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June 18, 2005

国連安保理再編・米国の「日本+α」案

■ 国連安保理再編に関する米国政府の具体的な提案が示された。『ロイター』は次のような記事を配信した。
 [国連 16日 ロイター] 米国は、国連安全保障理事会の拡大について、常任理事国を2カ国程度、非常任理事国を2ないし3カ国とすることを望むことを初めて明らかにした。
 米国務省のバーンズ次官が語った。
 しかし、同次官によれば、安保理拡大問題については、アナン国連事務総長のより広範な改革案が検討される今後3カ月において、保留しておくことができ、議論に時間が割けない。
 同次官はワシントンで、「この議論は、提案される必要がある問題の一つにすぎないとみている。安保理の問題そのものに真っ向から取組む前に、他のすべての問題で前進することを望む」と語った。
 パターソン米国連臨時代理大使は国連で記者団に対して、「米国と米議会にとって受け入れ可能な包括的な改革を手にする前に、安保理改革を受け入れるかどうかは疑問である」と語った。
バーンズ国務次官とパターソン米国連臨時代理大使は、安保理常任理事国入りについて、日本を支持していることをあらためて表明したが、他の国には言及しなかった。外交官らによれば、米国はインドを支持する可能性があるが、ドイツには反対している。

 米国の「日本+α」案に対する日本政府の反応に関しては、『時事通信』と『共同通信』が、それぞれ次のように伝えている。
   □ 時事通信
 町村信孝外相は17日午前、参院議員会館で開かれた超党派の国連改革議連の会合で、国連安保理常任理事国の拡大を日本など2カ国程度にとどめるとした米国提案について「直ちに『ごもっとも』と米国の提案に乗り移るわけにはいかない」と述べ、引き続き日独など4カ国(G4)の結束を維持して対応していく方針を表明した。
 外相はまた、米提案について「一見ありがたいような、困ったような複雑な変化球を投げてきたと思っている」と語った。細田博之官房長官も午前の記者会見で「G4の提案、結束を重視しつつ、今後調整を進めていくことに変化はない」と強調した。
 外相は閣議後の記者会見で、ライス米国務長官から16日夜に電話があり、米提案の内容の説明を受けたことを明らかにした。外相によると、ライス長官は、2カ国程度とした新常任理事国について「いかなる基準を作っても日本が該当することは確かだ」と言明した。
 これに対し、外相は「日本に配慮してもらっていることには感謝するが、G4としては枠組み決議案の修正案を関係国に提示し、支持を得る活動を行っている最中だ。G4の枠組みを崩すわけにはいかない」と指摘。その上で「日本は米国と今後も密接に連携を保ち、協議していきたい」と語り、理解を求めた。 
  □ 共同通信
 政府は、国連安全保障理事会の常任理事国拡大を日本など2カ国程度にするべきだとする米国案に同調せず、あくまで日本、ドイツ、インド、ブラジルの4カ国(G4)でまとめた決議案の採択を目指す方針だ。
 米国にも引き続きG4案への協力を求める考えで、23日にロンドンで開かれる主要国首脳会議(グレンイーグルズ・サミット)外相会合の前後に、町村信孝外相がライス国務長官と、7月6-8日のサミット本番でも小泉純一郎首相がブッシュ大統領とそれぞれ会談して直接要請。町村外相は米側の理解を得るために、決議案の再修正も視野に協議する意向を示した。
 小泉首相は17日、官邸で記者団に「この案に日本は乗れない。G4の協力を重視し、結束していかなければいけない」と明言し、「米国に理解を求めていきたい」と強調した。

 雪斎も、「日本+α」案には乗れないという日本政府の判断は正しいのであろうと思う。ただし、物の言い方は、やはり大事である。町村信孝外務大臣は、「日本に配慮してもらっていることには感謝する」、「日本は米国と今後も密接に連携を保ち、協議していきたい」と語ったけれども、そうした対米配慮の言葉は、米国の「日本+α」案の政治的な効果を減じさせないためには、必要なものであったのである。
 日本が徹底して利己的に振る舞うならば、この「日本+α」案は、「感涙モノ」の提案であるのは間違いない。日独印伯四ヵ国が推進している「日独印伯+アフリカ二国」案は、「そうしたほうが自分を着実に常任理事国の座に近付けてくれる」という読みの産物に過ぎないからである。それぞれの国々は、「自分が成れれば、後の連中は…」という本音を抱いていることであろう。日本にとっては、「日本+α」案は、かなり本音に近いものであろう。しかも、米国の「日本+α」案は、日米同盟関係の鉄壁ぶりを米国の方から表明してくれたという点では、たとえば中国や朝鮮半島二国に対する「無言の圧力」になったことであろう。無論、「日本+α」案が日独印伯四ヵ国提携に「くさび」を打ち込む効果を持つことを指して、米国政府の意図に疑念を示す向きもあろうけれども、客観的にみれば、安保理常任理事国たる資格を有するのが「日本+α」である現実は、変えようがない。そうであるが故に、「日本+α」案を無下に撥ね付けることはしなかった町村大臣の対応は、賢明なものであったといえるであろう。
 国連の現状に対する米国の不満は根深い。米国とたとえば独印伯三ヵ国との間を取り持つ姿勢は、日本にあっては大事であろう。町村大臣が視野に入れているという「決議案の再修正」の中身が、かなり気になる。 

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Comments

日本+インドですか。強烈な対シナシフトですな。

Posted by: おおみや%NEET | June 19, 2005 at 09:57 PM

米国の提案にただなびいてしまっては国際社会から卑下されてしまうのと他のG4との亀裂が生じるので、本音とは別に今回の措置は正しいと私も考えました。米国への配慮もなかなかのものでしたし、日米ともに今回の日本の措置が妥当な線だったのではないでしょうか。

