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March 03, 2005

続・『愛の流刑地』って…

■ 昨日のエントリーを次のように締めくくった。

その藤さんの劇中の肩書きは、「大学教授・文芸評論家」である。今、雪斎も社会的には似たような肩書きを付けて活動している手前、この映画の設定を思い起こすに付け、「当時の大学教授・文芸評論家というのは、高級クラブに通えるぐらいカネを儲けていたのか…」という素朴に思う。学者・知識人などというのは、今では「カネ」にならない商売の典型である。誠に残念な現実ではある。

 何故、こういうことになるのであろうか。

 「大学教授としての年収はともかく、評論家として稼げる原稿料は、この三十年間、余り変わっていない」。これが真相である。たとえば、昨年、雪斎が原稿料だけで稼いだ額は、○○万円というレベルである。これは現在の感覚からすると笑う以外にはない僅少な額である。現在の「物書き」が直面する経済的な実態は、こちらのサイトが詳しい。しかし、これと同じ額を三十年前に稼いでいたとすれば、それだけでで雪斎は、上位10%には入っていたことになる。

 「国民生活に関する世論調査」(昭和50年)によると、次のようになっている。
 〔回答票18〕〔本人収入〕では,あなたご自身の収入は,去年1年間でおよそどれぐらいになりましたか。この中ではどうでしょうか……ボーナスを含め,税込みでお答えください。
(10.4) (ア) 50万円未満
(5.0) (イ) 50万円~70万円未満
(7.8) (ウ) 70万円~100万円未満
(12.4) (エ) 100万円~150万円未満
(9.5) (オ) 150万円~200万円未満
(6.4) (カ) 200万円~250万円未満
(3.9) (キ) 250万円~300万円未満
(3.0) (ク) 300万円~500万円未満
(1.2) (ケ) 500万円以上
(31.6) 収入はない
(8.8) 不明
 往時、大学教授の年収が幾らであったのかは、知らないけれども、これに加わった文芸評論家としての稼ぎは、大学教授としての年収に迫るものであったと推測される。当時、年収がトータルで七、八百万くらいであったとすれば、それは現在の感覚からすれば、千五百万円から二千万円くらいのイメージにはなるのであろう。雪斎は、ホステスが居る「高級クラブ」という世界には縁がないので、一晩にどのくらいの額が必要になるのかは、全然、知らないけれども、年収二千万円もあれば「行けそうだ」という気にはなる。『化身』で藤竜也さんが演じた大学教授・文芸評論家は、決して「想像上の人物」ではなかったというのは、間違いないであろう。翻って、『愛の流刑地』に登場する作家というのは、どうみても年収は五百万円を超えない雰囲気である。大学非常勤講師として支払われる給料は、月に数万円というレベルである。かくして、渡辺淳一作品に描かれる男は、金銭的には、どんどん「しょぼい」存在になっていく。今、「あいるけ」を読んでいる人々は、そうした「しょぼさ」を、どのように受け止めているうのであろうか。

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Comments

原稿料については、かんべえは元編集者(日商岩井の広報誌)として、「払う側」をやったことがあるので、ネタはたくさんあります。

ひとつだけ申し上げますと、昔は「新書を出す人」は大家に限られていて、新書を数冊持っているとそれだけで悠々食べていけた時代がありました。今では、かんべえ如きが書いたりしますので、需要は伸びないのに供給が増えすぎて、価格が下落するという傾向があるようです。

う、この話は長くなりそう・・・

Posted by: かんべえ | March 03, 2005 at 10:42 AM

原稿料の話が出たのでどうしてもコメントしたくなりました.お金の話で恐縮ですけど.
かんべえ様のおっしゃるとおり.今は新書を出してもほとんど実入りは無いそうです.私の友人の例を挙げます.
Sさん(国立大の教授)B新書で初刷1.5万冊で原稿料なし.2刷から印税あり.彼の本は幸い3万ほど売れたから印税はもらえた.
Nさん(フリーライター)C新書で初刷1万冊.あまりうれずそのまま.原稿料ゼロ.
Yさん(国立大教授)T新書.2万以上売れたら印税払いますという話.結局売れたが、売れなかったら原稿料ゼロ.
BもCもTも日本の代表的な出版社ですよ.
これじゃあ、大学の先生やシンクタンクに努めていなかったら、まともな本を書いても生活できないでしょう.残念.

Posted by: M.N生 | March 03, 2005 at 11:58 AM

>かんべえ殿
「新書数冊」といっても、その時代は岩波、中公だけだったでしょうから、確かに稀少ですね。
 そういえば、拙者も新書ホルダーなのですな。なんとも役不足のような気がします。

Posted by: 雪斎 | March 03, 2005 at 01:03 PM

>M・N生殿
拙者は、定価×部数の1割という印税をもらいました。出版条件というのは、ひとそれぞれなのでしょうか。

Posted by: 雪斎 | March 03, 2005 at 02:07 PM

雪斎さま
定価の1割というのが普通と思いますがねえ.Sさん、Yさんが結果的にどの程度の印税を受け取ったかは聞き逃しました.ただ、一定部数売れなかったら印税はもらえなかったというのではちょっとどうかなと思います.蛇足ですが、小生が以前ある本を某中堅出版社から出したときは、販売部数によって印税は変わる契約でした.

Posted by: M.N生 | March 03, 2005 at 02:52 PM

>M・N殿
どこでも印税の「10%」ルールが適用されるのかと思いましたが、そうではないようですね。
ありがとうございます。

Posted by: 雪斎 | March 03, 2005 at 11:25 PM

 文筆で生業を立てている方々は別として、研究者たるもの、研究論文であれ、一般啓蒙書であれ、印税を当てにするのはいかがのものかと。
 その一方で大学人は自身の研究に精力を注ぐ限り、ザラ場を時折見る程度の裁量も許されるわけであって。
今必要なのは、透明で活力のある相場ではないか?
 ・・・粘着かましてすみません。
いや、おやりになっていることは兎も角としても、アイルケとやらのあの御大の仕事への執着、一職人としては、大いに学びたいものかと・・・。

Posted by: 小規模投資家 | March 03, 2005 at 11:41 PM

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