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February 18, 2005

「フジ・ライブドア戦争」に参陣

■ 昨日、産経新聞常務取締役・論説委員長Y氏の名前で雪斎宛に奇妙jな封書が届く。同封されていたのは、雑誌『AERA』に掲載されたライブドア・堀江貴文氏、即ちホリエモンさんののインタビュー記事のコピーであった。Y氏の口上書の文面から察するに、同様の封書は、雪斎の他にも産経新聞「正論」欄に寄稿を委嘱されている総ての知識層に送付されたようである。雪斎は、「表向き対ライブドア批判の前線に出ていなかった産経新聞も、遂に参戦か…」と思った。

 ホリエモンさんは、インタビューに答えて、「産経新聞は経済紙にすればよい」、「『正論』に象徴されるオピニオン路線は縮小する」という趣旨のことを語っているのである。この記事を受けたY氏の口上書には、「看過できない」「理解に苦しむ」といった言葉が並ぶ。相当に「怒り心頭に達している」ことが伺われるものである。
 雪斎は、八年前に「正論」欄執筆陣に迎えられた。当時、雪斎は、三十二歳の「最年少メンバー」として加わったけども、八年経った今でも「最年少メンバー」である。この八年間に「正論」欄に寄稿した原稿は、既に通算100編を越えている。世の人々は、雪斎のことを「バリバリの保守論客」と思っているかもしれないけれども、このような雪斎の事情からは、そうした見方が出来上がるのも、当然かもしれない(もっとも、今では、雪斎は「正論」執筆陣の中でも「最左派」なのだそうだが…)。そして、八年前に、雪斎を「先物買い」で迎えてくれたのも、Y氏であった。「当時、社内会議で『〇〇(雪斎の本名)も入れよう』と提案したら、『〇〇って、誰よ』という反応が返ってきた」とは、Y氏から雪斎が直に聞いた話である。保守論壇の重鎮が居並ぶ「正論」執筆陣に、齢三十を越えたばかりの「若僧」を入れるのは、当時の産経新聞にとってはギャンブルみたいなものだったようである。言論家としての雪斎にとっては、「正論」欄が修行の場であったのは間違いない。
 そのような雪斎の過去の経緯からすれば、此度の「フジ・ライブドア戦争」に際しては、フジ・サンケイ・グループに同情的な立場を取らざるをを得ない。無論、雪斎は、ホリエモンさんには何の接点もないし、何の個人的な感情もない。振り返れば、過去にも、ギラギラした野心で社会に向き合おうとした「若者」などは、幾らでもいたではないか。西武グループの堤義明氏の父、康次郎氏について書かれたものを読んでみれば、そこには「凄まじいばかりの富への執着」が垣間見られる。戦時中、堤康次郎氏は、空襲中に人々が逃げ惑う最中に、ここぞとばかりに空襲された土地を買い漁ったというのだから…。ホリエモンさんに失敗があるとすれば、そうした「ギラギラした野心」をストレートに出すことが、もはや受け容れられなくなった時代に、そうした強引な手法を取ったことであろう。フジテレビの日枝久会長が「古い」と評したのも、当然なのである。しかも、ホリエモンさんは、無用に「敵」を作ってしまった。要するに、ホリエモンさんには、「賢明さ」が欠落していたのである。
 田中角栄は、政治の最初歩の流儀の一つとして、「敵を作らない」ということを挙げた。実は、「味方を作る」ということを実践するには、相当な精力と手間が掛かるものであるけれども、「敵を作らない」ということは、少し気を付けていれば実践できるものである。それは、具体的には、「他人の悪口を言わない」、「どぎつい言葉遣いをしない」、「発言内容に気を付ける」といったものである。ホリエモンさんは、要らぬ「敵」を多く作ってしまったようである。政治は、恋人の扱いや同僚との付き合いといったように誰にとっても身近な営みであるけれども、そうしたものに対する感性はホリエモンさんにあっては希薄であったといわざるをえない。
 …と、ここまで書いて、産経新聞のウェブ・サイトを覗いて見たら、本日付『産経新聞』社説は「堀江氏発言 産経を支配するって? 少し考えて言ったらどうか」という見出しでホリエモンさん批判を展開していた。そして、実は「正論」欄には、「市場論理に優先するメディアの公益性」と題された雪斎の原稿が載ることになっている。14日付の当ブログで「ビーン・ボール」と自ら評した原稿である。雪斎は、「ライブドアがメディアに関わりを持ちたければ、その『メディア関与の論理や哲学』を説明しなければならない」と書いた。なるほど、このタイミングで掲載しましたか…。雪斎の原稿は、世間的には、フジ・サンケイ・グループへの「加担」と受け留められるであろう。雪斎もまた、もはや「傍観者」ではなくなったのである。