Posted by: ファガスの森 | June 19, 2005 at 11:16 PM

雪斎様
アメリカの提案に関して、ドイツを忌避しているという解説があるのですが、どうお考えになりますか。
ブッシュ共和党政権が安保理の大幅拡大に関して絶対的に否定的であることは分かるのですが、日本+?の「?」はインドなのでしょうか。私はドイツで良いと思います。インドやブラジルには資格や能力に欠けると思うのですが。
それと、韓国が日本の常任理事国入りに反対とか、笑止、笑止の一言です。君たちは加盟して何年なの。言う資格全く(100%)ないと思うのですけどね。朝鮮人と付き合うのは本当に辛いですね。(私は本当に誠実な在日朝鮮人の友人がいるのですけど…)

Posted by: さぬきうどん | June 20, 2005 at 06:51 AM

このテーマについては、ここしばらくはマスコミをにぎわすでしょうね.他のブログ(カワセミ氏)でもっちょっとコメントしたんですけど、大切な点は、この種のイッシューでは常にそうである様に、アメリカの読み方と思います.アメリカの言っていることは牽制で本音は別にあるという類のコメントがテレビでも見うけられたんですけど、こういう考えが一番始末に悪い.一見もっともらしく聞こえるが、日米の協調に水をさすことにもなりかねない(中にはそのために発言している方もおられるようですが).アメリカの本音は、ライス公式発言どおりでしょう.町村外相の発言からみるとそのへんはよく判っておられるようですから、当面安心ですが、ぎりぎり各国の意思がぶつかったときに日本がどう軌道修正するか、そこが大問題でしょうか.

Posted by: M.N.生 | June 20, 2005 at 09:36 AM

 おおみや殿
 「日本+α」のαは、インドというのが通説です。米国のIT技術者の半数近くはインド出身とか…。
 ファガスの森殿
 今まで苦労をともにした彼女がいながら、どこかの令嬢との結婚話を持ちかけられたら、どうするか。これに似た話かなと思います。
 さぬきうどん殿
 米国にとって、二度の世界大戦で二度とも「敵」であったのは、ドイツだけですからね。米国の対独感情も、結構、複雑なものがあると思います。
 中国も韓国も、「歴史の長さ」を誇りにしますが、近代国家としての歴史は、せいぜい数十年しかない。この意味は大きいと思います。
 M.N生殿
 米国の「道義性」ということが判らない人々が多いで寸ね。この「道義性」が実は難物なのですが…。


Posted by: 雪斎 | June 20, 2005 at 03:35 PM

常任理事国のイスよりも常任理事国入りのための外交努力こそが今後の資産になると思います。

とくに、インドとブラジルは、どちらとも21世紀後半には大国になる可能性を秘めた国で、また、日本と地政学的に軋轢を起こしにくい国です。それらの国に義理立てして恩を売るのも悪くないと思います。どちらも、宗教心の強い文化を持っていますから、恩を仇で返すことはないと思います。

結論をいいますと、今回は、中国が意地でも日本の常任理事国入りを阻止すると思います。日本がアメリカ案の「日本+1」に乗っても結果は同じです。それならば、G4と結束して、G4もろとも、中国に否決されたという事実を残せばいいのです。ドイツ、インド、ブラジルとも理が分かる国ですから、日本を逆恨みすることはなく、直接、中国に対する警戒心に向かうと思います。

そういう実績を残しておくことで、中国崩壊後の新国際連合において、日本のイスと地位がおのずと決まってきます。

小泉さんというのは味噌のつけ方がうまい人で、二度の小泉訪朝の解釈はいろいろありますが、小泉訪朝がなければ、六者会談はありえず、日本は半島情勢で蚊帳の外に置かれたはずです。

小泉さんのおかげで、北朝鮮崩壊後に日本の発言権が確保できました。よく、半島と関わるなという意見もありますが、関わらないことと発言権がないことは別のことです。今後「半島に積極的に関わらない」ためにも、発言権は必要です。

Posted by: 高田雄二 | June 20, 2005 at 04:15 PM

高田雄二殿
御説、その通りと思います。
「中国に否決させて、孤立させる」という裏の戦略も、「あり」かなと思います。
そのためにも、「表」の戦略では次の二つを考えるべきでしょう。
① できるだけ広範な支持を集める。(話をぶち壊したのは中国だという印象を与える)。
② 日本からは中国に対して敵対的な態度を取らない。(意固地になっているのは中国だという印象を植え付ける)。
 どこかのタイミングで、この「裏」の戦略をリークすれば、中国政府の動きも止まるかもしれませんね。

Posted by: 雪斎 | June 20, 2005 at 05:05 PM

 関連するエントリをトラックバックさせていただきました。考え方としてはここの多くの皆さんとほぼ一致します。
 私も当面G4尊重ですが、2国なら日独という考えですね。米国の感情も分かりますが、ここは英仏あたりと一緒に丁寧に米国を説得するべきではないでしょうか。最終的には飲むのでは。それにしてもアフリカの2国まで候補にする案は、自国がなりたいが故にその適切さを考えず無責任に提案したとしか思えないのですが。国連無力化のためと割り切って進めているのであればむしろ見事ではあります。
 正直、様々な国の思惑があり、拒否権も決定的要素なので、どう転ぶか分からないのが現状でしょう。ただ私は、最終段階まで行けば、中国は拒否権を使うほうに回ると読んでいます。あの国は孤立慣れしていますし、経済発展をバックに少々のことは意に介さないでしょう。外務省の「反対しきれないだろう」という読みは、本気で信じている人と信じたフリをしている人の両方がいそうです。

Posted by: カワセミ | June 20, 2005 at 10:33 PM

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