« 「拉致議連」の閑古鳥 | Main | 中国における「外交感覚」の劣化 »

June 28, 2005

『日米戦争と戦後日本』

■ 昨日、五百旗頭眞先生の著書『日米戦争と戦後日本』(大阪書籍, 1989年/講談社[講談社学術文庫], 2005年)を読了する。さくら殿のブログで文庫になっていたのを知り、慌てて購入し読んだわけである。五百旗頭先生の主著といえば、次の三冊であろう。
1、『米国の日本占領政策――戦後日本の設計図(上・下)』(中央公論社, 1985年)サントリー学芸賞受賞
2、『占領期――首相たちの新日本』(読売新聞社, 1997年)吉野作造賞受賞
3、『戦争・占領・講和――1941-1955』(中央公論新社, 2001年)
 

 雪斎は、この三冊は総て読んだ。特に、(1)は北海道大学時代に読破し、「もうお腹一杯」という気分になった研究だった。(1)は、永井陽之助著『冷戦の起源』、細谷千博著『サンフランシスコ講和の道』、入江昭著『日米戦争』といった著作と並んで、「叢書・国際環境」という中央公論社刊行のシリーズの中の一角を占めていた。学生時代の雪斎は、「叢書・国際環境」シリーズの総てをカネがないにもかかわらず揃えて読んだ。今にして思えば、「良いモノ」に触れさせてもらったと思っている。
 『日米戦争と戦後日本』は、(1)上下二巻を読みやすくして、幅を広げたという体裁のものである。その後の(2)、(3)で紹介される話も、この書で既に言及されているものがある。この書には、五百旗頭先生のテイストが、かなりストレートに出ている。
 この書の中であらためて興味深く確認したのが、ヘーゲルが言及した「主人と奴隷」の挿話を題材にして、戦後日米関係を叙述した件である。主人は奴隷に壺を作れと命令した。奴隷は、最初は不承不承やっていたが、次第に壺を作る面白さに開眼し、そこに自己実現の自由を見出した、反対に、主人は奴隷に命令するという自分の立場の「奴隷」となった。ここに主人と奴隷の立場の逆転が生じた。主人が米国、奴隷が日本、壺作りが「非軍事・経済優先路線」と置き換えれば、それは戦後の日米関係の様相を表しているというわけである。なるほど、こういう「柔軟性」は日本人の特質である。日本人は、どこまでも日本人である。こうした五百旗頭先生の記述は、中途半端に「国の誇り」などを唱える凡百の議論に比べれば、余程、日本人に対する信頼が伺われるものであろう。加えて、(2)では、五百旗頭先生は、東久邇宮稔彦内閣の「敗戦処理」を高く評価している。雪斎は、かなり驚いたものである。凡そ、人間の世界では、「無駄」というのは余りないと教えられた。
 ただし、こうした五百旗頭先生のスタンスは、「左」からも「右」からも面白くないものなのであろう。特に「新しい教科書を作る会」の中心人物は、五百旗頭先生に「売国奴」と呼ばんはかりの非難を浴びせていたことがある。その折、雪斎は、率直に「馬鹿馬鹿しい非難だ」と思った。振り返れば、それは、雪斎が「保守論壇」と称される空間から距離を置くことにした瞬間だった。

|

« 「拉致議連」の閑古鳥 | Main | 中国における「外交感覚」の劣化 »

「学者生活」カテゴリの記事

Comments

皆がこぞって悪口をいうのだが、よく見てみると
オモロイ。そこから自分自信や他者を眺めてみ
ると....
どっかで聞いたことあるような話なのですけど、
改めて自分の立ち位置を確認する有力な方法の
一つであることを確認した次第でございます。

Posted by: おおみや%NEET | June 28, 2005 at 09:42 PM

「爆弾が空から落ちてきて大勢が死んだり、怪我したり、生活を破壊されて、その後も苦しんだ。何が悪いかというと、日本が戦争したからいけないのだ、戦争に勝ったのならいいけど、強いアメリカを相手に負ける戦争をしたから、こんなにみんな苦しんだのだ。悪いのは戦争を起こした日本政府だ」とほとんどの戦後日本人は考えました。これ、正解ですよね。僕はそのとおりだと思います。人のこと(米国の行為)はどうでもいいことなんです。柔軟な思考をもった日本人からしてみれば・・・。

Posted by: ちびた | July 11, 2005 at 05:54 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/71618/4740191

Listed below are links to weblogs that reference 『日米戦争と戦後日本』:

« 「拉致議連」の閑古鳥 | Main | 中国における「外交感覚」の劣化 »