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Comments

 こんにちは、はじめまして。エリンズフォレストと申します。

 先日のプレスセンターでの講演を聴かせていただきました。大先輩方の中に参加させていただいておりますが、学年で申しますと、実は雪斎さんの2学年下になります。

 本当ならば講演後に質問等させていただいたらよかったのですが、時間の都合上出来ませんでしたので、失礼かと思いましたが、こちらのブログでお願いさせていただこうと、書き込ませていただきました。お手数をおかけいたしますが、メールでご返信いただけないでしょうか。よろしくお願いいたします。

Posted by: エリンズフォレスト | February 18, 2005 at 02:30 PM

ご意見には概ね共感をいつも拝見しております。産経新聞、正論誌が占めている独特な位置について、自分なりに理解をした上で、今回の「フジ・ライブドア戦争」に私見を述べさせていただきます。
一部の報道では触れられてはいるようですが、主要な議論で欠落している視点は、投資家の視点、という点ではないでしょうか?Yahooファイナンスによりますと、フジテレビの2004/03期のROEは5.13%に対し、ニッポン放送は2.04%。
つまり、フジテレビの現経営者の地位保全のため、投資家から委託を受けた資産を、低い収益率の案件に対して「流用する」、という側面から考えることはできないでしょうか?
因みに今日の7時台のNHKのニュースでは、ホリエモンさんが利用した時間外取引の是非に関し、某生保の社長さんが、いかがなものか、との苦言を呈されていました。この方も一般保険者から委託をされた資産運用者としての資質に、小生聊か疑問を持たざるを得ません。

では、フジはどうすべきであったのか?
20%を上限とする放送業者に対する外資の保有規制もあり、即時に償却というわけには行かなかったとは思いますが、ニッポン放送から自社株の買取を行い、資産効率の向上・投資家重視の姿勢こそを見せるべきところであったと、愚考いたします。

Posted by: 名無し@ゴミ投資家 | February 18, 2005 at 07:35 PM

〉「投資家」殿
貴重なご意見を有り難うございます。
なるほど、「投資家の視点」は見落とされていますね。拙者も、「投資家」になっているはずですが、フジテレビ、ニッポン放送のホルダーではなかったので、この点では「傍観者」の域を出ませんでした。ところで、フジテレビがニッポン放送から自社株を買い戻すとすれば、どれほどのコストが必要になるのでしょうか。

Posted by: 雪斎 | February 19, 2005 at 04:04 AM

政治学の学徒であられる雪斎さんが、「純然たる経済事象には論評を寄せる資格を持たない」と、ご自身の領域を明確に絞られる姿勢、いいなあ。
以前、体制に対して迎合的との批判を恐れず、知識人として自身の知見を政策に反映させる道を求めるべき、との趣旨で記されていましたね。節度とともに戦い方の基本を押えられていることと、敬服いたします。

私自身は財務を学んでいるものですが、お恥ずかしいことに商法・証取法など制度面の勉強を怠ってきました。以下に記す私見はそれらにかかわる論点を考慮していません。念のため申し添えます。

