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January 10, 2005

大河ドラマの話

■ 昨日、NHK大河ドラマ『義経』が始まった。雪斎のような奥州人にとっては、身近なところに、義経にまつわる話が転がっている。
 先ず、『義経』には、市川左団次演ずる「金売り吉次」が登場する。宮城・栗駒山麓 国道四号線沿い県最北端、県境を越えると岩手県一関市となるという位置に栗原郡金成町があるけれども、ここは、「金売り吉次」の故地とされている。雪斎の故地は、金成町の南隣の築館町である。幼少の頃、雪斎の母親が「ここは金売り吉次が通ったのよ…」と言っていたことがあった。歴史の知識を持たない幼少期には、「金売り吉次って、誰よ・・・」と思っていたのであるけれども、成長するにつれて、平安期には栗原郡一帯は砂金の産出」で賑わっていたらしいことを知った。要するに、栗原郡一帯では、「金売り吉次」は「豊かさ」と「政治力」を備えたヒーローであるという記憶が残っているのである。その故か、雪斎もまた、「ゴールド」には、心惹かれるものを感じている。だから、雪斎が保有する株式の相当数は、とある鉱山会社のものである。ここの会社で出している「千両箱」は凄いですな。雪斎は、これは正直に欲しいと思う。ただし、手に入れるまでには、もう少し頑張らねばな・・・。
 次に、雪斎が高校まで過ごしたのは、青森・八戸市「高館」地区である。この「高館」という地名は、義経が実は平泉で死なずに北へ逃げていったという「義経北行伝説」に由来する。「高館」地区から市内に往来するとときには、「小田の坂」と呼ばれる急な坂道を通らなければならない。路面が凍結する冬場の往来は、なかなか大変なものであった。
 このように幼少の頃から聞かされた「歴史の話」は、成長した後でも、価値観の多くを形作っているところがある。雪斎は、中学の頃、「教科書」に書かれてある歴史は、何時も足りないと思っていた。なるほど、「教科書」には「金売り吉次」のことはでてこないし、「義経伝説」も語られない。雪斎は、「歴史教科書」が完全に当てにできるものでもないと判った。

■ 雪斎は、三十年近く、NHK大河ドラマを見続けて来た。近年は、『北条時宗』『利家とまつ』『武蔵』といったように筋書きに明白な破綻を来たしている愚作が続いたのは、残念であったけれども、昨年の『新撰組!』は、よく出来た作品であったと思う。大河ドラマの効用は、「子供たちを歴史の世界に誘う」というのが第一であろう。本来ならば、父親や祖父が、子供や孫に「英雄伝説」を含む歴史物語を語り聞かせるべきなのであろうけれども、実際には、そうしたことができる人々は、決して多くない。大河ドラマは、そのような祖父や父親の代わりという役割を果たしているのである。雪斎は、大河ドラマで歴史好きになったお陰で、高校卒業までは広い意味での社会科が一番の得意科目であった。特に政治学徒にとっては、「歴史の素養」は、不可欠なものであるけれども、そうした素養の下地は、高校卒業までに確かに身に付けることが出来た。一旦、「歴史が面白い」という感覚が身に付けば、後はアメリカ史であろうとヨーロッパ史であろうと踏み込むのは、難しくないからである。近年、「歴史教科書」を巡る論争があるけれども、子供たちの関心を歴史に向けさせるためには、良質な歴史ドラマの持つ意義は大きい。NHKに対する逆風は強いものがあるけれども、大河ドラマのような長丁場の歴史ドラマは、NHKしか作れないのも事実である。何はともあれ、大河ドラマは、貴重なのである。
 ところで、雪斎が過去三十年の作品の中で最も強い印象を受けたものを五つ挙げるとすれば、次のようになるであろう。

1、『独眼竜政宗』( 昭和62年放送、原作/山岡荘八、出演/北大路欣也、岩下志麻、渡辺謙)
2、『黄金の日日』(昭和 53年放送、原作/城山三郎 出演/市川染五郎、丹波哲郎、栗原小巻)
3、『風と雲と虹と』(昭和 51年放送、 原作/海音寺潮五郎、出演/加藤剛、緒形拳、吉永小百合)
4、『獅子の時代』(昭和 55年放送、原作/山田太一、出演/菅原文太、加藤剛、鶴田浩二)
5、『武田信玄』(昭和 63年放送、原作/新田次郎、出演/中井貴一、若尾文子、紺野美沙子)

 これらは、ある意味では総てが「敗北」と「挫折」の物語である。しかし、雪斎は、人々の心に深く残るのは、「勝利」と「栄光の物語よりも、「敗北」と「挫折」の物語であると思っている。
 

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