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February 17, 2005

村田晃嗣氏新著『アメリカ外交』

■ 昨日、同志社大学助教授の村田晃嗣先生から新著『アメリカ外交』(講談社現代新書)が届けられる。雪斎は、この書のことは既に当ブログでも「「今月の書」カテゴリーで紹介していた。それは、たとえていえば、書の現物を読む前から他人に推奨したという意味では「先物買い」をしたわけであるけれども、その「先物買い」は実に上手くいったと思っている。

 村田先生といえば、テレビ朝日系の深夜放談番組『朝まで生テレビ』にレギュラー格で出演されているようであるから、知っている人々も多いであろう。雪斎は、深夜の時間帯にテレビを滅多に観ないので、この番組で村田先生が発言している様子を一度しか観たことがない。「これは、ほとんど『掃き溜めに鶴』だな…」というのが、雪斎の印象であった。もっとも、村田先生は、雪斎とも世代は同じであるし、物事の思考様式もだいぶ、近似している。村田先生は、雪斎にとってはアカデミズムの世界では最も強い「親和性」を感じさせる人物の一人である。
 村田先生の新著『アメリカ外交』は、第一章が最も大事な章だと思われる。この章では、米国外交を理解するための手掛かりとして、Walter Russell Mead,”Special Providence: American Foreign Policy and How It Changed the World”に示された米国外交思潮の四つの類型が紹介さされる。歴代の政権下における米国外交の性格は、この四つの思潮の絡み合いであると説明されるわけである。また、ジョセフ・ナイの「ハード・パワー」と「ソフト・パワー」の概念、エドワード・ハレット・カー以来の「国力の三要素(力・富・価値)」に絡む話が示される。この書では、米国外交を理解する際、ミードの思潮四類型を「縦軸」、カーの「国力の三要素」を横軸とした説明が行われる。この書は、「米国はこうである」という単純な米国理解の仕方の迷妄を一蹴するには、充分に過ぎる著作になっている。「反米」云々を語る論客は、自説を開陳する前に、この書をきちんと読むべきであろうと思う。
 実は、雪斎は、一昨日の講演の席でも、「米国を知る努力」の大事さを強調しておいた。米国は、日本人にとって「最も身近な異国」であるけれども、この「身近」という感覚は、それに溺れれば却って米国事情の正確な理解を妨げる虞れがある。「知っている」という思い込みぐらい危ないものはないのである。加えて、古矢旬先生(北海道大学教授、雪斎の師)の近著『アメリカ 過去と現在の間』(岩波新書)も紹介しておくことにしよう。こういう多くの書を読んでおくことは、米国の「意味」を考える上では大事であろう。日米関係を「夫婦」に喩えるならば、これほどまでに共通項のない夫婦も珍しい。英米関係ならば、「幼馴染みの夫婦」に喩えられようけれども、そうしたことは、日米関係には当てはまらない。日米関係は、「世界で最も重要な二国間関係」と呼ばれるけれども、その「世界で最も重要な二国間関係」の実質を支えるのは、「互いを知る努力」なのである。

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Comments

雪斎さんのブログ、なんだか私のトラックバックばかりで恥ずかしいですが・・・迷ったあげく、しつこくさせていただきました(笑)。村田晃嗣さんは面白いですね。国際政治学者というと、平和主義や世界政府的発想に重きを置く岩波的知識人が多かったように思いますが、この頃は阿川尚之さん、坂元一哉さん、村田晃嗣さんなど、骨太でリアルな言論をされる方が増えてきて、面白くなってきた気がします。

Posted by: やじゅん | February 17, 2005 01:25 PM

それにしても「朝生」は議論に咲いた徒花のようなものですね。右も左も持論を展開するばかりで、まったくかみ合っていません。やじゅんさんが挙げた研究者の方々は、基本的にはあの手の番組には出演しません。

Posted by: Y.F@yokohama | February 17, 2005 08:09 PM

>やじゅん殿
今の日本の国際政治学者の中では、東大・駒場(佐藤誠三郎教授弟子筋)系、京都大学(猪木正道・高坂正堯両教授弟子筋)系、慶応義塾大学(神谷不二教授弟子筋)系の方々が、「現実主義」学派を成していると思われます。
>Y・F殿
御意。

Posted by: 雪斎 | February 19, 2005 03:52 AM

すみません、今頃雪斎さんのメッセージに気づきました。一言お礼申し上げておきます。
ちなみに私が日本で教わった方は故鴨武彦先生でした。坂本義和弟子筋ですね。立派な人でしたが、まさに進歩系の方で、リアリストに対する批判が印象的でした。
国際関係の理論は米国で多少学びましたが、突き詰めると哲学かゲームのようになってしまって、知的刺激があっても実務に活用できなくてちょっと・・・というところがありますね(基礎は大事だと思いますが)。村田晃嗣さんや細谷雄一さんのようにファクトを積み重ねる政治外交史的アプローチが好きですね。

Posted by: やじゅん | February 25, 2005 11:19 AM

>やじゅん殿
鴨武彦先生のセミナーには、拙者も院生時代に加わっていました。セミナーの中では、拙者はバリバリのリアリストとして、鴨先生の議論に噛み付いていたりしたものです。誠に人格高潔な方でした。
拙者も、政治外交史の方向が性に合っています。

Posted by: 雪斎 | February 25, 2005 03:52 PM

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» 米国の多様性(嫌米?親米?:その3−第一のポイント) [やじゅんの世界ブログ]
(この記事を読む前に、できれば以下の記事をご覧下さい。) 1.プロローグ(米国にいると米国かぶれになる?) 2.序論(米国を見る上での3つのポイント) 米国を... [Read More]

Tracked on February 17, 2005 01:20 PM

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