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June 25, 2005

北朝鮮情勢は動くのか。

■ 北朝鮮絡みで気になる記事が三つ報じられた。米国も、「本気に」なり始めたようだと予感させる記事である。

 【ワシントン 22日 ロイター】 米国は22日、北朝鮮に対して5万トンの食糧支援を行うと表明した。ただ、支援は人道的見地から決定されたもので、北朝鮮の6カ国協議復帰に向けた外交努力とは無関係としている。
 国務省のエレリ副報道官は、「米国は、世界食糧計画(WFP)の要請に基づき、北朝鮮に対し5万トンの農産品を拠出する」と述べた。そのうえで、これは北朝鮮を6カ国協議に誘引するためのものではないと付け加えた。
 ただ、協議をめぐっては北朝鮮に前向きな発言がみられたり、アジアの当局者らが北朝鮮が協議に復帰する用意を調えている可能性を示唆していることなどから、アナリストは、この動きが協議再開を後押しする可能性があるとみている。

 【ワシントン23日共同】23日付の米紙ウォールストリート・ジャーナルによると、米政府は北朝鮮の核兵器開発などに役立つ装置や技術を同国に供与した企業に対し、資産差し押さえなどの厳しい措置を講じる方針を決めた。近く、大統領令の形で実施される。
 同紙によると、約10社が当初の制裁対象になるとみられる。米政府は、アルカイダなどのテロ組織に資金支援した企業の資産差し押さえなどを既に実施しているが、北朝鮮の大量破壊兵器開発に協力した企業は、これと同様の扱いになる。
 北朝鮮のほか、イラン、シリアに技術供与した企業も対象。

 【ワシントン23日共同】ロイター通信は23日、北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議再開を目指す外交努力の一環として、ライス米国務長官が来月、日本、中国、韓国などの関係国を訪問することを検討していると報じた。
 国務省当局者は共同通信に対し、報道を否定も肯定もしなかった。ライス長官の訪日が実現すれば、今年3月のアジア歴訪以来となる。
 ロイター通信によると、複数の米政府当局者は、北朝鮮を6カ国協議に復帰させた上で協議を成功させることを目的に、ライス長官が7月に訪日するようだと述べた。また、他国の訪問も検討されており、恐らく中国、韓国が含まれるとの見通しを示した。
 ジョゼフ国務次官(軍備管理・国際安全保障担当)は23日、米主要メディアとの懇談で「北朝鮮は(6カ国協議に)復帰すると思う」と指摘した上で、真の問題は「次回協議で北朝鮮が何をするかだ」との見解を表明した。

 「五万トン食糧支援再開」という記事だけを見れば、「やんぬるかな…」という思いを抱く向きもあろう。「会議に出ると言っただけで食糧五万トンかよ…」という反応が出てきても、おかしくない。
 しかし、雪斎が注目するのは、対朝技術流入の阻止を目的とした「大統領令」施行の記事である。もし、たとえば日本の重機メーカーの製品が北朝鮮に送られ、その製品が北朝鮮の軍事目的に転用されていた場合、米国政府は、どのように扱うのであろうか。記事に言及された「大統領令」の具体的な中身を確認する必要があるけれども、米国政府の制裁の対象が、米国企業だけではなく米国法人を持つ日本企業にも及ぶのかは、相応の関心を払う必要がある。「大統領令」というのは、戦時中の日系人強制収容が「大統領令」で行われたという挿話が示すように、運用が恣意的であることがある。
 振り返れば、1987年に発覚した東芝機械ココム違反事件では、東芝の子会社である東芝機械が対共産圏輸出統制委員会(COCOM)で輸出が規制されている工作機器を同時二軸制御の大型立旋盤であると偽ってソ連へ輸出し、東芝幹部社員の逮捕、親会社の東芝の会長・社長の引責辞任、米国政府による東芝に対する輸入禁止の制裁発動という事態に立ち至った。まったく同じ光景が出現することはないもかもしれない。ただし、雪斎が日本企業関係者ならば、自分の会社の製品や技術が北朝鮮に流出し軍事目的に転用されていないかを急いで八方手を尽くして確認する。ある日、突然、「お前のところの技術が北朝鮮兵器の一部になっているぞ。どうしてくれる」と米国政府から突っ込みが入り、米国法人資産没収ということになったら、それはそれで「悪夢」である。実際には民生用製品と軍事用製品の区別が曖昧であるという事情はあるけれども、この事情は、民生品ですら北朝鮮には回せないという状況が浮上していることを指している。案外、この「大統領令」は、日本企業に「技術・製品の対朝流出」の防止を徹底するように促す意味においては、「船舶油濁賠償法」以上に強力な「暗黙の制裁」の枠組になりそうである。
 加えて、大いに注目されるのは、コンドリーザ・ライスが日中韓三ヵ国を歴訪するという記事である。前の二つの記事に照らし合わせて考えると、米国政府は、次の「六ヵ国協議」を「最後の機会」にしようとしているのではないか。「最後の機会」であるが故に、「食糧五万トン」で対朝懐柔を行い、「大統領令」で対朝圧力を強め、「女傑」を東アジアに飛ばして直接の根回しを始めようとしているわけである。今年の夏は、「熱い夏」になるのであろうか。

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Comments

なんかとんでもない時刻のエントリーですね。
もしかして、海外にお出かけですか?

ってのはおいておいて、そういえば小泉首相も、
六カ国協議の再開について、何かコメントしてた
ような記憶があります。前回の協議から一年、
アメリカが安保理付託の可能性を示唆し始めて、
ようやく動き始めたのかなぁ、てなところです。

Posted by: おおみや%NEET | June 26, 2005 at 07:39 PM

・おおみや殿
コンドリーザ・ライスのアジア歴訪で何をやるかが、当面のキーになると思います。

Posted by: 雪斎 | June 28, 2005 at 12:29 AM

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