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January 04, 2005

ロマン・ロラン、そして現実主義と理想主義

 ■ 雪斎が高校時代に読み漁ったのが、『ジャン・クリストフ』や『魅せられたる魂』といったロマン・ロランの作品であった。後年、雪斎の誕生日がロランと同じ(1月29日)であることを知ったときには、正直に嬉しかったものである。ロランには、次のような言葉がある。「理想主義のない現実主義は無意味である。現実主義のない理想主義は無血液である」。
 雪斎は、自らを「保守主義者」であると語る気は毛頭、ないけれども、「現実主義者」であるとは思っている。ただし、それは、「現実」に際限なく追随するという意味での「現実追随主義」とは似て非なるものである。雪斎が依るような「現実主義」を「現実追随主義」と批判する人士は、「現実主義」が絶えず「現実」と「理想」の狭間で格闘する思考態度であるということを理解していない。そうした批判をする人々は、「左」にも「右」にも多いのである。
 ところで、昨日付けの「日々の戯言」で言及した朝日新聞元旦社説では、「東アジア共同体」構想、「東シナ海海洋資源の日中共同管理」提案といった「理想」が語られている。その「理想」を受け容れるかはともかくとして、朝日社説が「理想」を語ったのは、評価に値する。ただし、朝日社説は、そのような「理想」を実現するための具体的な手順については、何も語っていない。朝日社説は、次のように書く。「孫文は1924年、神戸市で『大アジア主義』と題する演説をした。道徳を重んじる『王道』の東洋文化が『覇道』の西洋文化より勝るとして、アジアの独立と復興を訴えたのだ。日本が『覇道の番犬』となる恐れにクギを刺しつつ、東アジアの連携を求めたのである」。 しかし、現在、「覇道の権化」として振る舞っているのは、他ならぬ中国ではないのであろうか。朝日社説は、結果としては「覇道の権化」にならざるを得なかった戦前期・日本の軌跡を批判して止まないけれども、現下の中国の「覇道」には及び腰の批判しか加えていない。、「東アジア共同体」構想、「東シナ海海洋資源の日中共同管理」提案といった朝日社説の「理想」は、中国の「覇道」が改められることが前提となる、もし、雪斎が「親中国派」知識人の片割れであるならば、「覇道」の先にある苦難と破滅とを中国政府要人に説く。その破滅は、六十年前には日本が経験し、その後には英国やフランスが相次いで経験したものであるからである。そうした過程を欠落させて、「アジアの連帯」を模索するのは、奇異なことである。
 ロランの大河小説『魅せられたる魂』には、次のような言葉もある。「英雄とは自分のできることをした人である。ところが、凡人はそのできることをしないで、できもしないことを望んでばかりいる」。これは、言論家としての信条というよりも、雪斎の人生を支えた言葉の一つである。「できることをし続ける」。それが現実主義者の「証明」である。

 ■ 何故か、「ゴダイゴ」のCDを久し振りに聴く。『ガンダーラ』と『銀河鉄道999』は、つくづく名曲ではないかと思う。それにしても、『ガンダーラ』がテーマ曲として使われたドラマ『西遊記』に三蔵法師役で出演していた故・夏目雅子は、美しかった…。色気付き始めたロー・ティーンの頃に得た「きれいなお姉さん」のイメージは、後々まで残るものである。後に夏目雅子が作家と結婚したと聞き、「物書きになれば、あんなにきれいなお姉さんを嫁さんにできるのか」と思って、物書きをやっているのは、雪斎の「ああ、勘違い」であったのか…。

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Comments

ヴィスコンティに続き、ゴダイゴも私は好きですねえ。過小評価されているグループだと思います。

最近は、妙な英語の混じった歌詞が少なくありませんが、ゴダイゴが使う英語はしっかりしています。特に『青春の殺人者』という映画の中で使われた2曲、(「イエローセンターライン」とあと1曲の名が思い出せない!)は良かった。CDは探したら見つかるかなあ?