議論を極めて簡略化します。
1月17日フジはニッポン放送に対するTOBを宣言しました。
 買収額:5950円x3,230万株x87.6%=約1700億円
1700億円をかけ、完全子会社化を目指すものでした。5950円の算出根拠は、ニッポン放送の過去3ヶ月の平均株価を元に、プレミアムを乗せた、とのことです。同様にフジの過去3ヶ月の平均株価は、ざっと22万円程度になっていたと思います。
 持ち合い株:22万円x255万株x22.5%=約1,260億円
1700億円の提示金額のうち、ざっと1300億円弱がニッポン放送が保有するフジの株式価値に相当することになります。
一方1月17日のTOBのお知らせによりますと、フジはTOBの目的として、まずROEとROAの向上を、次いで事業戦略としてグループ内の関係強化によるシナジー効果を挙げています。しかしフジとニッポン放送を比較しますと、ROE、ROAともにフジが上回っており、この買収により、如何にして資産効率の向上が実現されるのか、はなはだ疑問です。
シナジー効果については、私は放送ビジネスの実情を知りませんので、憶測の域は出ませんが、奇しくも昨日、ネットの広告収入がラジオのそれを上回ったとの報道から考えると、素人なりに少々疑問を感じます。
企業防衛を優先するのであれば、1700億円(1300億円)を使い、自社株買いを行なう、つまりより収益性の高い資産への投資を行なうことが、最も株主の利益に即した方法であったと考えます。またその際、ニッポン放送が保有する22.5%すべてを買い取らなくとも、経営権の維持の目的は達せられたのではないか。株主重視の姿勢は、長期的には株価の上昇に結びつき、経営権維持にも資するWin-Winの方途ではなかったのでしょうか?買い入れた自己株式が消却できるなら、ROE、ROAの向上につながりますし。

自己株式の買い入れ原資を考えますと、有価証券500億円(流動資産)+投資有価証券650億円(いずれも04/04期、単体)がまず目に付きます。また何らかの事情により、流動性や持ち合い維持のため、これらの資産を手放すことができない場合であっても、問題は生じないと思われます。(もっとも1700億円までの手当ては、TOBを計画の段階で、何らかの形ですでにされていたのでしょう)。比較的収益力が高く、事業リスクがそれほど大きくないように見える割には、自己資本比率が80%台(2004/3期、フジ単体)と高いことも、レバレッジを上げ(負債導入)、ROEを高める一つの方法ではないかと考えられます。
フジ現経営陣の財務戦略の欠如が、今回の騒動の大きな原因ではないかと思われて仕方がありません。
長文にて失礼しました。

Posted by: 名無し@ゴミ投資家 | February 19, 2005 at 01:29 PM

>「投資家」殿
 無論、此度の騒動は、フジ・サンケイ・グループにも「隙を見せた」責任があるのだろうと思います。
 フジ・サンケイ・グループの関係の人々に聞いたところによると、フジテレビを取り巻く環境は、株式上場のタイミングや視聴率競争の成果といった点で「今までは良過ぎた」側面があるのだそうです。此度の騒動は、「良過ぎる環境」に潜む危険の見本のようなものかもしれません。
 フジ・サンケイ・グループの関係の人々が今回の騒動から「自省の材料」をつかまないようでは、次に何らかの騒動に持ち上がった時には、厳しいでしょうね。たとえ、ホリエモンさんの企図が挫かれる結果になったとしても、「ホリエモンを撃退した」などと浮かれないことが、グループの人々には大事でしょう。
 ところで、二度も書き込みいただいたのですから、別のハンドル・ネームをお考えいただけませんか。

Posted by: 雪斎 | February 19, 2005 at 03:03 PM

初めまして。
かんべいさんのサイト経由でこのブログを知り、ROMしていた者です。

一連の騒動(というには語弊がありますね)で、様々な視点から意見が発せられているので、メモ代わりにまとめのエントリを作成し、トラックバックを送信しましたので、ご挨拶とご報告まで。

Posted by: とーます@中の人 | February 19, 2005 at 06:07 PM

こちらに住み着いてしまうつもりはありませんが、ご指摘のとおり少々品位に欠けましたので、HNを変えました。

今回の件に対して、メディアが持つ世論形成への影響力という視点に、私も異論はありません。どちらかといえば保守的な考え方を持つ私としては、買収の対象となる企業が別のTV局であれば、という感想は持っています。

その点は措きましても、今回の帰趨が資本市場に対して持つ意味は極めて大きいものと考えます。お題目であれ、投資家重視の姿勢を、より企業経営者に強いることになることを期待するからです。
本日の日経新聞によりますと、総務大臣は放送局に対する外資の保有規制強化を示唆する旨の発言をされているそうです。放送業の公共性を考えてもなお、・・・どうかなあ?
例えば株主の保有分布状況開示を、特定業種についてのみ強化することでも、随分効果は上がるのでは?などと考えます。
もう少し市場の機能を信頼し、投資家重視の企業経営に誘導する背作があってもよいのでは、という点が私の趣旨です。

