の拠点が置かれていて、学部生時代の雪斎は、そこの資料室でロシア研究関連の雑誌を熱心に読んでいたのである。ジョージ・F・ケナンが米国のロシア専門家であるのは周知の事実であるし、エドワード・ハレット・カーのライフ・ワークは、「ロシア革命史」の研究であった。そして、当代では、コンドリーザ・ライスは、ロシア専門家として高名な人物であった。
こうした事情は、国際政治を語る上での「ロシア・ファクター」が、いかに重要なものであるかを示唆している。北方四島返還という懸案はあるけれども、どのように安定した対露関係を紡いでいくかという「大きな話」は、日本においても用意されるべきであろう。
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Comments
ロシアとは、領土問題のような地政的な対立点が無ければ歴史的にうまくいくのですが、この対立点がある時代のほうが圧倒的に多かったというのが不幸なところですね。何とかそれなりの了解点に達すればよいのですが。少なくとも先方で民主化後退の懸念があるうちは外交も回りにくいかもしれません。
なお、領土問題に関しては、以前書いた記事をトラックバックさせていただきました。参考になるものでもないと思いますがこう考える人もいるということで。
Posted by: カワセミ | June 14, 2005 09:23 PM
石油がらみでロシアに金がまわってるうちは、
劇的な展開は望めないかもしれません。
Posted by: おおみや%NEET | June 14, 2005 11:03 PM
今日のニュースでトヨタがロシアに進出することが報じられていましたね。
トヨタの進出によって、「リスクはあるが、中国のように露骨に反日感情を表さないだけマシだ」という認識が日本企業に現れてくればしめたものです。
今後「投資吸収国」としてもロシアは中国にとって大きな脅威になるかもしれません。
「あんまり反日を続けると、日本資本がロシアに逃げる」という認識がもっと広まって、中国にプレッシャーを与えるようになると面白いのですが(笑)。
Posted by: 藤田 | June 14, 2005 11:56 PM
・カワセミ殿
トラックバックをありがとうございます。木村汎先生は、拙者には恩義ある方の一人です。
・おおみや殿
石油価格の動向ですか。この辺りは勉強しなければと思います。
・藤田殿
その通りです。無論、対露投資にもリスクはああるでしょうが、「相手は中国だけではない」と思わせることは、大事だと思います。
Posted by: 雪斎 | June 15, 2005 10:17 PM