Posted by: かんべえ | January 04, 2005 at 09:33 PM

朝日の年頭社説は、他社に比べれば前向きなものです。「東アジア」は今年間違いなく、国際政治の一つの焦点となります。これまでの幾つかの議論は「東アジア共同体」の「共同体」の部分の忌避して「そんなものできるわけないだろう」「中国の覇権主義にみすみす飲み込まれる」という主張がみられました。
ただ、これは「共同体」に目を奪われすぎている議論です。「共同体」は2005年のアドバルーンです。これを目標に東アジアというデパートを開店させるわけですね。現在すでに17分野48種類の会合体が、ASEAN+日中韓の枠組みで進められています。すでにデファクトの地域統合は進んでいるんだと思います。地域統合のプロセスはアイディアと政治的意思が大きくモノをいう「イニシアティブ合戦」の様相があります。日本はしっかりとアイディアを出す必要があります。そして、仮に(中国などから)日本にそぐわない提案が出た場合には、これを拒否するパワーが必要です。そのためにも、今年は「東アジア」をしっかりと考えなければならないと思います。
結論としては、朝日の年頭の問題提起は大事だということですね。

Posted by: kenboy3 | January 04, 2005 at 10:32 PM

>かんべえ殿
ゴダイゴのアルバム『新創世記』に収録されている”IF YOU ARE PASSING BY THAT WAY”(想い出を君に託そう)が,お尋ねの一曲ではないかと思われます。
ところで、『青春の殺人者』は、ATG系映画でしたか。ATG系映画は、「エロい、暗い、貧しい」という共通項があると思いますが、雪斎は、この世界に一時期、どっぷりはまっていました。
1980年代後半の「バブル」以後、消滅した世界ですな、

Posted by: 雪斎 | January 04, 2005 at 10:48 PM

 『溜池通信』経由でまいりました。
かんべえ師匠の弟子を自称しております。
各社の社説を読みながら、カエサルの言葉を
思い出してしまいます。
「どんなに悪い事例とされていることでも、
それがはじめられたそもそもの動機は
善意によったものであった」
(塩野七生『ローマ人の物語Ⅳ』121頁)。
あとは「見たいと思う現実」しか人は
見ようとしないということを痛感いたします。

 あまり論じられていないところでは、
教育基本法の改正が、教育の現場からなんとなく
ずれてしまっているように思います。
私自身は、愛国心が大切だということそのものに
異論はないのですが、現実には自然に育つ
国を愛する気もちを押し殺すような教育を
しなければよいと思います。
極端に言ってしまうと、大学で教える立場から
すると、遺憾ながら教えたはずのことは
2、3年もすると忘れられてしまうので、
愛国心教育と言われても具体的にピンとこない
というのが率直な実感です。

 私の浅い経験では、自己中心的な学生ほど
私の下では伸びて、そうではない学生は
苦労します。教えるというのは怖いことだ
としみじみ思います。教えている本人が
利己心こそが社会の発展の基礎と考えている
ものの、そういう教育をしているつもりは全く
ないのですが、自分の姿を映す鏡のようで
少し気味が悪いです。

 私自身は、自分の頭の悪さにしみじみして
しまうので発言する資格があるのかどうか、
悩むのですが、「現実主義」というのは
そもそも「○○主義」で括れないのではないのか
と考えてしまいます。簡単に述べますと、
現実主義とは何かという定義ができないという
ことです。これは、自分でも暴論だ
と思いますが、最近は定義自体が不可能かも
しれないと考えております。
「あの議論はより現実的だ」という判断は
可能かもしれないのですが、現実主義という
体系そのものはないと感じております。

 いきなり長くなって申し訳ありません。
形式的にはニートの定義にあてはまるけれども、
実態はほど遠いと思われる(非礼な表現で
申し訳ありません)kenboy3さんも
参加されていて同人誌と揶揄された
『産経』よりも濃い内容を
満喫させていただいております。

雪斎様のBlogの発展を願っております。

 


Posted by: Hache | January 05, 2005 at 04:10 AM

> Hache殿
はじめまして。雪斎が知識人の「範型」として正直なところ最も強い憧れを抱いているのは、以前の寺島実郎氏や今の「かんべえ」殿のような商社系のポリシー・アナリストなのです。こういう人々は、「頭の中」だけで物事を語ることをしませんが、かといって「皮膚感覚」に頼ることもしない。今の日本で特にテレビ・コメンテーターなどと称して物事を語る人々は、「頭の中」か「皮膚感覚」の両極端に別れますから、まともな言説が出てくるはずもないのです。
尚、「現実主義」とは、「現実的に考える人々」の思考様式を最大公約数的にまとめたものとでも評した方が、実態に即しているような気がします。「現実主義者」の言説は、かなり幅があるものだと思います。
それでは。またの御来訪を。
>kenboy3 殿
この件、あらためて書きます。

Posted by: 雪斎 | January 05, 2005 at 03:19 PM

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