Posted by: 小規模投資家 | February 19, 2005 at 07:20 PM

〉トーマス殿
はじめまして。貴サイトでの紹介に与り恐縮です。貴殿も「かんべえ」殿のお仲間ですか。
去る14日と16日の記事も参照頂ければと思います。

)小規模投資家殿
本来は「市場の論理」に「政府」の介入する余地は小さくあるべきですけれども、メディアは少し意味合いが異なるのではないでしょうか。ただし、仰せの通り、日本の会社経営者は、自らの会社が株式公開を果たした時点で「株主の会社」になることを自覚すべきだと思います。いまだに、株主を「金づる」だと思っている会社経営者は、意外に多いと思いませんか。

Posted by: 雪斎 | February 19, 2005 at 07:52 PM

度々お邪魔して、申し訳ありません。
私2月8日は自宅で仕事をしており、横目でちらちらザラ場を見ておりました。ライブドア(LD)の株式取得の第一報に気がついたのは後場が始まって少ししてからで、暫く株価を眺めつつ、6700円で指値を入れましたが勇気なく、すぐに取り下げました。
その後はどちらかと言うと、火事場見物のようなお気楽なスタンスでした。
しかし昨夜のNHKのニュースを見て、血が逆流する思いでした。昨夜も書かせていただきましたが、大手生保社長の発言趣旨は、LD社が利用した今回の株式取得方法(場外取引)が、法の精神に反しているという批判です。
今回のことを教訓として、制度の見直しを行なう、これは結構なことだと思います。専門家・当局・利害関係者の皆さんの多面的な議論により、制度改革が行なわれることに、私も異存はありません。
しかし現行の法規が認める範囲行なわれた取引に対する正当性云々の議論は、容認できません。後出しじゃんけん等、マーケットという神聖な場所を汚す所為として、厳しく指弾されるべきだと考えます。「金づる」どころか(以下自粛)。
総務大臣の上に参照したご発言も、同様の既得権益者の保護のように読めて仕方がありません。

メディアの位置づけについては、確かに幾許かの考慮が必要なのかもしれません。しかし現に「どこぞの国のプロパガンダを平然と請け負っているかのようなマスメディア」(泥酔論説委員氏日記より引用)も少なからず存在する中、逆説的、迂遠な道筋かもしれませんが、今回のLDの動きをきっかけに、メディアに市場原理が機能し、正常化することを少々期待しております。
伝えられる堀江氏の経済専門誌への転換という発言についても、社説のない新聞、時の為政者の発言の一部だけを切り貼りしたり曲解したりせず、淡々と事実のみを伝える新聞・TV局の誕生を期待する私にとって、淡い期待を抱かせるものではあります。

Posted by: 小規模投資家 | February 19, 2005 at 10:36 PM

>雪齋さま
ご指定の記事、改めて参照しました。ホリえもんさんの評価について、フォロー忘れていました(^^;
早速リンクにも追加済みです。

私は…政治へのスタンスはセンターライト(現実的保守)なので、まぁ「かんべい」様の仲間かと。(というにはちと力不足でお恥ずかしいかぎりですが)

>小規模投資家さま
確かにホリえもんさんのやり方がたたかれるのは、「法さえ守ればなんでもやっていいのか」という点につきますよね。

以前の2→100→10の分割や、今回の件なんかはまさにそれに当てはまりますよね。

そうそう、ホリえもんさんへの助言、ということでエントリを書きましたので、ご覧いただけたら幸いです。

Posted by: とーます | February 20, 2005 at 09:35 AM

>小規模投資家殿
メディアの抱える問題に関する、ご指摘はその通りです。この件は、後日、お話します。
〉トーマス殿
色々と御紹介賜り、恐縮です。この件は、暫く、続けますので、よしなに。

Posted by: 雪斎 | February 21, 2005 at 04:03 PM

Posted by: aa | January 17, 2006 at 03:17 PM

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